【六川亨の視点】2021年10月27日第101回天皇杯準々決勝 川崎フロンターレvs鹿島アントラーズ
第101回天皇杯準々決勝 川崎フロンターレ 3(1ー0)1 鹿島アントラーズ
18:00キックオフ 等々力陸上競技場 入場者数9,776人
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川崎Fのリーグ連覇はほぼ決まりだろう。何しろ今シーズンは第26節で福岡に1敗を喫しただけで、その後は7連勝で独走中だ。ルヴァン杯こそ準々決勝で浦和に1-1、3-3と2引き分けながらアウェーゴールで脱落したが、天皇杯ではベスト8に進出し、まだ2冠の可能性を残している。
そんな川崎Fをストップする一番手として鹿島に期待したが、チームの完成度、戦術の習熟度の違いは明らかだった。鹿島に勝機があるとすれば、マイボールになったら無理に攻めずに時間を使い、ファン・アラーノやアルトゥール・カイキの両サイドからカウンターを仕掛けることだと思った。狙い目としては右SB山根視来が攻撃参加した背後のスペースをつくか、ショートカウンターからCB谷口彰俉とのスプリント勝負と思っていた。
ところがマイボールになると前半から2トップに果敢にタテパスを入れて攻撃に転じた。しかし選手間の距離が遠く、サポートも少ないため簡単にボールを失っては「押し込まれて失点し、後半もう一度というなかで、早い時間(3分と6分)に失点」(相馬監督)したことで緊張の糸が途切れた。相馬監督の言う通り、「いろんな面で、パスの精度、鬼木監督の作っている浸透度も高いものがあった。前半がまんしきれず(川崎Fの形に)もって行かれてしまった」試合でもあった。
救いがあるとすれば、相馬監督は前線の4選手を交代して試合終盤は川崎Fを自陣に押し込み、交代出場の荒木遼太郎が1点を返したことだろう。後半42分、鹿島サポーターの陣取るゴール裏から「1点くらい返しなよ」という声が聞こえたような気がしたのは空耳だろうが、その3分後に19歳の荒木が1点を返して古豪の意地を見せた。
六川亨(ろくかわ・とおる)
東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。