ミシャサッカーはVAR泣かせなんです……現場の担当者・扇谷健司がVARの仕組みを徹底解説【サッカー、ときどきごはん】
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ミシャサッカーはVAR泣かせなんです……現場の担当者・扇谷健司がVARの仕組みを徹底解説【サッカー、ときどきごはん】(J論プレミアム)
2020年J1リーグから本格導入されるVARだが
まだ実態が広く知れ渡っているとは言いがたい
実際には世界中で様々な調整が行われ
試行錯誤しながら運用されているブラックボックスのような部屋に入り
活動の実態がなかなか見えにくいVARの実態を
現役審判生活を追えた後にVAR導入現場の担当者となった
扇谷健司氏にお勧めの店とともに聞いた
▼誤審の後、相手チームの社長にかけられた言葉
現役時代の自分の誤審はもちろん覚えてますよ。僕はハンドでした。シュートが飛んだ先のゴールライン上に選手がいて、僕には手に当たったように見えたんです。
ゴールライン上のハンドだから、得点機会の阻止で退場、PKですよね。試合中は選手は何も言わなかったんですよ。でも終わって控え室に行ったら、レフェリーアセッサーが上川徹さんで「お前、間違ってるぞ」って言われて。当たってなかったんです。
あれは僕の中でも一番の……うーん……まぁ……大きなミスだったかなという気がしますね。あのときVARがあれば選手もレフェリーもチームも救われていました。当たった瞬間に、攻撃側の選手が「ハンド!」って言ったんですよ。それに引っ張られたというのも正直あったと思うし。
今その時点に戻れたら戻りたいです。他にもいろいろありましたけど、やっぱりそこは選手が退場になって結果そのチームが負けちゃったし、選手は次の試合にも出られなくて。
それだけは今でも必ず思い出します。一番の誤審ですから。心に残るトゲです。レフェリーはみんなそういうトゲが心に刺さっていると思います。もう何年も経っていますけど、忘れられないです。我々も人間なので。
そのあとも、そのチームの試合で笛を吹かなきゃいけないし、退場にした選手とも試合をしなければいけないじゃないですか。もちろん次に会ったときは話をしたし……うーん……でもJリーグって、ある程度、選手も入れ替わりがそんなに多くないので、長い付き合いになるんで。
やっぱりミスってお互いに……こう……なんだろう……。選手も若いころにレフェリーに対してすごい態度で来たりしているのが大人になってくると変わったりとか、そういうのが正直あったし……。まぁ、その中でも、そこでずっと立ち止まれなくて進んでいかなければいけない……と思いましたけど。
しかもそのミスの3日後にまた別の試合で笛吹かなければいけなかったです。正直、やりたくなかったですけどね。てっきり休むもんだと思ってたんです。大誤審だから。今だったら休むかな……休まないかな。
当時の委員長から電話がかかってきたんですよ。僕は「休め」って言われるもんだと思ってました。そうしたら「お前、間違っちゃったな。そのチームの社長が、お前のことを心配してたぞ」って言ってくれて。
被害者のチームの社長から、そういうふうに言っていただけたというのは……やっぱりありがたかったかな……すごく。だからやりたくなかったけど、そこで行かないと、やっぱり前に進めない……ですよね。
もしかしたら、そういうのをVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)が……本当に大きなミスを救うというのが……VARの大きな役割だと思いますね。
PKかどうか、ハンドだったかどうかというのを、いつまでも議論するのもサッカーの一面かもしれないですよ。けれど、大きなミスっていうのは正したほうがいい。チームもサポーターも納得するし、そしてレフェリーも救われると思います。
▼VARが試合中に行うことはとても多い
VARって、どう作業が行われているかを説明しましょう。VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)とAVAR(アシスタント・ビデオ・アシスタントレフェリー)、リプレイオペレーター(英字表記ではROだがオペレーターと呼ばれることが多い)の3人はVOR(ビデオ・オペレーティング・ルーム)という部屋や車の中に座ります。
