ちょんまげ隊の被災地支援活動を村上アシシがコンサルしてみた

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経営コンサルタントを本業としながらも、サッカー日本代表とコンサドーレの熱烈なサポーターとして各種メディアで積極的に情報発信を行っている村上アシシ氏。今回、J論ではアシシ氏独特のサポーター視点、経営コンサルタント視点で日本サッカー界を盛り上げる方法を探る対談企画をスタート。6回目の対談相手はサポーターとして日本代表を応援するとともにサッカー関連のボランティア活動でも有名なツン氏。後編は国内、国外と幅広く活動する被災地支援活動の継続性を高めるべく今後の方向性を探った
(前編:ちょんまげが世界を救う!? 我が道を突き進むツンさんのボランティア論)


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▼NPO法人立ち上げのメリット・デメリット


アシシ:前半では被災地支援を始めたきっかけについて話してもらったけど、後半ではボランティア事業について、僕なりにコンサルをしてみたいなと。

ツン:ぜひぜひ。

アシシ:ツイッターでツンさんのやってることが「震災ビジネス」とか揶揄されてるのを見たことがあります。完全に誤解だよね。

ツン:儲けとかあるわけないんだけど、基本的に全部自分の持ち出しでやっている。でもね、本来はNPOって働いてる人の給料は取っていい。内部留保はできないだけでね。そこが誤解されてて、現地に入っている人がそこで活動費用としてTシャツを売ったりすると、「被災地で金儲けをしてる」ってすごく叩かれる。職を辞めて来ているのにどうやって生きていくんですか、ご飯食べちゃいけないんですかって話なんだよ。ボランティアの敷居を下げたい、誤解を解きたいということを、5年間いろんなところで言ってる。

アシシ:本職以外でお金稼ぐことに対して怒る人って、一定数いるよね

ツン:そう。サポーターが儲けちゃいけないっていうのとすごく似ていると思う。クラブのサポーターグループがちゃんと組織として成り立っているところは、サッカー関係のショップとか経営したりして収入をちゃんと立ててる。じゃないと、自腹でアウェーに行って、横断幕作ってその洗濯代とか大変だよね。コアサポはみんな知っているけど、普通の人は知らない。儲けることへの嫌悪感は日本は強いなってすごく思う。アシシの嫌儲主義への対抗にすごく似ているんだけど、ボランティア=無償みたいなイメージを壊したいんだよね。

アシシ:儲けがないのはわかったんだけど、お金回りでもうひとつ質問。ツンさんは被災地報告会のために海外によく行っているけど、渡航費とか諸々の経費とかは?

ツン:全部自腹だよ。趣味でやってるんだから当然でしょ。

アシシ:じゃどうやってお金は回しているの?靴屋の経営ってそんなに儲かるの?(笑)

ツン:50歳過ぎて社長だったら、それなりに自由に使えるお小遣いはある。海外にいっぱい行ってお金をたくさん使っているように思われているけど、かなり節約してる。社長だけどロレックスやベンツは買わないし、ゴルフもしない。飲みに行ったりもしないし、服もオールユニクロ。物欲がほぼないんだよね。その分をサッカー日本代表の遠征費に使っている。そのついでに被災地報告会をしている。

アシシ:なるほど。

ツン:どこを選択するかって話なんだよね。お小遣い的にうちの奥さんも認めてくれているしね。みんなは海外旅行に20万かかるって言うけど、例えば10月に行ったバーレーン遠征もたぶん仲間内では一番安く行っているんじゃないかな。往復航空券はサーチャージ込で4万8千円のバーゲンで抑えて、現地の宿泊はアシシが押さえてくれた知人の自宅に泊まったおかげで全部タダだったし。

アシシ:そこで思うのは、NPO法人を立ち上げたら、そこら辺の出費を全て経費計上できるようになるのよ。かつ、企業からの献金や自治体からの補助金とかも受けられる。お金回りをちゃんと回すために、NPO法人立ち上げた方がいいよ。ツンさんはここ最近、ネパールやアメリカ、バーレーンに行ったりいろいろ忙しいのはわかる。でも、ものごとには緊急度と重要度っていうのがあって、ツンさんは緊急度の高いものばかりに目がいってバタバタやっているイメージ。

