J論 by タグマ!

「”マイクラブ”に捧げる1週間の全貌とは?」海江田哲朗×郡司聡対談/前編【番記者の1週間/オレたちのライター道】

で、自己プロデュース。どうしてます?

タグマ! ライター陣の”半生”をインタビュー形式で掲載してきた『オレたちのライター道』にスピンオフ企画が登場。個人メディア発展のための、一つの方法論である”自己プロデュース”に各ライター陣はどう向き合っているのか。「番記者の1週間」をテーマに対談形式でお届けする第一弾。今回は『スタンド・バイ・グリーン』の海江田哲朗氏と『町田日和』の郡司聡氏が対談した。

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▼で、自己プロデュース。どうしてます?

郡司 『町田日和』を始めて4シーズン目に入りましたが、個人メディアを発展させる上で書き手である自分を売り込んでその価値を上げる”自己プロデュース”も必要なのかなと最近思い始めるようになりました。”自分を仕事にする生き方”が流行っている時代でもありますし。でも、自分も含めて、タグマ!ライター陣の方々は、どちらかというと、そういった”自己プロデュース”といった類のものは不得手なのかなという印象です。ちなみに最近個人的には、そうした風潮にならって、自分を商品化するような”自己プロデュース”研究を密かにしているのですが(笑)、自己プロデュースに関して、海江田さんは何か考えていたり、始めていることはありますか?

海江田 FacebookなどSNSを活用することは、この先個人としてやっていかないといけないことは分かっているけど、現実的な距離感が難しいので、自分が相談したいぐらいだよ。これまでのビジネスモデルも5年先はどうなっているのか……。例えば携帯でサッカーの試合を見ることは考えもしなかったけど、今は携帯で試合を見ることも受け入れている。やはり生きていくには自分が変わるしかないのかもね。ただサッカーメディアは旧態依然としているのかな。

郡司 写真映りがあまり芳しくないので、こうして媒体に顔写真が載ること自体本来は避けたいのですが、自分を売り込んで仕事につなげていくためには、そうは言ってはいられないのかなと、最近はそういう気持ちにもなっています。その点、タグマ!は自分の頑張り次第で発展していく部分は大きいので、自己プロデュースを並行して展開することで仕事が発展していく”サイクル”を構築したいという思いはあります。

海江田 タグマ!の距離感はラジオに似ているのかなと思うね。ハガキなどで直接のやり取りはしないけど、月1回のペースで書いている更新予定はリスナー(読者)に向けて発信している感覚。もしかしたら、読者のパーソナリティーに対する感情はいろいろあると思うけど、この人がやっている媒体に対価を支払っているという認識はあるはず。

郡司 そういった意味では、自己プロデュースというか、よりライターの顔が見えるようにするためにも、読者からの関心も高い事柄でもある「番記者の1週間」を今回の対談のテーマとして設定させていただきました。仮にJ2の公式戦が日曜日開催である場合、お互いのざっくりとした1週間のタイムスケジュールはフリップのとおりです。順を追って、お話していきましょうか。

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▼試合2日前の練習取材は”マスト”

海江田 月曜日はマッチレポートなどを書いたり、自宅作業が中心かな。そして火曜日は強制的にでも休みたい。まあ、休みですることと言っても、映画を見るか、読書ぐらいしかないんだけれども。

郡司 ちなみに、こんな過ごし方をしたらその日は休みと言い切れる具体的な過ごし方はありますか?

海江田 朝起きて、好きなランチを食べて、本屋さんをのぞいて、映画を見て、その帰りに成城石井で生ハムとカマンベールチーズを買って、家に帰って、Netflixなどの動画サイトを見ながら、買ってきた物を食べてジンジャーエールを飲む。自分の中での休みとは、サッカー関係を忘れていい日で、パソコンは開かずに「今日は一文字も書かない!」という日かな。

郡司 自分はパソコンを開かない日はないですね。何がしか、仕事をしているか、原稿を書いています。かつてエルゴラの編集長に「郡司さんって、休みが長いと調子を崩すタイプだよね?」と言われたこともあるぐらいです。連休以上の休みは一泊温泉ぐらいしか行くところが思いつきません(苦笑)。

海江田 1日休む日があると、人間として健康的な日かなと。だから休みが火曜日になることが多いかな。水曜と木曜はコラムを書くために、元の指導者や周辺取材に当てることもあります。ヴェルディは非公開練習が多いんだけど、試合2日前の金曜日は絶対に外せない取材日。ゲームを含めると、1週間のうち、3〜4日はヴェルディに費やしていることになるかな。インタビューものや、ユース、ベレーザ関係の記事も今後は増やしていきたいと思っているんだけど。

郡司 J1の試合を取材することはありますか?