それぞれの人の前には2台のモニターがあります。VARの前のモニターは、上にライブの映像が流れていて、下のモニターは4分轄され、4つのアングルの映像が3秒遅れで流されます。
AVARの前は、上が中継映像で下は全体像になっています。オペレーターの上も中継映像で、下は12分轄されそれぞれ別アングルの映像が流れています。実は、中継の方のカメラ技術は非常にレベルが高くて、たまにすごく早いタイミングでいいのが流れるんです。それはすごく大切なんですよ。
VARの前にはボタンが2つあって、1つは映像に「タグ」と呼ばれるマークを打つボタンです。またAVARとオペレーターの前にもタグを打つボタンがあります。
もう1つのボタンは、レフェリーに話しかけるためのスイッチになっています。レフェリーにずっとVARたちの声が聞こえていると、たぶんイライラすると思うんですよ。ですからボタンを押さない限り、VARの声はピッチ上には届かないようになっています。
VARはまずAPP(アタッキング・ポジション・フェイズ)を見極めてボタンを押しタグを打ちます。このAPPの基本的な考えは「攻撃のスイッチが入る瞬間」ですね。このAPPというのは、何か事象が起きたときにどこまで遡って検証するかという場面で、VARはその決めの作業をします。
それで相手チームにボールが渡ると、VARは「リセット」と言って、またボタンを押してタグを打ちます。また、何か起きた可能性があるところでもボタンを押してタグを打ちます。
VARは1試合を通じてずっとその作業をします。VARはずっとモニターを見ながら「APPスタート」「リセット」と言ってボタンを押しているんですよ。またVARがタグを逃したときには、AVARやオペレーターもタグを打っていいことになっています。
実は今、いろいろな国で「リセット」というタグはあまり打たないんですよ。どっちでもいいんです。ただ何か見逃すといけないから、タグは打たないより打ったほうがいいという考えがあります。
そこはFIFAの大会だったり、国によってもやり方がいろいろあるようで、FIFAはAPPも打ってないと聞いてるんですけどね。オペレータの人が決めているのかもしれません。
ですが日本ではこれからVARの運用が本格スタートするので、まずはベーシックな形にしようとしています。IFAB(国際サッカー評議会)のデビッド・エラリーさんという方が年に3、4回来て講習会をやってくれているのですが、その人の教えに乗っ取って、まず基本的な形でやります。ですからAPPも、リセットも、ちゃんと口で言ってボタンを押してタグを打つようにしています。
そして4つの場面で何かが起きたとき、VARが検証します。
・「得点か、得点でないか」
・「PKか、PKでないか」
・「退場か、退場ではないか(2枚目の警告を除く)」
・「人まちがい(警告や退場すべき選手が違っていないか)」
で、なおかつ「明白な間違い」があるときはVARの出番です。また、「レフェリーが見逃した重大な事象」があるときもVARが介入します。
何かあったら、VARがオペレーターに「APPまで戻って」ということが多いですね。ただ、攻守が入れ替わるときにファウルがあった場合は、「その1つ前のファウルっぽいのまで戻りましょう」という声をかけます。
たとえばもし得点の場面で攻撃側の反則があったようなら、VARが「ポシブル・ファウル」と宣言し、すぐ3秒遅れの映像を見て、何が起きていたか判断します。そして必要があればレフェリーと交信し、VARが見た内容を伝えます。内容に応じては、OFR(オン・フィールド・レビュー)を勧めることもあります。
▼ミシャサッカーがVAR泣かせな理由
実はそれぞれの段階で、これまでレフェリングとは違った難しさがあります。まず、モニターに映す映像です。Jリーグの場合は基本的に12台のカメラが入るので、VARはそのうちの4つを選んで目の前のモニターに映してもらいます。
