J論 by タグマ!

企業名解禁の裏道はありなのか? Jリーグに「お金」を持ってくる方法論は?

次世代メディアとして「Jリーグ」の現状をどう捉えているのか聞いてみた。

「もっと自由な経済紙を」というスローガンを掲げてスタートした「経済のスマホメディア」である『News Picks』。サッカー界のトップライターである木崎伸也氏を登用してスポーツ報道に注力し、ちょっと違った切り口のサッカー記事を展開する姿勢に注目が集まっている。前回に続いて、その木崎氏に加えて『News Picks』の佐々木紀彦編集長を直撃。次世代メディアとして「Jリーグ」の現状をどう捉えているのか聞いてみた。

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第一回 佐々木紀彦編集長&木崎伸也氏インタビュー。「狙うは既存モデルの破壊と新時代創造」

▼世界サッカー最大の注目はアメリカ
J論:『NEWS PICKS(以下NP)』のスポーツコンテンツの傾向として、いいネタを持っている「ヒト」を起点に企画した人気連載が多いように見受けますが。

佐々木:あ~、ヒト軸は大きいと思いますよ。やっぱり担当が木崎さんだから書いてくれるという人がいたり、そうやって一人が集まるとみんな集まってくるみたいなところがけっこうありますね。

木崎:いままでスポーツビジネスを本気でやるメディアはなかったと思うので、ある意味、佐々木さんの編集部のスタンスと一緒で、この分野のオールスター軍団を集めようという狙いはありましたね。例えばそれが、SAPの日本法人でイノベーション担当を務める馬場渉さんであり、某プレミアクラブ(のリバプール)で働く本村由希さんであり、CL放映権をアジアで売るTEAMの岡部恭英さんです。そういう方たちをどんどん集めることで、『NP』自体がスポーツビジネスのコンサルティング集団みたいなイメージを持ってもらえるようになりますしね。

J論:なるほど。見事にグローバルな連載陣を構築されていますが、その『NP』のグローバルな取材ネットワークで捉えると、いま一番面白いのはどこの国ですか?

木崎:やっぱりアメリカじゃないですかね。メジャーリーグサッカー(MLS)の伸びは注目に値します。『NP』に来てからJリーグのマネジメントサイドの人たちを取材する機会が増えましたが、話を聞いているとやはりアメリカのMLSをかなり参考にしているそうです。将来日本人選手がプレーする機会も多くなるでしょうし、実際、本田圭佑選手も視察に行ってチェックしていますよ。日本にとってある意味ライバルになると思いますが、個人的には最も注目すべきリーグだと感じますね。

佐々木:Jリーグも面白いんじゃないですか。村井(満)さんになっていろいろ変わり始めていますよね。

木崎:村井さんがチェアマンになってから、『NP』でもJ1全社長にインタビューする企画(「Jリーグ・ディスラプション」)が始まっているんですが、驚いたのはJリーグのビジネス記事がサッカーファンというよりもビジネスマンに受けていること。堀江さんを筆頭にビジネスパーソンの反応が非常に良くて、Jリーグはものすごい力を秘めているなと。それは逆に、サッカーメディアに書いていたときよりも感じています。

「近い将来、Jリーグは大爆発する」って金子さんが言った記事もPVが良くて、コメントもポジティブな意見が多かったんですよね。おかげでその後もJリーグの企画がどんどん増えて、それをJリーグサイドもよく見てくれていた。もちろん批判するところはちゃんと批判しますけど、『NP』を評価してくれているというのは嬉しいですね。

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▼50億100億をぶっこめる大金持ち、求む
J論:そのJリーグをもうひとつ引き上げるためには何が必要だとお考えですか?

佐々木:やっぱり「お金がある」ってことですよね。Jクラブはどこの経営もそれほど悪くないと思いますが、どうしても縮小均衡的になるじゃないですか。キャッシュにも余裕がないので、大きな投資ができない。で、セレッソみたいにフォルランに賭けてああいう結果になると、またちょっと弱腰になるじゃないですか。

一方のビジネス界が、やれスタートアップだなんだとでっかい投資ができるのはなぜかと言うと、ベンチャーキャピタルがあるからなんですよね。「当面は利益を上げなくてもいいから、とにかく成長するためにお金を出すよ」っていう人がいてくれる。チェルシーのアブラモビッチは石油王でありベンチャーキャピタリストですよね。パリSGについているカタールの会社もベンチャーキャピタルだし、マンチェスター・シティのオーナーもそう。そんなふうに、赤字でもいいから数年間で50億とか100億をぶっこむ!みたいな人が出てきたらすごく面白いと思うんですけどね。

