【六川亨の視点】2021年4月3日 J1リーグ第7節 浦和レッズvs鹿島アントラーズ
J1リーグ第7節 浦和レッズ2(1-1)1鹿島アントラーズ
15:04キックオフ 埼玉スタジアム 入場者数9,975人
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開幕前の専門誌で、多くのサッカー解説者、サッカージャーナリストが川崎Fに次ぐ優勝候補に上げていたのが鹿島だった。ザーゴ監督就任1年目の昨シーズンはボールをポゼッションするスタイルに変更しながら5位に食い込んだ。クラブ創設30周年を迎える節目の今シーズンは、ACLの負担もないだけに、それも当然のことだったかもしれない。
ところが蓋を開けてみれば、第7節を消化して勝点3を奪ったのは第3節の湘南戦(3-1)だけ。新外国人選手の合流が遅れ、ケガ人も続出したとはいえ、それはどのチームも似たり寄ったりの状況だろう。その結果、福岡(0-1)、名古屋(0-1)に続き4月3日の浦和戦も1-2で敗れて3連敗を喫した。
第7節終了時点で勝点4の16位。降格圏の17位・柏とは同勝点で並んでいるだけに、昨シーズンの悪夢(開幕から4連敗)を思い出しているファン・サポーターもいるかもしれない。
その浦和戦は、20歳のCB関川郁万のJ1リーグ初ゴールで1-1の同点に追いつく粘りを見せ、スコアこそ僅差だったものの、かつての鹿島が誇った「狡猾さ」はどこにもなかった。
もちろん浦和がボールをロストすると、素早い攻守の切り替えから複数の選手で囲んでボールを奪回する強度の高い守備を見せたこと、フィフティーボールの争いで球際の強さを発揮したことなど勝因は多々あった。
1トップで攻撃陣を牽引した武藤雄樹は「まず攻守の切り替え、球際など鹿島の強さはそこにある。そこで勝つことでゲームを優位に進められる」と振り返ったが、かつての鹿島は相手が分かっていてもそれを許さない強さがあった。
4試合ぶりの勝利となった浦和のロドリゲス監督は「コンプリートな試合ができたので、これを基準に続けていきたい」と手応えをつかんでいたが、浦和のアグレッシブな姿勢が鹿島に“らしさ”を発揮させなかったのかもしれない。
その一方で、試合終盤のザーゴ監督は18歳の船橋佑をボランチに、19歳の松村優太を右MFに起用した。ザーゴ監督は「就任して初めての悪い試合」と言いつつも、ベテランのレオ・シルバやキャプテンの三竿健斗をベンチに下げるなど大胆な采配を見せた。
その真意は、不甲斐ない戦いをしたチームの中心選手に奮起を促したかったのか、それともチームの若返りを視野に入れたものなのか。こちらはもう少し試合を見守る必要があるだろう。
最後に、浦和は後半25分に素晴らしいゴールを奪った。左サイドで山中亮輔が攻撃の起点になり前線へフィード。パスを受けた明本考浩は武藤とのリターンパスから武藤にボールを預けると、武藤が左のオープンスペースにパス。これに山中が追いつきダイレクトでクロスを上げると、逆サイドに詰めていた関根貴大がダイビングヘッドで決めた。
しかし5分ほどのVARの結果、明本のパスを受けた際に前のめりになった武藤の左手がボールに触れたとしてハンドの反則からゴールは取り消された。
美しい流れからのゴールだっただけに、取り消されたのは残念だった。
六川亨(ろくかわ・とおる)
東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。