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【六川亨の視点】2021年6月9日 天皇杯2回戦 FC東京vs順天堂大学

天皇杯 2回戦 FC東京1(1-0,0-1,延長 0-1,0-0)2順天堂大学
18:00キックオフ 味の素フィールド西が丘 入場者数1,682人
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FC東京の“負の連鎖”が止まらない。ルヴァンカップ・プレーオフステージの第1戦で湘南に0-1で敗れたのに続き、9日は天皇杯2回戦で唯一勝ち残っていた大学勢の順天堂大学に延長戦で1-2と敗れた。

長谷川監督にとって順天堂大の堀池監督は清水東高校時代のチームメイト。“清水の三羽がらす”と呼ばれ、高校選手権優勝など輝かしい成績を残してきたし、「いまも連絡を取っていますよ」という間柄だ。

それでも試合になれば「大学勢はJ2レベルの実力がある」と警戒しつつ、「90分間かなわないというサッカーをしないといけない」とJ1勢のプライドを覗かせた。その言葉通り開始9分の永井のゴールで先制したが、その後が続かなかった。後半はディエゴ・オリベイラやアダイウトンを投入して追加点を狙ったものの、ドリブル突破による強引な攻撃はなかなか実を結ばない。

そして後半43分、それまで耐えていた順天堂大が1チャンスをモノにして同点に追いついた。延長戦に突入した試合は、延長前半のアディショナルタイムにFC東京U-18むさし出身の小林里駆がドリブル突破からPKを獲得。これを小林里駆自身が決めて3回戦進出を決めた。

勝負事だけに、勝つときもあれば負けるときもある。しかし、例えば王者の川崎Fは同日に行われたJ3の長野に先制を許しながら、後半アディショナルタイムの得点で同点に追いつき、PK戦で辛くも長野を下した。同じく横浜FMもJFLのHondaに先制されながら同点に追いつきPK戦に持ち込む粘りを見せた(結果は3-5で敗退)。

両チームとも、PK戦に持ち込む粘りでプライドは見せた。しかしFC東京はアダイウトンや蓮川、バングーナガンデ佳史扶らが反則すれすれの激しいプレーを見せても、PK戦に持ち込むことはできなかった。

一度歯車が狂ってしまうと、そう簡単には修正できない。そんな悪循環に陥っているのが現在のFC東京と言える。昨年の天皇杯は新型コロナの影響で出場できなかったが、1昨年は初戦となる2回戦こそ桐蔭横浜大に1-0で勝ったものの、3回戦で甲府に0-1と敗れた。

18年の第98回大会はベスト16で山形にPK戦で敗れ、第97回大会は2回戦で長野にPK戦で敗れている。ジャイキリがカップ戦の醍醐味とはいえ、格下相手に勝利を献上しすぎと指摘されてもやむを得ないだろう。その原因がどこにあるのか、改めて考えてみたい。

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。