ツン:バタバタバタって気づいたらもう5年みたいな感じで、自転車操業ですよ。

アシシ: 5年も経って未だに仕組みがないわけじゃん。お金も全部自分の持ち出しで、協力してくれていた人も自転車操業が嫌になって、いなくなった人もいるわけじゃん。

ツン:それなりにいる。

アシシ:まず仕組みをちゃんと作って、NPO法人を立ち上げてちゃんとお金が回る仕組みを作る。手伝ってくれる人には給料も払った方がいい。法人立上げには何カ月もかかるから緊急度は低いかもしれないけど、重要度はめちゃくちゃ高いの。僕はそういう課題管理をコンサルの現場で毎日やってて、俺がツンさんのボランティア事業をコンサルするなら、まず目先の作業を全部止めてでもNPO法人の立上げを優先してやれって提言するわ。

ツン:そこは反論があってね。僕はNPO化も社団法人化もしていなくて個人でやってる。よく「ちょんまげ隊って何人いるんですか?」って聞かれるけど、実際は僕ひとり。新聞の取材とか受けると、笑われるんだけどね。僕は昔、バスケットのチームを運営してて、団体を維持するのが大変ですごくトラウマになってるの。仕事も自営業の経営者だから、この何十年間苦労してきたんですよ。だから、団体を作って維持する労力を考えたら、作る意味ないんじゃないかなと思っている。昔だったら、団体として全部システマチックにやらなきゃいけないと思うんだけど、今の時代はSNSがあるからその都度募集、その都度解散でいいと思っている。1万人のツイッターのフォロワーや、5千人のFacebookでつながっている人に、今度この案件をやりますので乗ってくださいって呼びかけて、終わったら解散。後腐れはない。「この指とまれ!」方式。今までにないパターンだと思うよ。実際、それで5年続いているしね。

アシシ:NPO法人のグループを何百人にしろっていうわけではなくて、今の時点で5年間一緒にやってきているコアな人たちでいいんだよ。その人たちにちゃんとお金が入るようにすることは重要だと思う。

ツン:でもね、NPO法人立ち上げると、色んな足かせができちゃうよ。例えば、東北支援のNPOを作っちゃうと、ネパールでやりたくても映画を作りたくても前に進まない。僕はお金のデメリットよりも、自由のメリットがほしい。この活動だって10年ぐらいしか続かないと思ってる。バスケットも10年ぐらいだし、だいたい10年で区切る。

アシシ:だったらボランティアはあと5年もあるよ。

ツン:そう、あと5年しかない。知り合いには法人格作った方がいい、絶対回っていかないよって同じことをよく言われる。でも僕は自由にやりたい。それに例えば補助金が出て、でも趣味で海外にたくさん行ってたら「あんた補助金を無駄に使ってるんじゃないの」みたいに言われるのも嫌だし。そういった制限がある中でボランティアしたくない。

アシシ:相変わらず頑固だね(笑)。

ツン:アシシも頑固でしょ? そういう信念があるから、続けられてるって自負もあるかな。

▼被災地支援映画「MARCH」の全貌


アシシ:僕の提言はこれ以上続けても平行線のようなので、別の話題を。ツンさんの被災地支援って具体的に言うと、どんなことやってるの?

ツン:サッカー回りだと、被災地の子どもたちをサッカー観戦に連れて行ったり、ブラジルワールドカップに連れて行ったり。

アシシ:被災地で避難生活をしてて、毎日大変な思いをしている子どもたちに、非日常のところに連れて行くことで、少しでも気持ちをポジティブにもってもらおう的な?

ツン:そうだね。

アシシ:それは全部寄付金でやったの?

ツン:そう。被災地報告会で集めた寄付金だったり、ブラジルワールドカップの時は大々的に寄付金を募って、子ども4人の渡航費、計300万円集まった。で、会計士に聞いたの。税金とか払わなきゃいけないんですかって。集めた寄付金を全部使ったんだったら何の問題もないですよと。「税金は利益に対してかかるんですよ」ってアドバイスされた。旅行後に出資者には収支報告書を送ったよ。

アシシ:他にも最近は被災地支援でMARCHって映画作ったよね? ちょっと詳しく説明してほしいんだけど。

ツン:MARCHは、原発から25kmの福島県南相馬市でがんばっているマーチングバンドの子どもたちが主役の映画。

アシシ:その製作費は?

