
【田村修一の視点】2025年9月20日 J1リーグ第30節 浦和レッズvs鹿島アントラーズ
J1リーグ第30節 浦和レッズ0(0-1)1鹿島アントラーズ
19:04キックオフ 埼玉スタジアム2002 入場者数 53,301人
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優勝の可能性を残すために、絶対的に勝利が必要な浦和と、2016年以来のリーグ優勝に向けて、ライバルの息の根を止めたい鹿島。強豪同士の力の籠った一戦は、監督采配に一日の長を見せた鹿島に軍配が上がった。
この試合唯一の得点となった鈴木優磨のゴール(14分)は、浦和守備ラインの不安定なボール回しを突いて、最前線でのプレスからボールを奪ってのもの。浦和にとっては、川崎とのルヴァン杯準決勝第2戦(9月7日)の2失点に続く自身のミスからの失点で、マチェイ・スコルジャ監督にとっては悔やんでも悔やみきれない–同時にタイトルを狙うチームとしては容認できない失点だった。
これで首位鹿島との勝ち点差が13となった浦和は、優勝の可能性がほぼ消えた。すでに天皇杯とルヴァン杯は敗退しており、今季の今後の戦いでのモチベーションの維持は簡単ではない。ただ逆にそうであるからこそ、戦い方をもう一度整理し再構築するいい機会であるともいえる。来季の攻勢に向けて、プレースピードとインテンシティの向上、それを可能にするオートマティズムの再構築は不可欠である。
一方の鹿島は、ピンチにも動じない鬼木達監督の冷静な采配で、アウェーの地で貴重な勝ち点3を獲得した。先制点の後に、マテウス・サヴィオのポジションを変えて次々とチャンスを作り出した浦和に対し、前半の鬼木は敢えて具体的な対応策を取らなかった。そこで失点するかしないか、それにより後半の対応策を決める。浦和の攻撃を凌ぎきった鹿島は、後半になると選手交代と選手のポジション交代を繰り返しながらプレーの強度を維持し、GK早川友基のビッグセーブもあり浦和につけ入る隙を与えなかった。鹿島と鬼木の強さ・したたかさの真髄が見えた試合といえた。
田村修一(たむら・しゅういち)
1958年千葉県千葉市生まれ。早稲田大学院経済学研究科博士課程中退。1995年からフランス・フットボール誌通信員、2007年から同誌バロンドール選考(投票)委員。現在は中国・体育週報アジア最優秀選手賞投票委員も務める。