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【六川亨の視点】2021年10月2日 J1リーグ第31節 川崎フロンターレvsFC東京

J1リーグ第31節 川崎フロンターレ 1(1ー0)0 FC東京
17:03キックオフ 等々力陸上競技場 入場者数9,789人
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中2日の5連戦のラストゲームという川崎Fに対し、FC東京は中6日とコンディションはかなり上向いているはず。このため試合開始からFC東京がイニシアチブを握ったのは当然だった。ただ、FC東京も無闇に圧力をかけてカウンターから失点しては、第9節のホームゲームの再現(2-4)になりかねない。そこで試合を押し気味に進めながらも“重心”は後ろに残してリスクヘッジは怠らなかった。

お互いに、いつ相手の急所を急襲するか。さながら懐にナイフを忍ばせながら、いつ抜くかタイミングを見計らっているような前半の展開だった。

そして先にビッグチャンスをつかんだのは、FC東京の攻撃をいなしていた川崎Fだった。前半38分、レアンドロ・ダミアンの戻しを、それまでほとんど存在感のなかった家長昭博がペナルティエリア外から強烈なシュート。これはFC東京のDFが体を張ったブロックしたものの、前半アディショナルタイム1分、ワンチャンスから川崎Fが均衡を破った。

マルシーニョのドリブル突破には右SB中村拓海がよく対応していたが、攻撃参加した登里享平を止めることはできず、登里のクロスからレアンドロ・ダミアンがヘッドで決勝点を奪った。前後半を通じて川崎Fの決定機はこの1回だけ。長谷川健太監督も「決定機は我々の方が多かった」と悔しさを滲ませながらも、「それを決めきるしたたかさがある」と川崎Fの強さを称えた。

FC東京にとって惜しまれるのは、今シーズンでベストの試合をしながら結果がついてこなかったことだ。相手が王者の川崎Fということ、そしてベテランの高萩洋次郎が浦和戦に続いてスタメンで出場し、精力的にプレスを掛けることで、アダイウトンやディエゴ・オリベイラらブラジル人も守備を怠らなかった。加えて長友佑都が加入したことで、ボランチの安部柊斗、左FWのアダイウトンらとで攻撃のトライアングルが生まれつつあったのも好材料と言える。その意味では、後半アディショナルタイムの三田啓貴の直接FK(からのハンドかどうか)を含め、せめてイーブンにしておきたい試合だった。

一方の川崎Fは、難しいヘッドをいとも簡単に決めたレアンドロ・ダミアンだけでなく、前節の神戸戦で活躍した家長に加え小林悠らベテラン選手は落ち着いたプレーでゴール量産してチームを牽引している。この決定力の高さが川崎Fの絶対的な強さであることに間違いはないだろう。さらに橘田健人、脇坂泰斗、旗手怜央のMF陣は中村憲剛や大島僚太を彷彿させる落ち着いたパスワークを見せる。そしてDF陣のやりくりについては鬼木達監督のベンチワークが光り、中2日や3日といった5連戦も終わってみれば5連勝で切り抜けた。

この日の勝利で川崎Fは勝点を81の大台に乗せた。その結果、勝点57で3位の神戸以下のチームが残り7試合を全勝しても川崎Fには届かなくなった。唯一逆転の可能性があるのは2位の横浜FMだが、勝点差は12と4ゲームも離されているため、川崎Fのリーグ連覇は間違いないだろう。となれば、次の興味はリーグMVPといったところか。こればかりは「議論百出」になりそうなので注目したい。

 

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。