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【六川亨の視点】2021年5月22日 J1リーグ第15節 FC東京vsガンバ大阪

J1リーグ第15節 FC東京 1(1ー0)0 ガンバ大阪
19:01キックオフ 味の素スタジアム 入場者数4,886人
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開幕前の評価を大きく裏切ったチームの1つがFC東京だろう。4月11日の第9節・川崎F戦から5連敗。得点3に対して失点は13点と失点癖が止まらない。第12節の横浜FM戦と第13節の鹿島戦はいずれも0-3で敗れた。

ディエゴ・オリベイラ、アダイウトン、レアンドロの外国人選手に加え俊足の永井、ストライカーとして覚醒しつつある五輪代表候補の田川と前線のタレントは豊富だ。このため長谷川監督が3トップを採用したのも理解できる。そこで昨シーズンの終盤からは、本来はCBだった森重をアンカーに置く4-3-3を採用した。

アンカーには東や今シーズン加入した青木らも試したものの、ロングパスの精度で森重にはかなわない。しかし森重をアンカーにすると、CBにジョアン・オマリや岡崎、ルーキーの蓮川らを起用したが、やはり森重に比べると安定感で見劣りするのは仕方のないことだった。

このジレンマのなか、悔しい思いをしていたのが元日本代表の高萩だった。FC東京で唯一J1リーグ優勝を経験しているファンタジスタは、今シーズンのJ1で第4節の大分戦(1-1)で交代出場した31分と、第9節の川崎F戦(2-4)で同じく交代出場した12分の計43分しかプレーする機会を与えられなかった。

当時の心境を「やはり一サッカー選手としては、試合に出られないのは悔しい思いをしながら練習をしてきました。どこかでその悔しさをぶつけたいと思った」と振り返る。

高萩にも、FC東京にも転機となったのが第14節の柏戦(4-0)だった。長谷川監督は青木と阿部のダブルボランチと、高萩をトップ下に置く4-2-3-1を今シーズン初めて採用。これがずばりハマった。

高萩は17分と18分にいずれもカウンターからアダイウトンの連続ゴールをアシストし、前半で試合の大勢を決めた。

そして迎えた22日の第15節のG大阪戦。指揮官は古巣との対戦で「G大阪どうのこうのではなくウチのサッカー、前節で具現化できた我々のサッカーをホームでできるかどうかに尽きる」と話しつつ、柏戦と同じスタメンを送り出した。

結果は試合開始1分、青木のパスを受けた高萩が右タッチラインを背にしながら右足アウトサイドで軽く浮かした絶妙なワンタッチパスを攻撃参加していた右SB内田に送る。内田はドリブルで1人をかわしてクロスを送り、ディエゴ・オリベイラの決勝点につなげた。

チーム最年長の“味のあるプレー”は必見の価値がある。

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。