海江田 フロンターレの試合に行ける時は行く。ヴェルディ中心なので、サッカーもJ2基準になっているし、J1基準のサッカーも見ておきたいんだよね。「すごいなー」のレベルがJ2だけではなく、J1の基準・尺度も持っておかないと。そうは言っても、昨季は疲労から4試合ぐらいしか行けなかったのだけれども(苦笑)。

郡司 僕も『浦研プラス』の仕事をしている関係もありますが、J1基準に触れるという意味で浦和レッズを定点観測していることと感覚は似ていますね。ちなみに試合当日のタイムスケジュールは?

海江田 少なくとも、1時間前にはスタジアムに入って、外でサポーターの写真を撮るようにしている。ただ撮影の頼み方がいまだにうまくならない(苦笑)。「撮らせてもらえませんか?」だと相手も考えてしまうので、「撮らせてください!」とお願いして撮ったあとに、「こういうサイトです」と説明をしている。サイトの思想的にごっちゃになって、いろいろな人の顔があったほうが奥行きはあるし。ド緑だとオレが息苦しくなる。気楽さがあったほうが「なんだこの写真は?」となるだろうしね。

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▼好対照な試合日の過ごし方

郡司 エルゴラでヴェルディを担当していた時代から、海江田さんは試合後にバタバタっと仕事をしている様子がないので、「いつもどうしているんだろう?」と不思議に思っていたのですが、これを機会に聞いても良いですか?

海江田 試合のあとはひたすらダラダラしている。これは強化できる部分なのかなと。ファン・サポーター心理としては、勝った時は何でも読みたいもんでしょ。でも、その気持ちが分かっていながら何もしていないんだけど……。短めのレポートでも載せようと思ったんだけど、ずっと続ける自信がない。

郡司 例えば選手コメントは、コンテンツになり得ると思いますが?

海江田 マッチレポートとのコメント被りが嫌なんだよね。でも大して熟成していないんだよ。とにかく試合のあとはダラダラしたいだけ。

郡司 ちなみにコメントの文字起こしは、どのタイミングでやっているのですか?

海江田 翌日。試合後は原稿が形にならないまま、モヤモヤしていることが多いね。とにかく一人でいたい時間。あらためてこう振り返ると、無駄な時間が多いな(笑)。

郡司 試合後は、そんな思い切りの良さが隠されているのですね。

海江田 オレのブログを読んでいる読者はある程度分かっていると思うんだよね。「コイツ、ダメなところあるなー」と。せっせと働けるタイプではなく、ライターとして反応の良さで生きていないなということが。例えばタグマ!を始めた初年度の年末年始は「2週間休む!」と宣言したからね。タグマ!のほかのライターさんから「海江田さん、休み過ぎ!」と言われたけど、そういう奴だからこればっかりは仕方がないんだよ。

郡司 その一方でアウェイを含むトップチーム公式戦全試合取材というハードルに関しては、どんな認識ですか?

海江田 それは好きだから続けるよ。たとえ借金をしたとしても(笑)。義務感というほど重くないはないし、オレからすると当たり前の感覚。ただACLもあれば、考え方は変わるかもね。でも今年はキャンプの日程を1日間違えて早く帰ってきちゃったけどね(笑)。

郡司 なるほど、「番記者の1週間」の中に”海江田スタイル”が垣間見えた気がします。

海江田 オレがフリーになった理由は、いたってシンプル。フリーは仕事をしたぶんだけお金がもらえる。稼げなくなれば、原稿が面白くなければ死ぬ。そうやって生きたいからフリーランスになった。今回の裏テーマでもある「自己プロデュース」に関しては、変われる範囲で変わるしかないのでは?

郡司 自己プロデュースの一環として、何かを始めるにしても、やることでのワクワク感は大事にしたいなと思っています。

海江田 とりあえずやってみるは、大事なマインドだし、「見る前に飛べ」は大事だけど、その一方で成功のイメージを持っていないとね。

郡司 肝に命じます。

(後編「序盤戦の分水嶺。どうなる!? 東京クラシック」海江田哲朗×郡司聡対談)