つまりVARはどこにカメラがあってどういう映像を撮っているかわかっていなければいけないのです。たとえば「右上に全体の映像と同じようなアングルをください」「ゴール裏からの映像をください」「ペナルティエリアを横から映しているオフサイドカメラをください」「もう一つは真ん中からの映像でもう少しタイトに選手に寄った映像をください」などと指示を出します。
そしてリアルタイムの映像を見ながら、何か起きたらすぐに視線を移して目の前のモニターで3秒遅れの映像を見るのです。ですからVARはどんなアングルのカメラがあり、そのカメラがどこに設置されているかわかっていないとダメなんです。またオペレーターは目の前の12アングルの映像から、よりいいものをすぐに選んでVARに提供しなければなりません。
VARが4つの映像の選び方を毎回変えていると、「あれ? どれを見ればいい?」ということになりかねません。そう言ってる間に3秒経ってしまい、オペレーターに戻してもらうことになってしまいます。それは時間の無駄ですよね。
ところがスタジアムによって微妙にカメラを置く位置が変わってしまいます。基本的にはだいたい一緒なのですが、たまに全然違うカメラがあったりします。スタジアムの構造によっては他と同じような場所にカメラが置けないこともありますし。
2019年ルヴァンカップでは準決勝からゴールラインカメラを導入させていただいたのですが、それもスタジアムによって置き方が全然違ったみたいですね。VARとしてはゴールラインを全部映してほしいのですが、ゴールポストの枠ぐらいしか押さえてなかったり、位置が低かったりということがあったようです。
もちろんそれは最初にVARが「このカメラはここを全部写して下さい」と要求するのが大切でしょう。またVARが、この事象を一番早く、いい角度で見ることができるのはどのカメラかというのを知らなければいけないのです。
ですからVAR、AVARとオペレーターは、それぞれの会場でカメラがどこにあるか覚えてほしいと言われています。これは今までのレフェリーには求められなかったことですね。逆にVARから「ここを映すカメラがあったほうがいいんじゃないか」と提案することもあります。
ちょっと話は逸れますが、私が気になっているのは、試合後、どうしても中継のカメラって選手に寄って映像を撮ることですね。すると全体を映しているカメラがなくなって、いろいろな場所で何が起こっているかわからなくなるんです。
極端な話、試合後に乱闘があったり監督が飛び込んできたらわからなくなっています。そんな場面が起きないことを願うばかりですね。
次に、APPのタグを打つタイミングが日本は難しいんです。APPとはターンオーバーした時ではなくて、「得点につながる攻撃が始まった時」なのですが、これを見極めるのが大変なんですよ。
たとえばレッズやガンバみたいなチームは、アタッキングサードのところでパスを回したりするので、攻撃の最終段階がスタートしそうで、なかなかしないんですよ。縦に入れてゴールに向かって行くと思いきや、そこからまた後ろに下げてやり直しとか。
僕もVARをやってみて、「ミハイロ・ペドロビッチ監督のサッカーって難しいな」と思いました。クサビをチョンチョン入れながら縦に行くと思わせて逆サイドに展開するとか、そういう攻撃パターンが多いので、APPのスタートを計るのが難しいんです。
ペナルティエリア付近でボールを回したと思ってAPPをスタートするのですが、そこからシュートまでがすごく長くなってしまうんです。極端な話、APPがスタートしたのに1分後にゴールが生まれたということになると、本当にAPPが攻撃の起点なのかという話なんですよ。1分前のこと誰も覚えてないぞって。だからすごく難しいですね。
もっともFC東京や湘南のようにわかりやすいチームもあります。また海外でもバルセロナやマンチェスター・シティなどはわかりにくいです。そういったことでも、サッカーのスタイルはいろいろあるんだと感じられますね。
▼決定機のオフサイドに関して副審は旗をすぐに上げてはいけない
何かファウルのようなことがあったっぽいけれどもレフェリーが笛を吹いていない。そんなときVARは「ポシブル・ファウル」と言ってタグを付けます。またオフサイドがあったかもしれないときには「ポシブル・オフサイド」と言ってタグを付けます。
