J論 by タグマ!

Jユニ女子会に入れば、また新しい見方がまた一つ増えると思いますし、自分の世界が豊かになります【Jに魅せられて】

第2回は2016シーズンのJリーグチャンピオンシップと天皇杯を制した鹿島アントラーズサポーターが登場する。

J1リーグの2ステージ制導入など、近年のJリーグは新規ファン層の開拓に向けて積極的に取り組んでいる。しかし、満員の観衆で埋まる日本代表の公式戦と比べて、まだまだJリーグの動員力にはさまざまな課題が残っている。新規層に響くJリーグの魅力とは何か。その女性的視点で、女性ファン拡大の取り組みを続けている団体が『Jユニ女子会』だ。J論では定期的なシリーズ企画として、Jユニ女子会のメンバーにインタビューを敢行し、Jリーグの新規ファン層拡大のために、私たちができることを検証していく。第2回は2016シーズンのJリーグチャンピオンシップと天皇杯を制した鹿島アントラーズサポーターが登場する。
(前編「約430人のJユニ女子会メンバーのうち、約80人が鹿島サポーター。鹿島サポが”最大勢力”です」)

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(よう)さん(写真・左)
鹿島サポーター歴:1年目。石川県出身・埼玉県在住。自身は中学から現在に至るまでハンドボールをしており、スポーツ観戦が趣味。自身がハンドボールでプレーしていたポジションとサッカーのボランチがリンクしてサッカー観戦をするようになった。現在イチ押しの選手は三竿健斗選手。来シーズンは鹿島でプレーする三竿兄弟に注目したい。

佐智(さち)さん(写真・右)
埼玉県在住。全国高校サッカー選手権を埼玉県営大宮公園サッカー場(現・NACK5スタジアム大宮)で観戦して以来、サッカーに興味がわく。初めて好きになった選手は、東海大学第一高校時代の澤登正明氏。

▼クラブのマスコットが”入口”になる
――お二人からはクラブ愛と並行して、Jリーグ愛も感じます。代表戦はJリーグの試合に比べて、単純に観客が入っていますが、お二人にとって、Jリーグの何が刺さるのでしょうか?
佐智 それぞれの選手のドラマを身近で感じられることが魅力の一つです。育成年代からその選手を追いかけてきて、Jリーグのクラブに入って、その後移籍をして、現役を引退して……。その選手の一連のストーリーを追いかけることができるのは、一番心に刺ささります。一方で自分の歴史とも重なります。「私はあのころ、こうしていたよな」、「この選手が若いころって、私はこうだったよな」とか、対象となる選手と自分の人生を身近で重ね合わせることができるのは、魅力だと思います。

――なるほど。選手のキャリアに自己投影をできる部分があると。
佐智 それはありますね。「大岩(剛)さんが、次もしかしたら監督に……」と言われたりしていますが、「大岩さんが監督なんて、感無量なんだけど……」と想像するだけで泣けてきます。石井監督に対しても、そう思っている人がいると思います。石井監督は鹿島の創成期からいる方だから、「石井さんが監督かぁ」と思っている人がいるように、私も感慨深い思いを抱くと思います。鹿島を好きでいたことの”ひと区切り”とでも言いましょうか。もし、大岩監督が実現すれば、ずっと鹿島を応援してきたことを象徴するような出来事になると思います。

 私は春・夏・秋・冬といろいろなスタジアムへ行って、その時の気温や空気、四季を感じながら、ほぼ1年を通して試合を見られる環境があることはすごく魅力的だなと思います。さらにそれぞれのクラブが地域に根差していて、どこのスタジアムへ行っても、それぞれのクラブの特色が出ていますし、クラブに対する愛情を感じる取ることができます。もちろん主な目的は試合を見に行くことですが、アウェイ参戦の時は観光も含めて、試合以外の目的を持てることもJリーグの魅力の一つだと思います。

佐智 あとはマスコットがいいよね。私、すごくJリーグのマスコットが好きなんですよ。今、ぬいぐるみを集めていて、自宅にいろいろなチームのマスコットがいます。ぞんざいに扱われている子もいれば、そうでない子もいますが(笑)。

