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【六川亨の視点】2023年2月11日 FUJIFILM SUPER CUP 横浜F・マリノスvsヴァンフォーレ甲府

FUJIFILM SUPER CUP 横浜FM 2(1-1)1 甲府
13:35キックオフ 国立競技場 入場者数 50,923人
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天皇杯では鹿島や広島などJ1勢5チームを撃破して初タイトルを獲得した甲府だったが、横浜FMの壁は厚かったと言わざるを得ない。

横浜FMも万全だったわけではない。大会直前に正GK高丘陽平がMLSバンクーバーへ移籍。右SBの小池龍太と松原健は負傷と守備陣に不安を抱えていた。ケヴィン・マスカット監督は柏から獲得したCB上島拓巳を右SBにコンバートすると、25歳のオビ・パウエル・オビンナをスタメンで送り出した。

結果はというと、上島は「柔軟性を持って対応してくれた」だけでなく、水沼宏太や喜田拓也らの攻撃力も引き出した。オビ・パウエル・オビンナも「素晴らしいプレーをしてくれた。前半に素晴らしいセーブがあり、強さを見せてくれた」と指揮官も満足そうに振り返る。

後半途中から出場したマルコス・ジュニオールやヤン・マテウスら『計算できる』外国人選手も健在で、スタメン出場のアンデルソン・ロペスやエウベルともども仕上がりも早そうだ。レオ・セアラ(C大阪)、仲川輝人(FC東京)、岩田智輝(セルティック)と主力は去ったが、それでも優勝争いを演じるだけのポテンシャルはあることを感じさせる甲府戦だった。

一方の甲府は、前半こそシュート数で上回り、先制されながらも新戦力のピーター・ウタカのゴールで同点に追いつく粘りを見せた。「ボールホルダーに制限をかけつつ、センターバック2人が上手く(ライン)コントロールできていた」ことを篠田善之監督は善戦の理由にあげた。

しかし前半のオーバーワークがたたったのか、後半はほとんどの時間を自陣でプレーすることになる。これがJ1優勝チームとJ2で6位のチームとの差と言ってしまえばそれまでだが、前半だけでも互角に渡り合えたことは賞賛したい。チームは長年慣れ親しんだ3BKから篠田監督になり4BKにモデルチェンジ中だ。

ウタカとのコンビネーションはこれから深まっていくだろうし、左SBにスタメン起用されたルーキーの三浦颯太はスピードとタイミングのいい攻め上がりで前半は横浜FMゴールを脅かした。そんな甲府にとって正念場となるのは、9月から始まるACLでの戦いとなるだろう。それまでにどれだけ勝点を稼げるか。まずはスタートダッシュに成功するかどうか注目したい。

そうそう、横浜FMはリーグ優勝5回、天皇杯優勝1回で今大会が6度目の出場となるが、過去は5回とも敗れていて、今回が初優勝となることも正直意外だった。

 

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。