その後、ゴールが生まれたり、退場者が出たときにはオペレーターが該当するプレーをモニターに映し出して、VARが確認します。たとえばPKになったとき、まずはPK自体の判定が正確だったかチェックしますけが、そこから先は実はいろいろな確認する順番があります。
APPとPKになるまでの間に何もないこともあります。ですが、ポシブル・オフサイドがあり、その後にPKがあったら、まずオフサイドかどうかを見て、オフサイドだったらそれであとのプレーは全て関係なくなるから終わりです。
ところがオフサイドっぽいのが2回あって、攻撃のファウルっぽいのも1回あり、守備側のファウルっぽいのが1回あってそれでPKということも十分考えられるんです。
その順番というのが、オフサイドの場合とファウルの場合とではちょっと違ったりするんですよね。そこは非常にややこしくて、事象が3つ、4つあると、すごい大変です。
まずPKを見て、次に2つのオフサイドを見ます。ディフェンスの反則はPKが成立すれば関係ないじゃないのですが、危険度を見る場合もあります。もしレッドカードに相当するファウルなら、そこも最終的には見に行きます。
だからPKの事象を見て、次にオフサイドが2つあるとその2つとも見て、危険なタックルだったらそれも見る。そういうのを判断しなければなりません。
オフサイドを判定するオフサイドカメラにはオフサイドラインが引けます。線があるからほんの数センチ出てもわかるんですよね。さらに3Dでも表示できるようになってきたので余計にわかります。普通にラインを引くだけなのと3Dとでは、どこが最終ラインかまるで違うことがあるんですよ。
普通ラインを引くと、どうしても足にラインを合わせたがるんです。けれど守備側の選手の足よりも体がゴールラインに近くて、体のほうがオフサイドラインになっている場合が結構あるんですよね。
3Dだとそれがハッキリわかるんです。そうすると本当に「眉毛が出てた」みたいなレベルですごく正確にわかります。それはもう人間の目ではわからない。副審は辛いと思います。
また、副審は決定機が生まれそうなときに、自分がオフサイドだと思っても旗を上げず、一連のプレーが終わってから、オフサイドだと思っていたのなら旗を上げなければなりません。その最後に旗を上げるとき、自分がオフサイドと思っていたかどうかわからなくなるという声もありました。
そこでいろいろな審判の人たちに相談し、副審がオフサイドだと思ったときには旗を上げずに「オフサイド・ディレイ」と言葉を発することにしました。これはどういう表現を使うか国によって違います。日本では相樂亨さんが「やっぱりオフサイドって言葉を言ったほうがいい」と。それで日本独自で「オフサイド・ディレイ」というのをみんなで使うようになりました。
最初は「ディレイ、ディレイ」とみんな言っていたのですが、そうすると何のファウルだったか忘れる可能性がある。「ディレイ、ディレイ」と言いながら走って、最後結論を出すとき、「あれ、どっちだっけ?」ということになるかもしれない。
それを防ぐために自分で「オフサイド」という言葉を言って忘れないようにしています。それに周りが副審をサポートできるようになるんですよ。「『オフサイド・ディレイ』と言ってたよね」って。
さらに言えば、レフェリー同士が交信するときの問題も解決しなければなりませんでした。実は6人で交信するというのは大変で、誰が話してるかわからなくなるんです。だから今は「VARからレフェリーへ」と言ってから話すようにしたんですよ。
▼VARはまだまだ発展途上
率直に言うと、VARというのはどういうものか、まだ世界でも明確になっていないと思います。イングランドのプレミアリーグでもまだ議論がされているようです。そういった意味では、新しいものを作っているという感覚があります。
クラブワールドカップに行ったレフェリーの話を聞いたり、アジアサッカー連盟のセミナーに参加している日本の5人のレフェリーの情報を共有しながら、日本としてどうするかという方向性を今、決めようとしてます。
現役のレフェリーにいつも求めているのは、VARはVORの中だけでやってるものじゃないと認識することです。VARの先には、ピッチ上にプレーヤーがいてお客さんがいてテレビを見てる人がいる。たとえばコパアメリカでVARが入って6分、7分プレーが止まっていました。
