
【田村修一の視点】2025年4月29日 J1リーグ第13節 FC東京vs清水エスパルス
J1リーグ第13節 FC東京 0(0-1)2 清水
13:09 キックオフ 味の素スタジアム 入場者数33,769人
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両チームの明暗が分かれた試合となった。
清水の秋葉忠宏監督にとっては、確かな手応えが感じられた試合だった。ぶっつけ本番でセンターバックに起用した宇野禅斗、清水ではリーグ戦初先発のボランチ弓場将輝が期待以上の活躍をしたばかりではない。後半途中に守備の安定のために指示した3バックへの移行を、うまくいかないと見るや選手たちが自らの判断で4バックへと戻した。その臨機応変の対応に、チーム成熟の兆しを感じたからだった。
乾貴士の存在感も欠かせない。彼がボールを持つとチーム全体に落ち着きが生まれ、攻撃の幅が大きく広がる。先制点となったPKを誘ったプレーもそうだが、2点目のドリブルシュートは圧巻だった。
一方、前節のG大阪戦の劇的な勝利で、上昇の兆しを掴んだかに見えた東京だったが、いまだ停滞感の中から脱せずにいる。それなりにチャンスを作り出した前半、早めにベンチが動きながら主導権を握ることができなかった後半という流れはG大阪戦と同じで、違いは最終盤に得点ができなかったことだった。
松橋力蔵監督も認めるように、「選手同士の攻撃の目線が合っていなかった」のは事実である。連動性の欠如。だがその再構築は、シーズン途中とはいえ決して不可能ではない。過去にそれを成し遂げたチームはJリーグにも幾つもあったし、現に今季も浦和がここにきてチーム状態を劇的に向上させている。松橋監督の手腕は、誰もが認めるところである。状況をシンプルに捉え直すところから始めるのがいいのかも知れない。
田村修一(たむら・しゅういち)
1958年千葉県千葉市生まれ。早稲田大学院経済学研究科博士課程中退。1995年からフランス・フットボール誌通信員、2007年から同誌バロンドール選考(投票)委員。現在は中国・体育週報アジア最優秀選手賞投票委員も務める。