――ちなみにマスコット界の”推しメン”は?
佐智 やっぱベガッ太さん(ベガルタ仙台のマスコット)。

 私もベガッ太さん。

佐智 見れば見るほどかわいいよね。

 うん、かわいい。

――キャラ勝ちかな、これは。
佐智 ずっと一平くん(愛媛FC準公式マスコット)が一番で、スタジアムで一平くんにギュッとされた時は最高だったんですけど、すみません(笑)。

――個人的にはマスコット界の重鎮・グランパスくんの名前が一文字も出てこなくて悲しい気持ちになってきました(笑)。
佐智 ベガッ太さんが普通に客席に座っている姿とか、もうたまらないです。

 何か人間味がありますよね。

佐智 指定席とかに普通に座ってくるんですよ、いきなり。

――ハーフタイムは”揉みくちゃコース”ですね。
佐智 私が見た時は揉みくちゃなっていました。子供たちにバンバン叩かれて「しっしっ!」と追いやるような仕草をしてみたり(笑)。あのヒールキャラがすごく好きです。あとはミーヤもいいですね。あの一貫性のあるキャラ。

 私もミーヤ好きです!

佐智 すぐに誰とでも仲良くなれてしまう、小悪魔的なミーヤのキャラクターは他のマスコットとはレベルが違います(笑)。

 ちゃんとキャラが出来上がっていますよね。

佐智 うん、出来上がっている。そういうキャラを作るJリーグやクラブはすごいなと思います。

――やっぱキャラ勝ちか。
 ディズニーに紛れても、いけそうなぐらいのキャラクターですね。

佐智 性格もちゃんと作っているしね。

 仕草もすごくかわいい。

――一方でアルディは『日高屋』と書かれたセグウェイに乗っているパフォーマンスがツボです。
一同 うん、歩いたほうが絶対早いだろと思いながら見ています(笑)。めっちゃ遅いんですもん。「まだそこにいるの?」みたいな(笑)。

――たしかに、Jリーグを好きになる入口として、マスコットは一つの切り口ですね。ディズニーと並んでも負けないぐらいのキャラクター作りが肝になりそうです。
佐智 ゼロックス(富士ゼロックス・スーパーカップ)は、マスコット選手権を目的で行くみたいなところはあります。

▼欲を満たせるJユニ女子会の活動
――メンバー拡大中のJユニ女子会ですが、「入りたいけど……」と迷っている方もいると思います。そういった方々へ向けて、メッセージを送るとしたら、どんな言葉を伝えたいですか?
佐智 今までJリーグを見てきた方も、まだ最近好きになったばかりという方もいらっしゃると思います。それぞれいろいろなJリーグの見方があると思いますが、Jユニ女子会に入ったら、また新しい見方がまた一つ増えると思いますし、それによってよりチームを身近に感じられるようになると思います。そうなれば、もっとJリーグが楽しくなりますし、自分の世界が豊かになります。

いろいろな見方がある中で、自分の見方は「これでいいんだ」と思えると同時に、「もっといろいろな見方があるんだ」という新しい発見もあるので、これまでは一人で試合を見に行っていた方も、友達と観戦していた方も、Jユニ女子会に入ると、また一味違った週末を過ごせると思います。

――ちなみにこれまでの話と重なる部分はあるのかもしれませんが、例えば佐智さんがJユニ女子会に入ったことで、発見できた新しい見方とは?
佐智 今一緒に見ているメンバーは、歳下の子が多いので、それだけでも新しい世界を感じられています。これまでは男性の観戦仲間が多く、女子と見に行くことはあまりなかったですし、女子でJリーグが好きな人があまり私の周りにはいなかったんですよ。代表戦は見に行くけど、Jリーグには行かないという人が多くて、今は小笠原選手の魅力を共有できる人がいることがすごくうれしいです。男性は戦術やプレースタイルの話が中心になるけれど、女子は「満男さんの子どもがサッカーを始めているらしいけど、(満男さんが)めっちゃ(子どもに)厳しいらしいよ」など、そういうネタで盛り上がれます。そういう点でもいまは超潤っています。

