【FC東京U-18】金誠敏に象徴される”鬼気迫る姿勢”が手繰り寄せた勝利。西が丘で”本質”を見直したFC東京U-18、3位で大会を終える
金誠敏に象徴される”鬼気迫る姿勢”が手繰り寄せた勝利。西が丘で”本質”を見直したFC東京U-18、3位で大会を終える【新人戦順位決定戦第1報】(トーキョーワッショイ!プレミアム)
3位入賞で大会を終えたFC東京U-18。
◯試合結果
2月11日、FC東京U-18は味の素フィールド西が丘で”新人戦”「平成29年度 第19回 東京都クラブユースU-17サッカー選手権大会」3位決定戦に臨み、FC町田ゼルビアユースを4-1で下して3位でこの大会を終えた。
ファーストハーフの45分間はほぼ東京のペース。左サイドからの攻撃が機能し、前半12分に天野悠貴が送ったクロスに今村涼一がダイビングヘッドで合わせて先制。24分には小林里駆が倒されて得たPKを自ら決めて2-0とリードを拡げた。
前線の選手達が揃ってゴールを決めて掴んだ優勢をこの日の東京は逃さない。寄せる、運ぶといった激しいプレーを徹底してリズムを維持した。
41分には左コーナーキックからこぼれたボールを天野が無理なく柔らかさが伝わってくるかのようなモーションで蹴ると、このミドルシュートがゴール右に突き刺さり3-0。ゴラッソと言ってよい一撃で試合の行方を決定づけた。
セカンドハーフは修正してきた町田がボールをしっかりと動かしつつ東京ゴールに迫り、これを東京が受ける恰好に。こうなるとまだ相手の攻勢をしのぎきれない新チームは、コーナーキックがつづいた後半13分、ファーで折り返すようなシュートを鈴木舜平に決められ3-1と迫られてしまう。
しかし46分、先発を外れたこのチーム随一の業師である横田峻希が得意のドリブルで持ち込み、ゴールキーパーに倒されて得たPKを決めてダメ押し。実力者の町田に3点差をつける勝利で、先週の悔しい大敗からの再出発を果たした。
◯本質への再接近
2月4日、三菱養和SCユースに0-4と敗れた新人戦決勝リーグ第3戦で、敗色濃厚となった後半30分以降、佐藤一樹監督の口からまず最初に「緩いよプレッシャー!」という檄が飛んだ。そして”姿勢”や”立ち居振る舞い”がいっこうに改善されない状況での第二波である名言「誰も助けてくれないんだよ!!」を、佐藤監督は「自然と口から飛び出していた」という。
過去の先輩たちがこの”通過儀礼”に当たる実戦での失敗という過程を踏んでいないわけではないが、彼らと比べても、2018年度のプレミアを戦う新人たちは、技術や戦術以前の不足が目立つ。見守る傾向がある佐藤監督も、ティーチングに傾かないといけないかもしれないという旨の言葉を口にしていた。実際、この町田との試合では、ベンチに座らず声を出す姿が目についた。
「食材もなしに料理をつくってくれ、というのはちょっとちがう。いまはしっかりといい食材をできるだけ多くテーブルに並べる作業が大事なんだろうと思います」
練習でよかった選手、戦える選手を選んだと佐藤監督は言う。第3戦の先発と順位決定戦の先発を比較すれば、何を重視して町田との試合に臨んだかがわかるだろう。最終的にはもちろん技量も大事になってくるが、テクニックやスキルの巧拙ではない。攻守に於いてアグレッシヴなプレーを連続できるかどうかだ。そのメッセージは金誠敏(キム ソンミン)の起用に色濃く出ている。
何度でも立ち上がり、粘る金誠敏。
佐藤一樹監督はその姿を見つめていた。
先週の誠敏は出場時間ゼロ。4点ビハインドでも、交替枠が多いレギュレーションにもかかわらず、出番は公式戦のあとに25分×2本でおこなわれたBチームの練習試合がすべてだった。そこでの誠敏は、ワンプレーごとに中村忠コーチの大声で修正されていた。
あれからの一週間で状況は大きく変わった。
右サイドハーフで起用された誠敏は相手に寄ったときにかわされる、入れ替わられる、背後をとられるといったシーンを頻繁に発生させ、ピンチを招きもした。だから必ずしもプレーがうまくいっていたわけではない。しかしそれは、そういう結果を招くほど攻守に於いて、あえて擬音で形容するなら「ぐいぐい」「ゴリゴリ」が当てはまりそうな姿勢を貫いていた証でもある。アグレッシヴに寄せすぎた結果だからだ。そして相手にしてやられたあとに、誠敏は諦めずに次の行動に移っていた。攻撃ではドリブルやスルーパス、守備ではインターセプトといった有効打がチームのためになることもたしかだが、それ以外の局面に於ける地味な働きがチームのリズムや次の準備に与える影響もまた重要だ。その点で誠敏は、先週とは一転しての大勝に対し、少なくともマイナスにはなっていなかった。
献身的に二度追いをするような、そういう献身的な姿勢もまた重要なのではないか――と指摘すると、誠敏は「自分のプレーでチームを引っ張ることができたら、と思い、そうしました」と答えた。言葉少なく、おとなしいこの選手の胸にこもっていた熱いものを引き出すことができ、それをグループとしての成長につなげられることができれば、このチームは進歩できる。
一定以上の運動量、タフさ、ボールを奪いすばやく何度も切り換えること――そして勝っている試合でも負けている試合でも、かくあるべきという振る舞いをし、やるべきことを実行すること。中村コーチが炎を絶やさず、佐藤監督がその火を松明にともしたことで、本質に再び近づいたのが、この日のFC東京U-18だった。
すべての選手を列べて比較すれば、やはり横田峻希は巧さの点で突き抜けている。風貌を含めて中島翔哉に似た匂いを持つ彼に、10番的な働きを期待したくもなる。ただそれ以前に戦うことができなければ試合には勝てない。基本の要件を充たし、さらにすべての能力を高めたうえで、特長が突き出るほどにならなければプレミアで勝つことはできない。一段階も二段階も個の水準を高め、チームとしてもより強い心を持った戦う集団になっていく必要がある。その目標に向けて彼らは一歩を踏み出した。すべてはここからだ。
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