ちょんまげが世界を救う!? 我が道を突き進むツンさんのボランティア論

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経営コンサルタントを本業としながらも、サッカー日本代表とコンサドーレの熱烈なサポーターとして各種メディアで積極的に情報発信を行っている村上アシシ氏。今回、J論ではアシシ氏独特のサポーター視点、経営コンサルタント視点で日本サッカー界を盛り上げる方法を探る対談企画をスタート。6回目の対談相手はサポーターとして日本代表を応援するとともにサッカー関連のボランティア活動でも有名なツン氏。各種メディアでは語られない「ツンさん」の素顔に迫った。


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▼なぜ敢えてちょんまげをかぶるのか?


アシシ:今回でJ論は6回目の連載となります。今まで経営者、サッカー選手、解説者、ライターなどと対談してきましたが、今回は初めてサポーターに来てもらいました。

ツン:よろしくお願いします。

アシシ:ツンさんをあまり知らない人にとっては「なんでこの人、ちょんまげかぶってるの?」とか、「被災地ボランティアやってるっぽいけど、目的は何なの?」とか、疑問が尽きないと思うんです。で、結構インターネット上では「ちょんまげかぶって目立ちたいだけだろ」とか、色々と勘違いされている部分も多いと思います。そこら辺の誤解を解いて、ツンさんの素顔に迫りたいなと。でも、ツンさんの話を美談で終わらせるつもりは毛頭ありません(笑)。

ツン:そうなんだよね、誤解はかなりされているイメージ。この前、初対面の女性に言われたんだけど、「ツンさん、SEOって知ってますか?」って。ちょんまげ隊で検索しても、いろんなものが出てきて、ひとつにまとまってないのが実情。それ以前に、僕は自分のウェブサイトを持っていないんだけど。

アシシ:それなのによくスタジアムとかで「ツンさんいつもブログ見ています」って声かけられて、俺と間違われるっていう。

ツン:そうそう、もう何年も言われている。僕ブログ書いてないのに。

アシシ:俺がツイッターでフォロワーが一気に増えた2011年のアジアカップ優勝、女子ワールドカップ優勝の時に、現地で俺も一緒に甲冑を着ていたから、一部の人には「甲冑姿=アシシ」というイメージができちゃったんだろうね。ツンさんと俺の歳は一回り以上離れてるし、見た目も全然違うのにね。

ツン:世の中怖いと思った。どんだけ僕が一生懸命違うって説明しても、変わらないし。しかもそれ以降アシシは甲冑着なくなったし。僕はずっと甲冑&ちょんまげ姿なのに「ブログ見ました!」「本買いました!」って声かけられるっていう。僕本なんて出版してないしね(笑)。

アシシ:まさに俺の影武者ですな(笑)。いつもアシシの宣伝をしてくれてありがとうございます。

ツン:そう。アシシの好感度を上げていると思うよ。って冗談だけど。

アシシ:で、そのちょんまげはいつから付けるようになったんだっけ?

ツン: 2008年の北京五輪から。その当時は奥さんとよく代表戦見に行ってたんだけど、代表戦に青いユニフォームを着ていく普通のおっさんだった。あの頃、「スタジアムを青に染めろ」っていうキャッチコピーがあって、僕もうちの奥さんも律儀に青いものを色々買って青を着なきゃいけないんだと思ってた。でも、海外のニュース見るとオーストラリアのサポーターはカンガルー持っているし、ノルウェーのサポーターはバイキングやったりして、僕たち騙されているんじゃないかと。それで北京五輪の時に「コスプレやるわ」って。でも、2月の瀋陽で日本人サポーターが囲まれて警察に護衛されたニュースがあって、うちの奥さんに「そんなことしたら絶対トラブルになるからやめなよ」って反対されたんだよね。で、ひとりじゃ怖かったから、ちょんまげ5個買って行った。誰か一緒にかぶってくれるんじゃないかと思って。

アシシ:それがあの北京五輪の初戦ね。

ツン:そう。あの時、アシシも一緒だったよね。「ちょんまげ持ってきたんだけど一緒にかぶってくれないかな」って言ったら、他の人は「いいね」ってすぐかぶったの、躊躇なく。でもアシシは躊躇してたよね。あの時の5人がちょんまげ隊の元祖なの。

アシシ:初期ね、結成当初。

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2008年北京五輪アメリカ戦で初代ちょんまげ隊結成


ツン:
超初期、結成前夜みたいな感じ。その時は、ちょんまげだけですごい人気あったんだよ。写真撮ろうって、中国人でL字に曲がるぐらい列ができて、結構調子に乗ってたよ。でもオランダ戦の時に、オランダのサポーターのおじいちゃんが全身オレンジでさ。木靴もアフロヘアーもオレンジで、オレンジ色に塗ったチューリップを頭に刺してて。そうしたら、中国人が全員そっちに行っちゃったよね。それで、ちょんまげなんて買えば誰でもできるわけだから、これじゃいかんなって甲冑製作に入った。その甲冑を最初に着たのが、世界一蹴の旅をしてた君らなんだよ。

アシシ:2010年のワールドカップで、南アフリカに空輸してくれたんだよね。確か十何人いたんだけど、何体作ったの?