本当にそれでいいのかというのは問われます。もちろん正確性が第一ですけど、やっぱり判断の速さというのはほしいですよね。
判断の早さというのは本当に大変なんです。僕もそれはわかってますが、VARには求めています。たとえばゴールが入って、お客さんや選手は何もないと思って喜んでいる。でも実はオフサイドっぽいものがあったとします。
ピッチ上はみんな早くプレー再開したいんだけど、そこで2分も3分も検証に費やされたら、サッカーというスポーツがつまらなくなる可能性があるんです。もちろん正しい判定が一番大切です。ですがそれに加えて決断もちゃんと早くしてほしい。
VORの中の席に座ると、なかなかそうはいかないのはわかっています。それでも進歩しなければいけない。VARだけではなくてAVARもオペレーターもです。
インプレー中に危険なタックルやエルボーがあってレフェリーが笛を吹かなかったとき、VARはその瞬間に該当する場面の映像を見なければいけないんですよ。ですがプレーは続いている。そうするとVARの横にいるAVARがAPPやリセットなどの作業を引き継ぐんです。
AVARは副審担当の人が入ることが多いんですね。そうすると「ポシブル・オフサイド」はAVARが見ることがあったりします。基本的には全てのプレーをVARがチェックしますが、VARとAVARの組み合わせによって、役割を2人で決めてもらっています。自分たちのやりたいスタイルというのがありますから。
また、オペレーターも重要です。FIFAの大会に行くオペレーターはすごいと聞きます。自分でレフェリーに「こういう映像を見てくれ」みたいな提案もするらしいですよ。
だからすごくチームワークが大事なんです。VARが何か対応しなければならないときにカバーできなかったら混乱しますからね。
VARが「チェック入ります」と言ったら、AVARが自動的に「自分がチェックしなければいけない」と考えなければいけない。3人の連携が大事なんです。もちろんピッチ上のレフェリーも大事ですけど、VORの中も大事なんですよね。
そして難しいのは、どこまで介入するかというところなんです。そこは、現役のレフェリーともすり合わせをしながら今ずっと調整しています。
それに選手がビデオを見てくれとレフェリーに要求するという事象が出てきています。選手たちはそういう行為を何回もやると警告になります。一応、「過度に」って書いてありますから、1回ぐらいはやる選手もいるでしょう。
ですがやはりあくまでもピッチ上の判定が最優先にされるべきです。VARというのは明らかなミスを正すもので、すべてを正しい判定にするものではないんです。
2019年でいうと、ゴールに入ったものがゴールにならなかったとか、オフサイドで点を入れたものが見えてなかったということがありました。VARはそういう明らかなミスを正すもので、グレーなものをどちらかに決めるという役割ではありません。
選手もまだVARに慣れてなくて、VARがあってもレフェリーに詰め寄ったりすることがありました。でもレフェリーってそのときにはVARともう交信しているはずです。「もうチェックしてるから待ってて」で、話が終わるはずなんです。
ところがそこで激しく抗議してカードをもらうのは、とてももったいない行為だと思います。たぶんVARを入れた試合を重ねていくとみんな慣れていくだろうとは思っていますが。
2019年のルヴァンカップでもいろんなことがありました。ですが、最後はいい方向性で終わったと思います。もちろんテクニック的ことはまだまだ改善していかなければいけないし、2020年に関しては、より高いものを求めたいと思っています。そうした中で、よりチームとか選手が納得できるものが1つでも増えればいいと思っています。
VARは集中力が必要で、今はそれが悩みどころにつながっています。2020年シーズンでは、VARは1日1試合を担当すると思いますけが、この先、どういう形になっていくかまだわかりません。
たとえば13時キックオフの試合と19時キックオフの試合があるとします。今後1カ所にVARを集めるセントラル方式にすれば、同じVARで2試合やれないことはないですね。でもキツい。
