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【六川亨の視点】2021年9月18日 J1リーグ第29節 FC東京vs横浜FC

J1リーグ第29節 FC東京 4(3ー0)0 横浜FC
19:03キックオフ 味の素スタジアム 入場者数4,368人
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前節の柏戦では、許した決定機はゼロにもかかわらず、GK波多野豪とCB渡辺剛の連係ミスから失点し0-1で敗れた。試合後の長谷川健太監督も、第一声は珍しく選手を突き放すコメントを残した。

ところが横浜FC戦は4-0の大差で勝ったことはもちろん、試合内容でも圧倒したため、指揮官は「今日は何も言うことないです。選手たちが熱を感じるような試合を集中して90分やってくれたと思いますので、もう本当に何も言うことはないです」と手放しで絶賛した。その上で、勝因の一因として「もちろん長友佑都くんの存在だと思っています」と11年ぶりに古巣へ帰還したベテランの存在を指摘した。

当の長友は、ゴールを記録したわけでも、アシストを残したわけでもない。にもかかわらず、チームは劇的に変化したのだから、サッカーとは不思議なものだ。

長友の加入で目に見える変化をあげるなら、まず安部柊斗と青木拓矢のダブルボランチは、前線の外国人トリオがボールを失うと、素早い切り替えから横浜FCのカウンターを阻止しつつ高いボール回収率でチームに貢献した。さらに安部はもちろん、青木も守備オンリーではなく積極的に前線に顔を出して右サイドの攻撃を活性化した。

柏戦では本来の左SBに戻ったものの、ほとんどの時間で消えていて、イージーミスも目立った小川諒也が、長友の加入で右SBに再コンバートされると何度も攻撃参加にトライしてディエゴ・オリベイラの先制点をアシストした。CBジョアン・オマリも途中出場のブラジル人FWと肉弾戦を展開するなど、長谷川監督が指摘したように“熱量”のこもった試合で勝利をつかみ取った。

そして特筆したいのは、前半21分にパスカットから追加点を奪い、後半41分には渡辺凌磨のシュートのこぼれ球を押し込んでダメ押しの4点目を決めたレアンドロである。一時は出場機会を失い、今シーズンはここまで17試合出場の5ゴールに止まっている。しかし彼がゴールを決めた第2節のC大阪戦(3-2)、第20節の大分戦(3-0)、第21節のC大阪戦(2ゴールを決め3-3)、第27節の神戸戦(1-0)と、ゴールした試合は無敗を誇っている。それは今回の勝利でさらに更新した。ついでにルヴァン杯でもプレーオフ第2戦の湘南戦(4-1)と準々決勝第2戦の札幌戦(2-0)でも貴重なゴールを奪い、2戦合計での逆転劇に貢献している。

長友の加入によりチームには精神的な柱ができた。加えてゴールをすれば無敗というラッキーボーイ(?)も健在だ。このため名古屋、浦和、川崎Fと続く3連戦は、FC東京にとって格好の試金石と言えるだろう。

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。