ツン:16体ぐらい作ったのかな。

アシシ:南アフリカワールドカップで結成した甲冑隊は壮観だった。

jron201612163.jpg南アフリカワールドカップの初戦カメルーン戦


ツン:
そういう感じでちょんまげやら甲冑姿のコスプレを始めて、2011年のカタールアジアカップあたりから爆発的に友だちが増えたよね。その直後に、2011年にあの地震が起きたんだ。

▼被災地支援を5年続けるきっかけとなった出来事


アシシ:3.11が起きて、あの直後にツンさんは車で東北に行ったんだよね。

ツン:3月19日かな。だから、一週間ちょっと後。あの時は、ボランティアのボの字も知らなかったし、ボランティアは苦手って思ってた。嘘くさい感じがして。でもテレビで物が足りないって知って、僕は靴屋を経営してるから、倉庫の靴を200足ぐらい積んでバンで行った、これ届けるしかないだろって。1回ぐらいやってもいいかなって感じでね。

アシシ:あの地震は被害が甚大だったし、震災8日後なんてまだ素人が現地に行っちゃいけないみたいな雰囲気があったよね。

ツン:超あった。あの時、僕のツイッターのフォロワーは800人ぐらいだったけど、それでも「素人がなめんな」みたいなリプが来たよ。

アシシ:あの時はみんなセンシティブになっていたしね。でも、実際行ってみたら違ったんでしょ?

ツン:そう。ボランティアってサッカーのサポーターとすごく似ているんだよ。お金をもらうわけじゃなくて無償の愛で、自己満足みたいな部分もあって似てる。あまりにも愛が強すぎて自分のやり方がベストだと思って、他のやり方を排除しようとするところも。僕がちょんまげで行ったら「東北をなめている」とか言われた。もちろん、ストイックに被災地に入ってがんばっているボランティアがいっぱいいる。そうやって、孤高にがんばっている人は良くて、僕みたいなゆるいのには文句が来る。でも、ボランティア界もサポーター界もいろんなやり方があっていいと思うんだよね。

アシシ:「全てのジャンルはマニアが潰す」ってやつね。どの分野も多様性を認めなきゃ発展していかないのに。で、現地に行ってみてどうだったの?

ツン:3月19日だと、僕が住んでいる関東は原発の問題はあったけど、ある程度普通の生活を取り戻してた。で、実際に東北に行って子どもたちに「何食べた?」って聞いたら、冷たいおにぎりを2個って。1日に2個だけだよ。うちの子なんか普通にテレビ見たり、お菓子食べてるのに。それを目の当たりにすると、子どもたちとちょっと遊んでやりたいなって。

アシシ:ツンさんは子ども思いだよね。

ツン:たぶんみんなそうだと思うけど、自分に子どもができるとよその子もすごい気になる。子どもができるまでは全然好きじゃなかったし、どちらかというと嫌いだったかな。でも自分に子どもができると、不思議とよその子どもも好きになる。で、今考えるとクレイジー過ぎるんだけど、そこでもちょんまげかぶっちゃったんだよね。避難所の閉そく感をなんとかしたくて。そうしたら避難場の子どもたちが「ピエロが来た!」って集まってきたんだ。それで、みんなと一緒に遊んで帰ろうとした時に、ひとりの男の子が「ちょんまげ」って僕のこと呼び捨てにして「ちょんまげ見せて」って言われてかがんだら、スポンって抜かれて隠されたんだよ。その時、ちょんまげ返してもらうために「大丈夫、また来週来るから」って言っちゃったんだ。それがまた来週、また来週ってなって、気付いたらこの5年間で100回ぐらい東北に行ってるかな。

アシシ:そんなエピソードがあったんだね。

ツン:当初は、ずっと継続してやろうなんて思ってもいなかった。

アシシ:百聞は一見に如かずじゃないけど、例えば俺もサッカー最初にハマったのはドイツで本場のサッカー専用スタジアムで日本代表の勝利を見たのがきっかけなんだよね。それが衝撃的すぎて、自分を突き動かす目に見えない何かを感じた。それと同じように、テレビではわからない、現場に行って五感で感じて、かつそこにいる人たちとのリアルなコミュニケーションがあって、ツンさんも突き動かされて、よし来週も来ようとなったと。

ツン:不謹慎だと思うんだけど、そこで僕はボランティアが楽しいと思ったわけ。

アシシ:全然不謹慎じゃないでしょ。基本的にボランティアって、何かしらのポジティブな気持ちがないと継続できないと思うから、全然不謹慎じゃないと思う。

ツン:よく人から、ツンさんすごいですねってお褒めをいただくけど、いやいや、これは趣味でやっていますと。僕は何もボランティアで世界を救おうとかそんな大それたこと、何も考えてない。みなさんがサッカーを見に行ったりゴルフやったりと同じで、僕はボランティアがすごく楽しいし、出会いもあって得してる。趣味として気軽にやっている感覚がある。ボランティアって肩肘張って歯を食いしばってやるもんじゃない。それが僕の自論なんだよね。

(後編へ「ちょんまげ隊の被災地支援活動を村上アシシがコンサルしてみた」)

村上アシシ

1977 年札幌生まれ。職業は経営コンサルタント・著述家。外資系コンサルティング企業・アクセンチュアを2006年に退職し、個人コンサルタントとして独立して 以降、『半年仕事・半年旅人』のライフスタイルを継続中。南アW杯出場32カ国を歴訪した世界一蹴の旅を2010年に完遂。Jリーグでは北海道コンサドー レ札幌のサポーター兼個人スポンサー。

ウェブサイト:http://atsushi2010.com/
ツイッター:https://twitter.com/4JPN
近著:海外旅行のノウハウ本『ロジ旅

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