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【六川亨の視点】2025年6月28日 J1リーグ第22節 FC東京vs横浜FC

J1リーグ第22節 FC東京2(0-1)1横浜FC
19:03キックオフ 味の素スタジアム 入場者24,233人
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横浜FCの決定機は開始4分、櫻川ソロモンがフリーで決めたヘディングシュートの1回だけ。それ以降はチーム一丸となって守ったと見るべきか、FC東京が拙攻を繰り返したと言うべきか。後半の反撃を見る限り、後者と言わざるをえないだろう。1トップにマルセロ・ヒアンを置くと、松橋力蔵監督が「前半は距離感をつかめず長いスルーパスの攻撃になった」と振り返ったように、ヒアンにロングパスを出す単調な攻撃に終始した。流れが変わったのは後半14分に長倉幹樹、佐藤恵允、仲川輝人の3人を同時交代で起用してから。特に長倉は“攻撃のオールラウンダー”としてドリブル突破やポストプレー、背後への抜け出しに加え、オープンスペースで味方からのパスを引き出してタメを作り、攻撃の起点になるなど、FC東京の攻撃に多彩なアクセントを加えた。ここらあたり、パスを受けたら強引なドリブル突破や、前線に味方がフリーでいながらシュートを選択してブロックに遭うなど攻撃のリズムを崩していたヒアンとの大きな違いだろう(意気込みは理解できるものの空回りの印象が強い)。

 

試合は長倉の投入でFC東京が息を吹き返し18分、24分と立て続けにチャンスを迎える。そして34分には波状攻撃からPKを獲得したものの、これがFC東京でのデビュー戦となったアレクサンダー・ショルツのシュートはGK市川暉記にストップされてしまう。それでも40分、橋本拳人の右クロスを長倉がヘッドで同点に追いつくと、アディショナルタイム45+10分には長倉がPKをゲット。キッカーに松橋監督は森重真人に「モトキ(幹樹)と伝えたが、モリゲ(森重)と聞こえたかもしれない」と言うように、ショルツがペナルティースポットに寄ってきても、森重はボールを抱えて離さない。そしてJ1出場500試合となる森重は、ゴールど真ん中上に決めて熱戦に終止符を打ったのである。

 

長倉は、これで2試合連続して2ゴールに絡む活躍で5月以来の連勝に貢献。昨シーズンの荒木遼太郎のような「救世主」と言っていい貢献度である。松橋監督は中2日の3連戦のため選手をターンオーバーして起用したが、次節7月5日の柏戦では長倉をスタメンで起用するのかどうか、こちらも注目したいところである。

 

 

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。