J論 by タグマ!

「序盤戦の分水嶺。どうなる!? 東京クラシック」海江田哲朗×郡司聡対談/後編【番記者の1週間/オレたちのライター道】

東京五輪世代対決に注目

タグマ! ライター陣の”半生”をインタビュー形式で掲載してきた『オレたちのライター道』にスピンオフ企画が登場。個人メディア発展のための、一つの方法論である”自己プロデュース”に各ライター陣はどう向き合っているのか。「番記者の1週間」をテーマに対談形式でお届けする第一弾。今回は『スタンド・バイ・グリーン』の海江田哲朗氏と『町田日和』の郡司聡氏が対談した。その後編は5月3日に開催を控えている東京ヴェルディとFC町田ゼルビアによる『東京クラシック』を展望する。
(前編「”マイクラブ”に捧げる1週間の全貌とは?」海江田哲朗×郡司聡対談)

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▼2年目と5年目。互いの伸びシロは?


郡司 後編は東京ヴェルディとFC町田ゼルビアによる『東京クラシック』の前煽りを含めた対談です。まずはお互いのチーム状況で気になることをクロストークしましょうか。

海江田 意地悪な質問かもしれないけど、相馬監督5年目の長期政権で上がり目はあるのかな?

郡司 今季は第二次相馬体制5年目でクラブは初めて「6位以内」という明確な順位目標を設定してスタートしましたが、そのタイミングが絶妙だったかなという印象です。J2の焦点の一つは、J1参入プレーオフ争い。6位以内というアドバルーンを掲げて戦うチームが、数値目標に引っ張られることで、それが強い意思につながり、チーム内に大きなエネルギーを生んでいます。チームコンセプトや戦い方に大きな変化はなく、6位以内を目指すチームの強い意思が、開幕8戦無敗という結果につながっています。ヴェルディはロティーナ監督2年目。Wアンザイ(安西幸輝、安在和樹)や高木兄弟(高木善朗、高木大輔)など、核となる選手が抜けたという印象ですが?

海江田 昨季はドウグラス・ヴィエイラとアラン・ピニェイロの二人で35点を叩き出した中、今年はもっと攻撃に力を入れるぞ! と水戸から復帰した林陵平が昨季は14点、群馬から加入した高井和馬が10点と、単純にいかないまでも、この二人が加わったことで昨季よりは点を取れるなと思ったけど……。前々節の水戸戦は3点を取ったけれども、ここまでスコアレスドローが5試合と、ゴールでこんなに苦労するとは思わなかったね。

林は水戸戦から2試合連続で先発出場をしているけど、高井や佐藤優平ら新戦力をなかなか使わないのは想像していなかった。練習を取材できないので、何とも言えないけど、彼らはまだロティーナさんの起用する基準に到達していないということなんじゃないか。

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▼ロティーナ監督流、選手起用の基準


郡司 選手起用の基準で重要視していることは何ですか?

海江田 戦術理解度かな。昨季までの既存選手は守り方、立ち位置、スペースの消し方など、監督の求めるタスクをこなせている。新戦力を少しは起用しながら慣らせる部分があるのかなと思ったけど、まあ頑固だね。その一方で使うシステムは多彩になっているよ。ちなみに現状の町田は3連敗だよね?

郡司 8戦無敗の時期もどちらに転んでもおかしくはないギリギリの攻防の連続でしたが、3連敗していると言っても、ギリギリの勝負には持ち込めていますし、そこまで悲観する必要はないのかなと思います。ヴェルディも前節の大宮戦で無敗がストップしましたね。

海江田 実は大宮戦は、今季初黒星、アウェイでの初失点、今季初の複数失点と”初物尽くし”だった。シモビッチの個の能力やマテウスのスピードにやられたけど、シモビッチにやられた失点は個人の対応が問題だし、割と負けた原因がハッキリしているから、そんなに心配はしていない。2点目を取られたのも、リスクを冒して点を取りに行った結果なので仕方がない。もちろん、楽観視はできないけど、ズルズルいくことはないんじゃないか。昨季も序盤に5連勝をしたあとに、連敗をした時期があったけど、今季に関してはチームの安定度が増しているからね。ちなみに一昨季の『東京クラシック』は町田のダブル(連勝)で、昨季はヴェルディの連勝だったよね?