Jリーグもそういうリスクマネーを上手く活用できるようなフレームワークが欲しいですね。いまの「ファイナンシャルフェアプレー」って、どちらかと言うと脱落者を出させないための縮小均衡に働く仕組みです。それはそれで大事だと思うんですけど、底上げだけじゃなくてトップを突出させるための戦略とかルールが必要。そのために外資規制を緩めたりというのは、いい流れだと思うんですけどね。堀江さんも「俺に200億円あればすごいビッククラブを作れる」とか、「Jリーグはめちゃくちゃ成長できる」みたいなことを言っていて、実はビジネスチャンスの宝庫に見えているみたいですよ。

木崎:これは金子さんの受け売りなんですけど、「ファイナンシャルフェアプレーなんて無視すればいいじゃないか。浦和レッズが債務超過になってJ1から落とせるのか。絶対落とせない。だからあんなものどんどん無視するビッククラブが出てくることが重要だ」と。確かにブンデスリーガでも、ドルトムントとかシャルケって思いっきり赤字なんですよね。でも結局、リーガは落とせなかった。グレーゾーンを作って借金を許容しているところもある。健全経営と言われるドイツですらその状況ですから。Jリーグでもすごいお金持ちのベンチャーキャピタルが投資して、がっつりテコ入れするのはアリかもしれないですね。

佐々木:ものすごい大金持ちが入って来てほしいですよね。それと大物選手も。ピルロやジェラードがMLSに行きましたけど、引退間際でもいいのでJリーグに来てくれたら、開幕当初みたいに面白くなりますよね。

木崎:Jリーグの浦和レッズと、MLSで一番資本があるチームの予算を比べると、浦和レッズの方がちょっと多いんですよ。それなのに向こうで一番稼いでる選手は6~7億円もらっている。日本の場合はスタジアムの使用料とか、予算に対するコストの割合が大きいのかもしれませんが、予算規模ではまだまだアメリカに負けていないので、選手獲得でも十分に勝負できると思うんですけどね。

▼レッドブルに学ぶサッカークラブの錬金術!?
J論:どうしたらJリーグにお金が集まるようになるのでしょうか?

木崎:大きなお金が入るには、やはり既存のルールを変えないと厳しいと思いますね。例えば、いまドイツの2部にいる「RBライプツィヒ」というクラブ。これは前身の4部クラブが破産したときに、レッドブルがオーナーになって救済する代わりに”RB”へ改称しました。正式には「ラーゼンバルスポルト」という名称で、略して”RB”なんですが、誰が見てもレッドブルなんですよ(笑)。そうすることでレッドブルがものすごいお金を使えて、来季にはもう1部に上がってきそうな勢いなわけです。

その話をJリーグ常務理事の中西(大介)さんにしたところ、アメリカにも「ニューヨーク・レッドブルズ」というチームがあるんだよねって話になって。で、「ニューヨーク・レッドブルズは何でOKなんですか?」って聞いたら、中西さん曰く「”レッドブル”じゃなくて”レッドブルズ”で『S』を付けたからいいんだ」と。それを聞いて、Jリーグでも企業名解禁とは言わないまでも、そういうちょっとした工夫でレッドブルみたいな大企業がお金を出せる環境を作れば、意欲的なクラブが発展する可能性があるのかなと思いましたね。

J論:そういうルール変更が起こりそうな機運はあるのでしょうか?

木崎:危機感はあるでしょうね。オーストラリアのAリーグがものすごく伸び始めていて、予算規模では断然Jリーグの方が上ですがACLでは苦戦しています。実際、去年のACLはウエスタン・シドニーが創設3年目で優勝しましたよね。Aリーグはスポーツをエンターテインメントビジネスとして盛り上げようという取組みもすごくて、すでにニュージーランドのチームを参加させたり、今後は東南アジアのチームを参加させようという動きもあるそうで。地理的なメリットを活かしたアジア規模の構想をはっきりと描いているわけです。人口も移民でどんどん増えていますし、このままではたぶん歯が立たなくなってくる。

ご存知の通り近年は中国勢にも大苦戦していて、今年こそ上位にG大阪と柏が残ったとはいえ、広州恒大のようなチームと渡り合うのは年々厳しくなっているというのが共通認識でしょう。こうした状況でさらに危機感が高まれば、「このままじゃマズイ」となってルール変更を決断しやすくなるんじゃないかと想像しているんですけど。

J論:『NP』のような経済メディアであれば、ビジネス的な根拠を持って新しいアイディアを提案できるのでは。

木崎:そうですね。まさに佐々木さんがコンセプトに挙げている”ディスラプション”。直訳すると”破壊”でしたっけ?(笑)

佐々木:破壊じゃない(笑)。”創造をともなう破壊”と訳すのが正しいみたいです。「創造をともなう」ってところが大事ですね。

第三回 やはり受けるのは人モノ? 空前絶後の反響だった本田圭佑インタビュー