J論 by タグマ!

退場理由が変わる。YS横浜、シュタルフ監督が戦い続けた一週間

3A7A7598.jpg

2019年9月29日、Y.S.C.C.横浜・シュタルフ悠紀リヒャルト監督はJ3第24節・ブラウブリッツ秋田戦の前半終了直後にレッドカードで退場をした。そこからYS横浜とシュタルフ監督の戦いが始まる。そして数日後、退場の理由が変わっていた。

▼退場理由が変わる

2019年9月29日のJ3第24節、前半を終え選手たちがピッチから離れようとした時、突如レッドカードが提示。それは、Y.S.C.C.横浜・シュタルフ悠紀リヒャルト監督に向けてのものだった。原因とされる『侮辱』はどこにあったのか。クラブはすぐさま映像での確認を求める。だが、裁定は変わらず。シュタルフ監督は後半、ベンチ前に立つことはできなかった。

状況を知らなくても批判は起きる。退場という言葉にはそれだけの力があり、そこへ侮辱というさらに強い言葉まで加わった。また過去のことまで掘り下げられた。監督にもカードが出される新ルールの施行以前に、2試合のベンチ入り停止処分を受けている。第18節の八戸戦、後半のアディショナルタイムが5分と掲示されたが7分に差し掛かろうとした時に失点し勝利を逃す。チーム最年長の安彦考真は、審判に詰め寄るシュタルフ監督を抱きかかえ抑えていた。あの時「反省をしています」と心に誓ったシュタルフ監督に追い打ちをかけた。

それから数日後の10月2日、リーグは改めて審議をした上での解答を出す。『侮辱』という文字は消え新たに『テクニカルエリアを出て審判員に異議』という一文が加わり、1試合のベンチ入り停止処分が下った。言動や態度ではなく、場所が問題であると変わっていた。そして迎えた10月5日、ホーム・三ツ沢でのJ3第25節・福島ユナイテッドFC戦、ベンチにはシュタルフ監督の姿はなかった。

▼侮辱と異議は意味が異なる

シュタルフ監督は侮辱はしていない。そのことが証明された。

『異議』は侮辱とは異なる意味を持つ。相手とは異なる意見を述べ合うことで、お互いに理解を深めることができる。コミュニケーションのひとつとして異議がある。シュタルフ監督はコミュニケーションを積極的に取る人だ。YS横浜の練習場には、監督が細かなディテールを詰めようと選手に話しかけ選手たちが監督に話しかけている光景は日常的にある。自分の意見をしっかりと述べ、相手の意見をしっかりと聞く姿がいつもある。それは審判に対しても同じ。だから審判とも会話をしている。シュタルフ監督は以前「お互いに意見を出し合い、お互いに向上を」と審判への想いを話したことがある。シュタルフ監督は試合全体のクオリティーを上げるために『異議』をしている。そして選手たちをケガから守るためにも自分の意見を発している。だが、審判と監督の間に誤解が生じてしまった。

異議はカードの対象になる。だから審判と会話をしない方が賢いのかもしれない。でもお互いに離れて警戒をし、まるで無視をするような関係でいいのだろうか。それを見た子どもたちは何を思うのだろうか。監督だけではなく審判にも批判が及んだ事件の後、本牧の練習場でいつもと変わらず選手たちと戦うシュタルフ監督を見ながらそう感じていた。