【六川亨の視点】2021年3月21日 J1リーグ第6節 FC東京vsベガルタ仙台
J1リーグ第6節 FC東京2(2-1)1ベガルタ仙台
13:03キックオフ 味の素スタジアム 入場者数4,402人
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田川亨介に覚醒の予感が漂っている。
鳥栖にいた頃から将来を嘱望されるストライカーだった。強靱なフィジカルと圧倒的なスピード、そしてレフティーであるということ。2017年には韓国で開催されたFIFA U-20ワールドカップに久保建英らと飛び級で選出された。
しかJ1デビューとなった鳥栖時代の17年こそ4ゴールをマークしたが、18年は2ゴール、2019年にFC東京に移籍しても、ケガに悩まされて同年は1ゴール、20年も2ゴールと、周囲の期待になかなか応えられずにいた。
それが今シーズンは、3月3日のルヴァンカップ第1節の徳島戦(1-0)で今季初ゴールを決めると、リーグ戦では3月6日のC大阪戦(3-2)、17日の湘南戦(3-2)、21日の仙台戦(2-1)と早くも3ゴール。これはディエゴオリベイラと並ぶチーム最多得点である。
そして特筆すべきは、田川のゴールはいずれも相手に先制を許す苦しい展開で、1-1のタイスコアに戻す貴重な同点ゴールという点だ。
仙台戦では前半24分に右CKから失点したが、2分後に森重真人とのパス交換から鮮やかなミドルシュートを右ポストぎりぎりに突き刺した。田川自身、ドリブルを始めた瞬間から「あそこは自分で行こうと決めていました。自分で運んで行って(左足を)振り切ろうと考えて、あとはフカさないようインパクトの瞬間に力を入れました」と冷静に振り返る。
長谷川健太監督も「取られた直後のゴールだったので、チームに活力を与えるゴール。非常にいい時間帯の同点ゴールだった」と田川を称えた。
田川は22日から始まるUー24日本代表のキャンプに参加する。昨年末のトレーニングキャンプには呼ばれていないため、昨年1月にタイで開催されたAFC U-23選手権以来、約1年ぶりの招集である。それも今シーズンの活躍を見れば当然だろう。
田川は「素直に“うれしい”もありますけど、本番も近いので責任感もあります。FWなので色々と考えすぎず、点を取ることにこだわりたいです」とアルゼンチン戦、さらには東京五輪への思いを語った。
覚醒しつつあるストライカーはFC東京の救世主として、さらにはUー24日本代表では久保や堂安律、三苫薫らとの連係プレーからゴールを期待せずにはいられない。
六川亨(ろくかわ・とおる)
東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。