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【六川亨の視点】2025年3月29日 J1リーグ第7節 FC東京vs川崎フロンターレ

J1リーグ第7節 FC東京 0(0-0)3 川崎F
17:03 キックオフ 味の素スタジアム 入場者数33,632人
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FC東京は前節の福岡戦(0-1)から大幅にメンバーを入れ替えてきた。スタメン出場の森重真人、長友佑都、山下敬大はメンバー外。交代出場した小泉慶もベンチ外となった。それでも立ち上がりからトップギアで川崎Fに襲いかかった。川崎Fの出方をうかがうのではなく、素早いパス交換から左MF俵積田晃太やトップ下に入った佐藤恵允らが推進力を発揮。ボランチの高宇洋と橋本拳人が鋭い出足でパスカットから川崎Fの攻撃を無力化すれば、両SBの安斎颯真や土肥幹太(システムは4-2-3-1)も果敢に押し上げて攻撃に厚みを加えた。前半7分に俵積田がGKと1対1の決定機を決めていれば、試合展開も変わっていたかもしれない。

 

ところが前半を0-0でしのいだことで、川崎Fが反撃に転じる。前半はほとんどワンタッチでリターンパスをするなど存在感の希薄だった家長昭博が、前線でタメを作ることで攻撃に厚みが生まれた。10分の先制点、28分の追加点はいずれも右SB佐々木旭のクロスから生まれた。ダメ押しの3点目は不用意なバックパスを脇坂泰斗に奪われたものだが、その際に詰めたCB木村誠二も簡単に抜かれて最後は脇坂、エリソンとつながれた。この日のFC東京のDF陣はCBに木村、岡哲平、右SBに土肥幹太、左は安斎と大幅に若返った。それゆえの失点かもしれないが、これをチームの若返りの過渡期と見るか。そして「今回はいつもより針を振ったことで失うものも多かった」(松橋力蔵監督)と反省の言葉を口にしたが、これまでのボールポゼッションによる遅攻に加えて新たな攻撃スタイルにトライしようとする指揮官の英断を良しとするか。

 

これで4試合も勝利から遠ざかっているのは事実である。それでも松橋監督の方向性を支持するのかどうか。フロントの判断とともに、サポーターの度量も問われる分水嶺となる試合だったような気がしてならないFC東京だった。

 

 

 

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。