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【六川亨の視点】2021年11月6日J1リーグ第35節 横浜F・マリノスvsFC東京

1リーグ第35節 横浜F・マリノス 8(4ー0)0 FC東京
16:03キックオフ 日産スタジアム 入場者数18,307人
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「入りは悪くなかった」とはFC東京のキャプテン東慶吾のコメントである。その言葉通り、立ち上がりはFC東京が押し気味に試合を進めた。今シーズンはほとんどの試合で4-2-3-1を採用してきたが、横浜FM戦ではディエゴ・オリベイラを右MF、東を左MFに置く4-4-2でスタートした。横浜FMと最終節まで優勝を争った2019年のスタイルである。

ただ、横浜FMも7分を過ぎる頃にはしっかりと対応し、五分の展開に戻した。先制点は10分、前田大然がゴールラッシュの口火を切った。FC東京にとっては不運が重なった失点でもある。仲川輝人へのタテパスはタイミングが合わなかったものの、渡辺剛のクリアがすぐ側にいた長友佑都に当たりルーズボールとなる。

これを拾った前田が快足ドリブルでゴールに迫ると、GK波多野豪は飛び出して前田のシュートをブロック。ところが、このこぼれ球が再び前田の前にこぼれ、前田は左足シュートをゴール上に突き刺した。GK波多野の飛び出しがもう少し早ければ、ドリブルをカットできたかもしれないだけに、もったいない失点だった。

さらに前半18分、仲川のドリブルに対し森重真人のアタックはボールではなくカニばさみのような格好になり仲川を倒してしまう。西村雄一主審はプレーを流したが、1分後にVARが入り、フィールドオンレビューの結果PKと、森重にはイエローカードが出された。

24分には左CKのショートコーナーから扇原貴宏のクロスにGK波多野が飛び出したものの、目測を誤ったのかキャッチもパンチングでクリアすることもできず、ただ左の手の平で触ってコースを変えただけ。右サイドで待ち構えていた小池龍太への絶好のパスになり3点目を許す。長谷川健太監督が「3点目はGKのミス絡み」と指摘したが、悔やまれる失点だった。

前節の清水戦では飲水タイムの前に3ゴールを奪ったFC東京だったが、3日後の横浜FM戦では真逆の展開が待っていたとは誰も予想できなかっただろう。

さらにFC東京は前半39分、右CKの際にマークを振り切られた森重がチアゴ・マルチンスを後ろから引っ張って倒してしまい再びPKを与えただけでなく、2枚目のイエローカードで退場処分。残り50分を10人で戦わなければならない苦境を招いてしまった。J1リーグ出場408試合、日本代表でも活躍したベテランとは思えないこの日のパフォーマンスだった。

終わってみれば8-0の大差がついた一戦。FC東京にとっては2007年の川崎F戦(0-7)を上回る最多失点という不名誉な記録を更新した。横浜FMは2007年の横浜FC戦(8-1)、2018年の仙台戦(8-2)に続く3度目の8ゴールで、これもJ2とJ3を含めても横浜FMだけしか達成していない新記録である。ちなみにJ1の最多得点ゲームは1998年に磐田がC大阪を9-1で下した試合で、中山雅史は5ゴールをマークした。

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。