3月シリーズ第二幕。ウズベキスタン戦、ちょっとだけマニアな3つの観戦ポイント
▼次なる相手は中央アジアの雄
ハリルホジッチ監督が率いる日本代表の”初陣”となったチュニジア戦ではアジアカップに参戦しなかったメンバー7人を先発させ、目指す方向性を示しながら終盤に経験豊富な”役者”を投入し、2-0の勝利に結び付けた。
アジアのライバルでもあるウズベキスタン戦ではスタメンをほぼ総入れ替えすることも予想されるが、日本と同じく4日前に韓国と戦って1-1で引き分けているウズベキスタンのコンディションがチュニジアより良好なのは間違いない。東アジアの環境にも慣れているため、親善試合とはいえ90分を通してのインテンシティーはさらに高くなるはずだ。
その中で注目するべきポイントはどこなのか。「攻守のハードワーク」「最終ラインの裏を狙った攻撃」「アンダーツータッチを中心としたパスワーク」「球際の厳しさ」といった基本的なキーワードはかなり浸透してきているので、そうした部分は引き続き気にしていただきながら、3つの新たな視点を提示したい。
観戦ポイント1
バックパスの距離
バックパスと言うとマイナスイメージを持たれがちだが、合宿の練習メニューでもあったように、縦のクサビやスペースを狙う布石となるバックパスはハリルホジッチ監督の攻撃スタイルの中で活用されるべきものだ。
チュニジア戦でもバックパスは数多く見られたが、問題だったのはその距離とスピード。バックパスには相手の守備を避けるほかに受け手が前を向いてボールを持てる、守備者の目線を揺さぶるメリットがあるのだが、バックパスの距離が長く、ボールが遅いとその効果はほとんどなくなってしまう。
実際にボール保持者が出したバックパスの距離が長く、直後の攻撃が停滞した場面などでは、ハリルホジッチ監督が前に乗り出して声を張り上げている様子だった。相手のプレッシャーに対して”逃げ”のバックパスが必要になることもあるが、基本的に効果的な縦パスを狙うための布石として有効活用できているか是非チェックしてみてほしい。
観戦ポイント2
相手のサイド攻撃に対するスライド
チュニジアはドリブルの得意なサイドアタッカーを左右に揃えていたが、両サイドバックの酒井宏樹と藤春廣輝が高い位置を取りながら、同サイドを攻め込まれた局面ではしっかり付いて侵攻を止めることができていた。しかし、ほとんど個で勝負してくる分だけ、ある意味でやりやすさもあったはずだ。
ウズベキスタンはこの日のチュニジアよりSBの攻め上がりが多く、さらにボランチもサイドに流れ、厚みのあるサイドアタックを仕掛けてくるチームだ。またボランチの展開力自体もあり、サイドチェンジから縦のスペースを突く攻撃もチュニジアより多用してくる。
そうした攻撃にハリルホジッチ監督がどういった指示を授け、選手が対応していくのか。高い位置にコンパクトなブロックを作り、そこから厳しくコンタクトしてボールを奪うという、基本的な戦術はすでに選手の中でも共有されているが、相手によって応用が求められてくる。
ハリルホジッチ監督は2試合で「中盤の異なるオーガナイズを用意する」ことを宣言しており、システムが[4-2-3-1]から[4-3-3]あるいは[4-1-4-1]に変更されるかもしれない。そうしたポジションから状況に応じた動きまで、少々マニアックではあるが注目してみてほしい。
観戦ポイント3
長谷部と吉田がいない布陣の機能性
チュニジア戦では香川真司、本田圭佑、岡崎慎司が途中出場から2得点に絡む活躍を見せたが、ザック・ジャパンでもアギーレ・ジャパンでも戦術的な軸として、精神的な主柱としてチームを支えていたのがボランチの長谷部誠とCBの吉田麻也だった。
すでにチュニジア戦で先発した二人はウズベキスタン戦でベンチスタートとなる可能性が高い。ハリルホジッチ監督は先週の月曜日からスタートした短い期間の中でも、かなりのことを選手に伝えている。その意味では過去の代表チームより選手の状況判断は整理されやすいかもしれない。
そうした中にあっていったい誰がリーダーシップを取って試合を進めるのか。特にボランチとCBの選手に注目すると、新世代のピッチ上のリーダーになり得る選手が見えてくるのではないだろうか。
河治良幸(かわじ・よしゆき)
サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCFF』で手がけた選手カードは5,000枚を超える。 著書は『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『日本代表ベスト8』(ガイドワークス) など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。サッカーを軸としながら、五輪競技なども精力的にチェック。