ツン:全部で450万円かかったけど、舞台である愛媛を中心にクラウドファンディングで集めた。MARCHは世界初の復興支援映画として作ったんだ。35分のドキュメンタリーなんだけど、4つの支援が含まれている。1つは、3千円の募金を呼びかけてみんなで映画を作る「参加する支援」。2つ目は、サッカー以外に福島のシーンもあるんですけど、5年経った今の福島を見てもらう「見る支援」。3つ目は、この11月からみなさんにお代をいただいてこの映画をお貸しして、自主上映会を開いていただきたい。そのお代の経費を除いた全額がマーチングバンドに行く「子どもたちへの直接支援」。4つ目は、その寄付金でマーチングバンドが全国で演奏演技することで福島の元気を伝える「間接支援」。いろんな人に伝わるといいなって感じでやらせていただいています。

アシシ:この前俺もこの映画観させてもらったんだけど、映画の冒頭で出てくる愛媛FC対セレッソ大阪の試合映像がすごく良かった。2015年の夏、どちらもJ1昇格を狙える順位にいるガチンコ勝負で、アディショナルタイムにまさかの展開が待ってるという。

ツン:親善試合でもチャリティマッチでもない。格上セレッソ大阪との真剣勝負。たまたまその試合に福島のマーチングバンドの招待が実現したんだ。それならばってサッカーでドキュメンタリー長編を2本撮って賞を取った中村和彦監督に撮影をお願いした。それがすごく劇的な試合だった。

アシシ:このコラムを読む人はMARCHという映画を見ていない人が多いと思うんだけど、最初の入りがすごいの。詳しくは映画を見てほしいんだけど、ザ・Jリーグとも言える心温まるシーンもあって、サッカー好きなら冒頭シーンで一気に心を鷲掴みにされると思う。映画撮影のためにたまたま選んだ試合が、あんな劇的な展開になるなんて、ツンさん持ってるなって思った。

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マーチングバンドSeeds+が愛媛対C大阪の試合前にピッチで演奏


ツン:
監督がすごいんだよ。

アシシ:さっき言っていた4つの支援のうち、3つ目の直接支援ってのは、レンタル料3万円払えば借りられるんだっけ?

ツン:そうそう。35分の映画だから会社の昼休みに上映するとかも可能。でも、実際は今煮詰まって困っているんだよね。有名女優さんが出ているわけでもないし、結局被災地の映画だからもう福島の話はいいよってなる。見たら面白いと思うんだけど、借り手がない。今あっちこっち行脚して頭を下げてる。まずはお試しと無料試写会も全国で行っている。有料につなげるために。

アシシ:じゃ、俺とツンさんで座談会みたいなのをやって、その後にMARCHの上映会やるってのはどう? 3万円なら参加者から入場料集めれば集まるだろうし。

ツン:ぜひお願いしたいです。

アシシ:俺最近、炎上トピックで色んなネタ持ってるから、ツンさんと一緒にオフレコネタ満載の毒舌トークやろう。

ツン:いいね。公で話してない裏話なら僕もたくさん持ってるし。

アシシ:善は急げってことで、この対談が終わればすぐ会議室の予約取るよ。

ツン:よろしくお願いします。

アシシ:じゃ決まりで。座談会&MARCH上映会、やりましょう。うまくイベントに繋がったから、良い具合でまとまったんじゃないの?(笑)

ツン:さすがだね。

アシシ:では、ネット上では書けないネタの続きはイベントで話しましょう。今日はありがとうございました。

ツン:ありがとうございました。

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編集部:ということで、映画MARCHの上映会とアシシ&ツンさんの座談会を2017年1月28日土曜夜に開催することになりました。詳細は以下の通りです。

●日時: 2017年1月28日土曜 17時開場 17:30開演 19:30終演
●会場: 「貸教室・貸会議室内海」3F教室
●会場URL: http://www.kaigishitsu.co.jp/company/access.html
●住所: 東京都千代田区三崎町3-6-15
●最寄駅: JR総武線水道橋駅徒歩1分、東西線飯田橋駅徒歩5分
●参加費: ひとり1,500円

申込はこちら

村上アシシ

1977 年札幌生まれ。職業は経営コンサルタント・著述家。外資系コンサルティング企業・アクセンチュアを2006年に退職し、個人コンサルタントとして独立して 以降、『半年仕事・半年旅人』のライフスタイルを継続中。南アW杯出場32カ国を歴訪した世界一蹴の旅を2010年に完遂。Jリーグでは北海道コンサドー レ札幌のサポーター兼個人スポンサー。

ウェブサイト:http://atsushi2010.com/
ツイッター:https://twitter.com/4JPN
近著:海外旅行のノウハウ本『ロジ旅

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