【六川亨の視点】2022年8月6日 J2リーグ第30節 大宮アルディージャvs横浜FC
J2リーグ第30節 大宮アルディージャ3(1-1)2横浜FC
19:03キックオフ NACK5スタジアム大宮 入場者数6,633人
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今シーズンの両チームの対戦は、2月19日の開幕戦まで遡る。2-0とリードしたホームの横浜FCだったが、後半は大宮アルディージャが追い上げを見せて2-2のタイスコアに持ち込む。勢いに乗る大宮はその後も猛攻を仕掛け、左ポスト直撃やクロスバーをかすめる惜しいシュートを放ちながらもゴールを奪えず。そして後半アディショナルタイム、大宮はPKを与えたことで、横浜FCが3-2で逃げ切った。
横浜FCはこの勝利を足がかりに、開幕から13試合負けなしで一時は首位を独走。一方の大宮は、その後も終了間際の失点により勝ちきれない試合が続き下位に低迷と、両者の明暗はくっきりと分かれた。
そして迎えた第30節、ホームの大宮は6月12日の第21節以来8試合連続して勝利から見離され、最下位のFC琉球と同勝点(25)の21位に低迷。対する横浜FCは前節で岩手に0-3で敗れたものの、それまで11試合無敗で首位をキープしてきた。
試合は前後半の立ち上がりに大宮が柴山昌也の連続ゴールでリードを奪えば、横浜FCもすかさず同点に追いつく粘りを見せた。そして後半19分、意外な形で決勝点が生まれる。大宮CB新里亮のロングボールを横浜FCのGKスベンド・ブローダーゼンは、ペナルティーエリアを飛び出し、ジャンピングボレーでクリアしようとしたものの空振り。こぼれ球を拾った冨山貴光は、慎重にトラップしてから無人のゴールに流し込んで決勝点とした。
大宮の勝因をあげるとしたら、ゴールに絡んだ選手に加え、移籍ウインドウのオープン期間にジュビロ磐田から加入したCB袴田裕太郎と、FC東京から移籍した右SB岡庭愁人の存在が大きい。2人は堅実なプレーで不安定だった大宮DF陣に落ち着きをもたらしただけでなく、シンプルなフィードで攻撃の潤滑油となっていた。
そして改めて思うのは、サッカーというより、Jリーグの不思議さだ。試合は点を取り合うスリリングな展開から大宮が開幕戦の雪辱を果たした。ところがどう見ても「首位チーム対最下位チーム」の試合内容ではなかった。ほぼ互角の試合内容と言っていい。そして最下位チームが首位チームを倒した。普通なら「ジャイアントキリング」ということになるのだろうが、そんな言葉が当てはまらないところにJリーグの不思議さを感じてしまう。
六川亨(ろくかわ・とおる)
東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。