【六川亨の視点】2021年9月11日 J2リーグ第29節 東京ヴェルディvs松本山雅FC
J2リーグ第29節 東京ヴェルディ2(1-0)0松本山雅FC
18:03キックオフ 味の素スタジアム 入場者数3,505人
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試合後、右CKからダメ押しの2点目をヘッドで決めたCBンドカ・ボニフェイスは「山雅に連勝を止められた。ここは絶対に勝ちたいと思っていた」と久々の勝利に笑顔を見せた。
彼の言葉には解説が必要だろう。東京Vは5月29日の第16節から5連勝を飾り、第1節終了時をのぞいて今シーズン最高の7位まで浮上した。しかし7月3日の第21節・松本戦に1-2で敗れると、その後は東京五輪・パラリンピックのため味スタを使えず、アウェー8連戦は2分け6敗で11位に転落した。そして8月28日の第27節で京都に1-3で敗れると、9月1日には低迷の責任を取って永井秀樹監督が辞任した(同監督のパワハラ疑惑に関してはクラブが調査中)。
ヘッドコーチから監督に昇格した堀孝史氏も初陣となった第28節の大宮戦では1-2と敗れ、連敗を阻止することはできなかった。こうした背景から、6月26日以来となるホーム・ゲームで9試合ぶりの勝利をサポーターに捧げることができたため、冒頭の言葉につながったのだった。
この試合のハイライトは前半30分の先制点である。右サイドでクリアを拾った石浦が外に開いていた山下にパス。山下はドリブルで仕掛けつつ右ゴールライン際に走り込んだ端戸に短くつなぐと、端戸は右ペナルティエリア内にいた石浦に戻した。すると石浦は1呼吸おいてからペナルティエリア外中央にいた佐藤優にバックパス。佐藤優は詰めてきた敵をシュートフェイントで外すと左サイドへ展開。これをペナルティエリア左外にいた右SB福村がワンタッチのヒールで中に入れると、梶川もゴールを背にして右足アウトサイドのワンタッチで前方へ。すると最後はフリーの小池が落ち着いてゴール右スミに流し込んだ。
ペナルティエリア内で2度連続してワンタッチのパスを使われては松本DF陣も為す術がなくて当然だろう。今月のベストゴールはもちろん、今シーズンのベストゴールにも推したい鮮やかな展開からの先制点だった。
六川亨(ろくかわ・とおる)
東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。