【東京V】帰ってきた澤井直人
【無料記事】【練習レポート】帰ってきた澤井直人(17.10.13)(スタンド・バイ・グリーン)
■右足アキレス腱断裂で全治約6ヵ月
故障により長く戦列を離れていた澤井直人が、今週から全体練習に完全合流している。
ロティーナ監督は「いい状態でトレーニングができています。今後、直人を入れるチャンスがどこであるか、タイミングを見て判断していきたい」と話した。
突発的な事故だった。2月5日、沖縄キャンプで行われた川崎フロンターレとのトレーニングマッチ。試合前のウォームアップで、それは起こっている。
「軽くジャンプして、着地からダッシュに移る瞬間、バチンと音が聞こえました。あのときは後ろから蹴られたと本気で思ったんですよ。試合や練習でもないのに、そんな激しい当たりをするなんて」
うそでしょ、冗談きついっスよと澤井が見上げた先には、中後雅喜の顔。ただ事ではないと見た中後は「すぐに人を呼ぶから。横になってろ」と冷静に言った。
「チュウさんにはあとで謝りました。一瞬でもそういう目で見てしまったので」
担架で運ばれながら、不思議と痛みは感じなかった。右足の感覚そのものがなかった。
診断結果は、右足アキレス腱断裂で全治約6ヵ月。長いリハビリ生活の始まりだった。
■ピッチで恩返しを
「一番つらかったのは、やはり入院生活ですね。最初に2週間、次に1ヵ月半。合わせて2ヵ月ほど病院でお世話になりました。いろんな人がお見舞いに来てくれて、本当にありがたかったです」
当然、同期の高木大輔も激励に駆けつけた。そこには思わぬ余波も生じた。
「道がすいている昼の常磐道ですよ。隣にヨシ(高木善朗)を乗せて、安全運転を心がけつつ気分よくクルマを走らせていたら、ん、いま上のほうで赤く光ったな。まさか、あれは……」(高木大)
自動速度取締機(通称オービス)の仕業である。
「あいつ、どんだけ早く僕に会いたかったのか。病室に来て『がんばれよ!』と口では言いながら、明らかに落ち込んでるんですね。逆にこっちが大輔を元気づけなきゃという気持ちにさせられて。なぜかふたりで励まし合うという、なかなかカオスな状況でした」(澤井)
午前と午後の筋力トレーニングのほか、時間はたっぷりあった入院生活。最も心に残った映画は、クリント・イーストウッド監督の『インビクタス/負けざる者たち』。反骨の物語に自らの境遇を重ね、気持ちを奮い立たせた。
「全力でダッシュができるようになったのは9月に入ってからかな。最初は不安がありました。勝手に動きをセーブしてしまい、いまいちスピードに乗りきれないなと。ボールタッチのフィーリングはわりといい感じです。前の自分だったらもっとできたな、反応や動きが少し遅いと感じることはありますけどね。ほかの誰よりもフレッシュな状態。チームのやり方に合わせ、試合で使ってもらえるように精一杯アピールしていきます」
終始、澤井の顔からにんまりと笑みがこぼれる。幼少期からサッカーを始め、これほどの長期間、プレーできなかったことはない。ボールを蹴って過ごす日々を取り戻せたのが、うれしくて仕方がないようだ。
「こうして復帰できたのは、ドクターやトレーナーの方々、チームメイト、スタッフ、応援してくれたサポーター、家族など、たくさんの支えがあったおかげです。ピッチで恩返しをするのが自分の仕事。早く選手としてスタジアムにいきたいです」