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【六川亨の視点】2021年9月12日 J1リーグ第28節 FC東京vs柏レイソル

J1リーグ第28節 FC東京 0(0ー1)1 柏レイソル
19:04キックオフ 味の素スタジアム 入場者数4,987人
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FC東京にとって3年連続となる夏場のアウェー8連戦(1試合はルヴァン杯準々決勝)を、今年は3勝2分け3敗で終えてホーム味の素スタジアムに戻ってきた。長谷川健太監督は試合前日の会見で「久々のホームの初戦、どういう形で入れるかでこれからの流れができるので、柏戦は大事な試合になる。いい緊張感を持って入りたい」と、2ヶ月と2週間ぶりのホームゲームに期待を寄せていた。

ところが試合後の指揮官は、開口一番「もう、なんて言うんですかね。消化不良のような試合をして、見に来てくれたサポーターに、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです」と、いつもは選手をかばうのが常なのに、珍しく叱責した。

その原因は失点後のプレーにあった。前半9分、クリスティアーノのタテパスにGK波多野豪は「オーケー」と大声を出して飛び出した。CB渡辺剛は突進してきたFW細谷真大をブロックするように体を入れた。ところがGK波多野はボールをキャッチしようとペナルティエリアのライン際でストップ。すると渡辺にブロックされながらも足を出した細谷は右サイドにこぼれたボールを拾うと無人のゴールに決勝点を流し込んだ。

GK波多野がペナルティエリアから飛び出してクリアしていればなんてことはない、防げたはずの失点である。派手なファインプレーも見せるGK波多野だが、この日のようにイージーな失点も昨シーズンのACLから続いている。記録に残る明らかなミスではないが、それでもチームメイトは「またか」と意気消沈したかもしれない。

そして長谷川監督が激怒した一番の理由は「ミスからの失点を、みんなでカバーして取り返すんだという気持ちで戦えればゴールをこじ開けることはできたと思う」と指摘したように、ホームで1点ビハインドにもかかわらず、チームとして攻勢を強めようとしないイレブンの姿勢だった。

リスクを冒してでもチャレンジする。ボールを失ったらすぐに取り返すため体を張る。球際の競り合いで負けない。上下動を繰り返して攻守にアグレッシブにプレーする――といった必死さが、柏戦のFC東京の選手には欠けていた。キャプテンの東慶吾は声を出してチームを鼓舞するタイプではない。ベテランCBの森重真人も同じタイプで、黙々と背中で引っ張るタイプでもある。

現役時代の長谷川監督のように“熱い魂”の持ち主がFC東京には欠けていた。しかし、来週末の18日の横浜FC戦には“ファイター”が戻ってくる。試合後にファン・サポーターに帰還の挨拶をした長友佑都だ。長谷川監督も「コンディション次第」と言いながらも、「左右どちらかのサイドバック」での起用を示唆した。長友の復帰でFC東京に化学反応が起きるのかどうか。まずは18日の横浜FC戦に注目したい。

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。