――なるほど。自分の中で「こういうのがあったらいいな」という欲を、Jユニ女子会は満たしてくれるのですね。
佐智 Jユニ女子会に入ったのに、実はまだ一人で観戦している人は結構いると思うんですよ。友達がなかなかできない、仲間ができるきっかけをつかめないという人が。そのように入ったことは良かったけど、その先が広がらないメンバーもいると思って、埼玉県在住・出身のメンバーで”埼玉会”を開いているのですが、特に関東圏以外のチームのサポさんなどが仲間になってくれるとうれしいという思いがあります。

そうやって自分の居場所をどんどんメンバーが広げてくれることがいいなと思います。一緒に試合を観戦すれば、SNSで発信欲も出てくるので、そうすれば自然と仲間も増えていくんです。”埼玉会”がきっかけで、九州出身のメンバーが地元に帰る時に、「”福岡会”をやります」と言ってくれたり、本当にありがたいことです。

――陽さんは活動をしていく中で、コレが面白いな、と思えたことは何ですか?
 私の場合は、「Jユニ女子会がなかったらどうなっていたんだろう?」と思っています。そのため、Jユニ女子会自体が面白い活動だなぁと思います。転勤をきっかけに関東へ来たため、Jユニ女子会の活動がなければ、「何を楽しみに生きたらいいんだろう」と思っていたかもしれません。

Jユニ女子会で出会ったメンバーと一緒に試合を見に行ったことが一つのきっかけとなり、私もスタジアムに通うようになり、またスタジアムやクラハで知り合った人に声をかけたりするようになりました。私はかなりの人見知りだったのですが、すごく変わりました(笑)。やっぱり共感してもらえる人が近くにいることがすごくうれしいです。Jユニ女子会に出会えたことにより、想像していた何倍も、東京での暮らしが充実しています。

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▼欲しがるグッズの傾向
――お二人はいろいろなグッズをお持ちですが、これが手元にないと落ち着かない、そういった感じなのでしょうか。
佐智 それはあるかもしれないですね。

 ああ、私も。

――男子サポの立場としては、レプリカユニ、もしくはタオマフぐらいを持っていれば、もういいんですけどね。あとはもう、声勝負なので(笑)。
佐智 鹿島サポの女性は結構グッズに飢えているような気がします。フロンターレのグッズを見ていると、かわいいものが多いですし、みんなうらやましいと言っています。鹿島はそこまで”女子ウケ”する物が今は少ないと思うんですよね。だから少しでもグッとくる物があると飛び付きが速い(笑)。

陽 分かります。私もかわいいグッズはすぐにチェックしていますね。

佐智 例えば、この『アントン・ポシェット』とか、みんな持っているみたいな感じになるんです。

――”ライト層”の興味・関心を引くためには、グッズも入口としてはアリなのですね?
佐智 ライト層ほど、グッズは大きいんじゃないですかね。

 絶対そうですよね。

――ちなみに今、商品化してほしいというリクエストを出せるとしたら、どんな物が欲しいですか?
佐智 もっと女子っぽいアパレル系や普段も使える小物を増やしてほしいです。

 同感です。私が川崎Fのグッズでかわいいなと思った物は、『MY FRONTALE』と書かれたウォーターボトル。川崎Fはトレンドを抑えたグッズを作るのがうまいと思います。鹿島でも発売してほしいなぁ。

佐智 バッグももっといっぱい出してほしいよね。少しずつ女子っぽい物も出ていますが、もっと増やしてほしいです。かわいいものがあると、一気にみんな買うから、すぐになくなってしまうんです。「かわいい!」と思ったら、「もうないよぅ……」と(泣)。

――このマスクは?
佐智 寒い時に付けたりします。もしくは、友達とみんなで写真を撮る時にやっぱりコレがあると、ちょっとした撮影のアクセントになるので(笑)。

陽 そうですね。盛り上がりますね!

