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情熱の分析家・河治良幸

2014 12/01  08:14

ジャイアントキラー・松本山雅。昇格の原動力となった戦術的秘訣とは?

週替わりのテーマで複数の識者が論陣を張るJ論レギュラーコラムに対し、一人の筆者が自分なりのテーマで深掘りを試みるのが、『一意専心コラム』。今回は情熱の分析家・河治良幸が松本山雅を昇格に導いた"反町マジック"に迫ったYahoo!個人のコラムを、J論向けにあらためて配信してもらった。

▼ネガティブ・トランジッション
 反町康治監督が監督に就任して3年目となる2014年シーズンに、リーグ2位で見事に初のJ1昇格を決めた松本山雅。組織的な守備からの迫力あるカウンターは山雅サポーターのみならず、対戦してきたJ2クラブのサポーター、J2をよく観戦するサッカーファンもすでに知るところだと思う。

 日頃のハードな練習に裏打ちされた運動量、相手のストロングポイントを消し、ウィークポイントを突く戦術、バリエーション豊かなセットプレーなどを駆使して、"J1級"のタレント力を持つライバルとも互角以上に渡り合い、大方の予想を上回る成績で昇格を果たしたわけだが、そうした松本山雅を象徴しているのが、相手リスタート時の素早い対応だ。

 攻撃から守備への切り替わり、いわゆる"ネガティブ・トランジッション"には二つの種類がある。一つはインターセプトされたり、セカンドボールを拾われるなど、流れの中で相手ボールになった時。もう一つはオフサイドやファウル、ボールがラインを割ってスローインになるなど、プレーが切れた瞬間だ。ここに守備時のファウルも含め、ボールが止まっている時に松本の選手たちは無駄なく配置を修正し、ボールに近い選手はレフェリーに注意されない範囲でキッカーにプレッシャーをかけ、後ろの選手はいつ蹴られても対応できるように、ターゲットをマークする。

 特にセンターバックやウイングバックの攻撃参加が多い松本は、彼らが上がっている時に攻撃が終わるケースも多いが、その直後は一時的に中盤の選手がディフェンスを埋めて早いリスタートに備え、キッカーに近い選手は少しでも自由に蹴らせないポジションを取る。そしてカウンターのリスクを下げてから、普段の布陣に戻すのだ。

 松本山雅のハードワークはプレッシングやオーバーラップだけでなく、攻め上がった選手の戻りにも発揮されるわけだが、90分の中で数十回起きるリスタート時のきびきびとした対応が、松本山雅のサッカーを下支えしているのは見逃せない。「例えば犬飼が上がっていたら誰かがそのスペースを埋める。そういう簡単な作業をきっちりやっていく。その連続でしょうね」と反町康治監督は語る。

▼隙を与えず、隙を突く
 リスタートを含む切り替えのトレーニングはシーズン中でもかなり入れているというが、選手たちが常日頃から意識していることでもあり、「隙を与えず、隙を突く」という松本山雅のコンセプトを象徴するものでもある。

「どこのチームも同じですけど、やはり後半の15分過ぎからルーズになっていくんですよ。ウチはそこがルーズにならない。そこは強みだと思います」(反町監督)

 こうした対応をきめ細かく指導しているクラブは松本だけではないが、ボールが切れるシチュエーションやタイミングが色々あり、時には納得いかない判定でプレーが止まることもある中で、当たり前の動きを90分しっかりやり切るのは並大抵の集中力ではない。最終節の水戸ホーリーホック戦では3-0で終盤を迎え、そこから今季限りで引退する飯尾和也を含む3人の選手交代があったが、最後の笛が鳴るまでリスタートでルーズな部分をまったく見せなかった。

 状況判断に関しては洗練されたトレーニングメソッドがトップチームはもちろん、育成年代にも普及してきており、「ビー・アラート」(何が起こっても無駄なく対応できる体の準備と予測)という用語もすっかり古くなった。

 しかし、実際に試合を見ると相手のリスタートとなった瞬間に、90分にわたって松本ほどしっかり隙を与えない準備ができているチームはなかなかお目にかかれない。ルーズな対応でゴールキックやオフサイド後の自陣FKを起点にシンプルなチャンスを許し、素早いリスタートやCKのカウンターなどから失点するケースが多いのが実情だ。

 一方で反町監督は選手たちに、常に危険な場所に身を置いている様な意識をピッチ上でも持ち続けるよう、トレーニングから植え付けてきた。J1が舞台になる来季は松本にとって厳しい戦いになることは間違いないが、ボールが切れたところでも失われない集中力と姿勢は大きな強みになるはず。ハードワークをベースに全員で攻め全員で守るスタイルや多彩なセットプレーだけでなく、「相手のリスタートになった瞬間の対応」は、全国のサッカーファンにぜひとも注目してほしいポイントだ。

河治良幸(かわじ・よしゆき)

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCFF』で手がけた選手カードは5,000枚を超える。 著書は『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『日本代表ベスト8』(ガイドワークス) など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。サッカーを軸としながら、五輪競技なども精力的にチェック。

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