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【六川亨の視点】2021年10月23日J1リーグ第33節 FC東京vs鹿島アントラーズ

J1リーグ第33節 FC東京 1(0ー1)2 鹿島アントラーズ
14:03キックオフ 味の素スタジアム 入場者数9,748人
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「堅守速攻」は鹿島の伝統である。一方FC東京も長谷川健太監督が就任して4年目で、前線からのプレスによるショートカウンター、「ファストブレイク」は浸透している。そして鹿島は「タイトル奪還」が、FC東京は「悲願のリーグ初制覇」が今シーズンの目標だった。しかし両チームともその目標は修正を余儀なくされた「似たもの同士」の対戦でもあった。

ところが試合は相馬直樹監督が、「お互いに勝ちを意識した、ゴール、背後を狙うような、タテのスピーディーな展開」であり、「アダイウトンの足元に入ったボールがワンタッチでつながればいいが、引っかけられると一気に裏返っちゃう」(長谷川監督)というカウンターの応酬となった。

その象徴的なシーンが前半18分の攻防だ。FC東京がカウンターを仕掛けて最後はアダイウトンがカットインからシュートを放つとDFに当たってバウンドする。これを安部柊斗がボレーで狙ったが、GK沖悠哉が素早く反応してブロック。そして鹿島は逆にカウンターを仕掛け、ディエゴ・ピトゥカのドリブル突破から植田綺世につなぎ、最後は土居聖真が至近距離からシュート。しかしこちらもGK児玉剛がナイスセーブでゴールを死守した。

片時も目の離せないスピーディーな展開は、とても6位(鹿島)と9位(FC東京)の対戦とは思えなかった。敗れたFC東京にとって、前半35分にディエゴ・オリベイラが負傷交代したのは誤算だっただろう。それでも「選手が気持ちを出して1点を返してくれたことは次の試合につながる1点だと思います」と長谷川監督が言葉を絞り出したように、プロとしてのプライドをホームのサポーターに見せることはできた試合だった。

 

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。