――何も凝ったグッズではなく、インスタで写真をアップする時のワンポイントグッズのような物でも良いのですね?
佐智 そうですね。欲しいですね。

 コレをみんなでそろえたらかわいいなという物が良いですね。

――右の人も左の人も持っていると、私も持ちたくなるという女性心理が働くのですか?
 ありますね。みんなでそろえたかったのに「私買えなかった…」となることがよくあります。いくつかのクラブでやっていたユニフォーム付きチケットのような試みも、良いなと思います。ほかの友達も誘いやすいですし、ユニを貸すこともできますが、やっぱりスタジアムへ行くからには、ユニを着てほしいので。

佐智 初心者の方がユニを買うのに、1万5・6,000円を出すことは簡単ではないですからね。

 出せないと思います。でも、やっぱりユニは着てほしいです。その場を一番楽しめる格好をすることで、女子は気分が上がりますからね。

佐智 服から、形から入るからね。

 今日は満男さんの気分だから、満男さんのユニを借りて着ようみたいな。

佐智 レンタルユニはセレッソが今季途中から始めたよね。

▼ホスピタリティーの改善点
――例えば、クラブに対してホスピタリティーの部分でこんな改善をしてほしい、といったリクエストはありますか?
 クラブ主導でやるべきことではないのかもしれませんが、『初心者向け観戦ガイド』の作成をしてくれたら良いなと思います。

スタジアムの中にはどこから入れば良いのか、試合までの過ごし方をどうすれば良いのか。私が初めてカシマスタジアムに行った時は、Jユニ女子会で知り合ったメンバーと一緒だったので、「最初にココで場所取りをして、もつ煮を食べに行くよ!」と一緒に行ったメンバーが全部を教えてくれたので、初観戦でも戸惑いはありませんでした。おそらく一人で行っていたら、「なんだこの列は?」、「トイレはどのタイミングで行っていいの?」とか全然分からなかったと思うんです。今後はスマホやタブレットで初心者向けの案内をしてくれるアプリやインターネットサービスがあればと思っています。

佐智 私のリクエストとしては、スタジアム近辺に安くて、女子でも泊まれるような宿泊施設をもう少し増やしてほしいです。鹿島サポは茨城県外に在住している方もかなり多いので、宿泊施設が増えると本当にありがたいです。

 帰りの手段の選択肢が増えるといいですね。新しいモノを作ることはかなり大変ですが、今あるモノを生かすという方法はあるんじゃないかと思います。スタジアムの近くは民間の駐車場が多く、おばあちゃんたちがやっている駐車場も結構あるので、それを活用し、例えば家の一部屋を貸すようなサービスがあるとうれしいです。

――なるほど。面白いですね。民間駐車場は停めると、お茶を一人1本くれたり、野菜をくれたり、サービスが行き届いています。
陽 ショートホームステイみたいな形で、試合観戦と民泊がセットのチケットサービスがあれば、わざわざ新しいモノを建てなくても、今あるモノで安く泊まれる形ができると思います。

佐智 ”民泊”のような形のサービスが増えるといいよね。

――試合後や試合前日に民家へ泊まって、そこで料理でもてなされたりすればうれしいですね。
佐智 たぶん家族連れが増えると思います。都内や神奈川県などから家族みんなで「ちょっと鹿島に行こうか」とはなりません。また、試合がナイトゲームとなれば、もっと足が遠のくと思います。試合が終わったらすぐにどこかへ泊まれるとなれば、小さい子どもがいる家でも、もっと足を運びやすくなるんじゃないかと思います。

――もっと初心者や家族に優しいクラブであってほしいと願っているのですね。今日のお話を聞いて、まだまだファン・サポーターを増やすための努力の余地はあることを実感しました。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。
一同 ありがとうございました。

郡司聡

茶髪の30代後半編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクション、サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』編集部勤務を経て、現在はフリーの編集者・ライターとして活動中。2015年3月、FC町田ゼルビアを中心としたWebマガジン『町田日和』を立ち上げた。マイフェイバリットチームは、1995年から1996年途中までの”ベンゲル・グランパス”。