国際的目線で考える秋春制と2ステージ制。そもそもなぜ移行すべきなのか?

2015年度から2ステージ制へと移行するJリーグは、さらにその後に秋春制を導入することが既定路線となっている。W杯での惨敗を受けて日本代表の強化スケジュール円滑化を目的とした秋春制早期導入の声も出ているが、果たしてその是非はどうなのか。あるいは、どうすればよりスムーズな移行が可能になるのか。本格的な夏を前にして、あらためて『J論』として議論してみたい。二番手に登場するのは、欧州からカリブ海、日本に至るまで幅広い取材で知られる河治良幸。欧州に限らぬ国際的な目線から、あるべきシーズンの姿を考える。



▼外圧が迫るシーズン移行


 そもそも、Jリーグを秋春制へと転換するメリットは何だろうか?

 そのメリットは主に、欧州リーグのカレンダーやFIFAが設定するスケジュールに合わせて、選手の移籍や日本代表のスケジューリングを行いやすいことだ。特にFIFAが国際Aマッチデーを9、10、11月に2試合ずつ設定したのは欧州リーグのシーズンに合わせて設定した意味は大きい。これに従い、各大陸連盟もカレンダーを調整していく必要に迫られている。アジアサッカー連盟もまた、ACLやアジアカップのスケジュールをFIFAに合わせていく方針だ。それを考えれば日本の気候、学校制度、決算期といった独自の事情を踏まえてなお、秋春制に移行するべきとの意見が出てきたのは理解できる。

 ただ、その前に一つ考えておきたいのが、2ステージ制と秋春制の相性だ。欧州の感覚からすれば、2ステージ制はスポンサー獲得に絡んだ"ライト層"取り込みの"苦肉の策"にも見えてしまうし、Jリーグの初期へと歴史が後退したような印象も受けるだろう。しかし、最終的にチャンピオンシップで年間王者を決める仕組みとはいえ、半期でリーグ戦の結果が出る仕組みは、この時点で移籍問題との融通が効きやすくなるというメリットがある。つまり、ファーストステージ終了後に欧州へと移籍する(あるいは、欧州からJリーグへ移籍してくる)という形を作りやすくなるのだ。

▼中南米で広く採用される2ステージ制
 実際、中南米の多くの国では、"アペルトゥーラ"(開幕シーズン)と"クラウスーラ"(閉幕シーズン)の2ステージ制が採用されている。その詳細に違いはあるが、基本的にはオフが年に2回ある形と理解してもらえればいい。その中で春秋制はチリやコロンビア、秋春制はアルゼンチンやメキシコなどが該当するが、それぞれの国の社会的、環境的な事情に基づくオフの期間や契約関係、そして昇格と降格のタイミングに違いがあるに過ぎない。「サッカーをやっている時期」自体は大枠で変わらないのだ。だからこそ、W杯やコパ・アメリカなど代表の大会が挟まる年なども、それぞれのオフ期間の設定などで柔軟にカレンダーを動かしやすいし、春秋制のチリと秋春制のアルゼンチンが同じ大陸で同居することで問題が起きたりもしない。

 春秋制から秋春制に移行したロシアの場合、Jリーグとも似た移籍に関する問題や欧州カップ戦との連動が決断の大きな理由だ。1ステージ制のまま欧州の主だったリーグに合わせたが、気候の問題があるため7月にシーズンが始まり、途中の12月~2月の厳冬期に"中休み"を入れ、最終的には3~5月にシーズンの終盤戦を戦うという少しゆがんだカレンダーを組まざるを得なかった。そのため"中休み"よりもシーズンオフのほうが短いという、かなり変則的な構造になっている。このシーズン構造だと、2ステージ制の採用も難しい。なぜなら、"中休み"の後に来るシーズンが短すぎるからだ。

 Jリーグはすでに2ステージ制への移行自体は決めているが、そのメリットを生かすことで秋春制へ転換した際の負担は、小さくできるだろう。シーズン上は秋を前期、春を後期として基本的に契約関係もそれで行うが、新卒の加入やクラブの決算は無理に動かすことなく、前期と後期の合間のオフに行う。それで理論上は問題ないように見える。

 ただ、それならば、そもそも秋春制にするメリットはあるのだろうか。2ステージ制にして、夏場にも"中休み"を設けるのであれば、そこを一区切りとして契約や移籍を進めやすい。選手も1シーズン制の中途半端なタイミングで出入りするよりスムーズで、チームも戦力編成の計算を立てやすくなる。

開幕を現行より少し早い2月下旬にして、5月いっぱいで締める。梅雨の6月と7月を"中休み"として、8月から11月を後期とし、縮減したカップ戦もそこに収めれば、12月初旬をプレーオフにあて、そこから2月の上旬をオフにできる。日本の気候が一番厳しい時期にオフを持ってこられるし、冬は九州や沖縄、夏は北海道や高原地域でキャンプが行われれば活性化にもなる。そういうゆとりのあるリーグにするという手はある。

▼秋春か春秋かは大きな問題にあらず
 9~11月に代表戦が6試合あってリーグ戦のクライマックスとバッティングするという問題を指摘する向きもあるようだが、2ステージ制である以上、春秋制でも秋春制でも起こるものだ。つまり、秋開幕で2ステージを行うなら、やはり11月は第1ステージのクライマックスと重なるのである。ネックはチャンピオンシップと昇降格プレーオフの時期だが、これも秋春制に移行したらしたで、W杯の年などは後期の開幕を早めるなどして日程を確保するしかないわけで、ある意味でシンプルな問題だ。

 個人的には、将来的には昇降格のプレーオフはともかく、チャンピオンシップは発展的に廃止して、純粋な2ステージ制で前期と後期の王者を決めるのが一つの理想像ではないかと考えている。つまりアルゼンチンと同じ方式だ。そもそもJリーグはそれほど大きな戦力差がないので、終盤まで優勝争いがもつれて大いに盛り上がる可能性が高い。前期と後期で分けるならなおさらだろう。

 いずれにしても2ステージ制になったことで、実は秋春制か春秋制かは大きな問題になり得ず、むしろ年2回のオフの期間を作るのかどうか、春の開幕時に降雪地帯への配慮した対応など、調整の問題になってくるのではないか。移籍、契約、決算、新卒の加入は2回のオフの都合の良いところで当てはめればいいことになる。そして、それならば、わざわざ秋春制にして混乱を生まなくても良いのではないかということにもなってくる。

 現行システムに慣れたファンには、2ステージ制だけでもかなりの違和感があるはず。前期と後期の区切りのオフ期間をしっかり工夫できるなら、秋春制でも春秋制でも構わない。そしてそれならば、わざわざ秋春制に移行せずに、春秋制のまま国際Aマッチデーや移籍・契約を調整する仕組みにしてしまえばいいのではないだろうか。


河治良幸(かわじ・よしゆき)

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCFF』で手がけた選手カードは5,000枚を超える。著書は『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『日本代表ベスト8』(ガイドワークス)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。サッカーを軸としながら、五輪競技なども精力的にチェック。

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