まず一瞬たりとも画面から目が離せないんです。そういう緊張感が大変です。私もVARの資格を持ってるのですが、それで思ったのは、1試合通じてずっとモニターを見ているのは、ピッチ上のレフェリーとはまるで違う汗が出るということなんです。体が嫌な感じなんです。
レフェリーって外に出て走って汗かきますね。もちろんミスしたら大変ですけど、自分でいろんなことが出来ます。ところがVARは、ずっとVORの中で作業をするんですね。薄暗い中で2時間ずっとモニターを見つめている。しかも4つのことにしか介入できないですよね。ずっと高速を運転している感じです。ナイトゲームを担当すると、たぶん寝られないと思います。目が冴えちゃうんですよ。
だからVARを担当した翌日のレフェリーは止めようということにしています。でもレフェリーやった次の日のVARは、やっぱり人が足りないんでやらなければいけない感じですね。
現在、研修を終えてVARの資格を取ったのは、第1グループの18人だけです。現在は第2グループの42人が受講しているのですが、まだ卒業生は出ていません。
ただ、実際のレフェリーは引退した方も、VARは資格を取れば出来ます。実際に2019年はルヴァンカップで担当してもらうこともありました。そうやって人材を確保していかないと足りないという面も残っています。
▼「なんなんですか?」
なんなんですか、ご飯の話するって。あ、相樂さんもやったヤツですね(「忘れられない痛恨の誤審……W杯を経験した副審・相樂亨が試合後に意を決してとった行動とは(みんなのごはん)」)。あいつ、僕と一緒に行った店を出してましたよね。ステーキ屋さん。なんだ、載っけちゃったのかって。
お勧めの店? すごい悩んだんですけど、私は魚が好きなので、地元茅ヶ崎で辻堂と茅ヶ崎の間ぐらいにある「磯人」という店にします。奥さんと時々行くんですよ。そこはお魚料理があって、煮付けとか、お刺身とか、もちろんあるんですけど。
私の流行は煮付けか、あと基本的においしいのはあじフライ。佐藤隆治を連れていって、そこのアジフライはうまいと言ってくれました。すごく新鮮で、もともと茅ヶ崎ってアジがよく取れるんですけど、ここのフライは固くないんです。柔らかい。そこはアジ三昧定食という、アジの定食もおいしいです。ご飯が進みますね。
結構好きな店なんで誰か来たら連れて行くような、喜ばれるような店だと思います。人気もあって。
ただ昼間しかやってないんです。11時から14時過ぎまでしかやってない。夜やってないんです。昔はやってたんですけど。3、4時間しかやってないので、気を付けて行ってみてくださいね。セットが2000円ぐらいです。え? ご飯の話、これでいいんですか? ホントに?
→「磯人」
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なぜ松原良香は「勉強しなければ」と思い立ち、そこで何を学んだのか
扇谷健司(おおぎや・けんじ)
1971年神奈川県生まれ。1998年1級審判員、2007年からはスペシャルレフェリー(現プロフェッショナルレフェリー)として活躍し、2007年から2010年までは国際審判員も務めた。2017年に現役を引退すると、現在は日本サッカー協会審判委員会トップレフェリーグループマネジャー。VAR導入の現場担当者として最もよく実務を知り、VAR導入の準備、研修会、審判員のやりくりなどをJリーグと調整している。
有料WEBマガジン「森マガ」では、後日、栗原選手インタビューに関する「インタビューこぼれ話」を公開予定です。
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森雅史(もり・まさふみ)
佐賀県有田町生まれ、久留米大学附設高校、上智大学出身。多くのサッカー誌編集に関わり、2009年本格的に独立。日本代表の取材で海外に毎年飛んでおり、2011年にはフリーランスのジャーナリストとしては1人だけ朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の日本戦取材を許された。Jリーグ公認の登録フリーランス記者、日本蹴球合同会社代表。2019年11月より有料WEBマガジン「森マガ」をスタート