郡司 昨季は2-4、1-3と2試合ともチンチンにされました……。

海江田 「アウェイの町田戦は会心の勝利だった」と振り返る選手がいるぐらいだからね。今回の試合もヴェルディのコーチングスタッフがすごく分析してくるはず。

郡司 恐らくヴェルディはサイドチェンジを多用しながら、奥行きも使って、町田のコンパクトな陣形を広げさせて、ウイークポイントやスペースを突いてくると思いますが、町田としては相手の出方への”対症療法”を考えるよりも、いかに相手を押し込んでいくか、という思考で準備をしてくると思います。そういった意味では、左右のサイドチェンジやロングフィードを正確に蹴ることができて、有効なサイドアタックを仕掛けられるキーマンの一人だった安在和樹選手が移籍し、今のヴェルディに攻略法を表現する選手はそろっているのでしょうか?

海江田 前節の大宮戦で藤本寛也が途中出場したんだけど、彼はレフティーで横や斜めに速く精度の高いボールを蹴れる選手。アンカズ的に左利きの選手を逆の右サイドで使うか注目だね。

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▼東京五輪世代対決に注目


郡司 シンノスケ(畠中槙之輔)はどうしていますか?

海江田 このペースで安定したパフォーマンスを披露し続ければ、もはやJ2のCBではなくなるね。ヴェルディが上がらないと。

郡司 何がどう変わったのですか?

海江田 以前はあわてんぼうさんや、テンパっている部分があったけど、いまやヴェルディのディフェンスリーダー。ある意味、キャプテンの井林章よりも、畠中のほうが引っ張って見えるし、先頭に立ってやっている。今年は頭の中が整理されているなと感じるし、状況判断も良い。その上、もともとの体の強さもあるし、フィードも良い。メンタルが頼りなかったけど、今は全然そんなことないよ。

郡司 中島裕希選手が「町田にいた頃から能力が高かったから、ヴェルディのディフェンスリーダーだとしても不思議ではない」と認めていました。その一方で「良さも弱点も分かっているから、ギャフンと言わせたい」とも言っていましたが。

海江田 町田は鈴木孝司が復帰したよね? 彼はシュートがうまいよねー。J2にはなかなかいない、タイミングをズラして打てるシュートが絶妙。ヴェルディも林は2試合連続で決定機を逃しているから、町田戦でその殻を破れるか。最初の1本が出るまで大変だけど、1本決まればブレイクする可能性はある。

郡司 孝司選手は復帰2試合目ですが、復帰後初ゴールを欲していますし、中島選手は第2節の大宮戦以来、ゴールから遠ざかっています。町田は孝司選手と中島選手、ヴェルディは林選手、取るべき選手が取ったチームが勝つ。ビッグゲームですから、そんな典型的な試合になるかもしれませんね。

海江田 フィニッシュワークと言えば、渡辺皓太は球際やボールを奪う力などは抜群なんだけど、シュートに絡む機会は多くても詰めが甘い。鈴木孝司とは違って、素直に一二の三でシュートを打つ感じなので、彼も点が取れるようになると、また変わってくる。

郡司 ヴェルディにはその渡辺選手と井上潮音選手ら東京五輪世代がいますし、町田にも杉森考起選手や平戸太貴選手ら東京五輪世代の仲良しコンビがいます。同世代の激突も、見所の一つになりそうですね。では、彼らのストロングポイントを出し合いましょうか。平戸は高精度のパスとプレースキック。杉森はドリブルとキュートな笑顔(笑)。

海江田 渡辺は体のサイズもないし、あの素朴な風貌だから相手に舐められる部分があるかもしれないけど、ボールのところに腰を入れて奪う力はすごい。見ているこっちは「どうだ、見たか!」となる。

郡司 町田は3連敗中ですが、ヴェルディも前節は敗戦と、お互いに勝って今後の弾みをつけたいゲームでもありますね。ゴールデンウィーク期間中のゲームですし、味の素スタジアムが大いに盛り上がるゲームが見たいですね。海江田さん、お忙しい中、ご協力ありがとうございました。

海江田 こちらこそ、ありがとうございました。

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