必要なのは世界との駆け引き。「しょうがない」を理由にしてどうする!?

2015年度から2ステージ制へと移行するJリーグは、さらにその後に秋春制を導入することが既定路線となっている。W杯での惨敗を受けて日本代表の強化スケジュール円滑化を目的とした秋春制早期導入の声も出ているが、果たしてその是非はどうなのか。あるいは、どうすればよりスムーズな移行が可能になるのか。本格的な夏を前にして、あらためて『J論』として議論してみたい。三人目の登壇はミスター観戦力・清水英斗。この議論から距離を置いてきた論客が、素朴な疑問を出発点に秋春制の是非を見つめる。



▼山口蛍の葛藤に思う
 柿谷曜一朗がスイスのバーゼルへ移籍することが決まり、筆者が心配したのは、セレッソ大阪に留まる決断をせざるを得なかった、山口蛍のことだった。山口は以前から海外サッカーへの挑戦志向が強い。イタリアのフィオレンティーナやアタランタからは実際にオファーも来たようだが、しかし、C大阪としても彼らふたり共をシーズン中に送り出すわけにはいかない。

 また、柿谷がプレーした前線のポジションには、ディエゴ・フォルランという看板を獲得しているし、南野拓実や杉本健勇といった若い才能の芽も見られるが、キャプテンマークを巻くボランチの山口は、柿谷以上に替えがたい存在と言える。今季なかなか結果を出せず、降格圏まで見えてきたC大阪だからこそ、このタイミングで山口を出すわけにはいかない。山口もそのクラブ事情をよく理解した上で、それでもやるせない思いが残ることは、彼のコメントの端々......、端々というか、わりと堂々と現れている。

 Jリーグと欧州とのシーズンのズレが、このような移籍に関わる問題を引き起こすことは、以前から秋春制移行の理由として言われてきた。これは理解できる。

 一方、正直よくわからないのは、FIFAのAマッチカレンダーに合わせやすくなるから秋春制、という理由。2014年以降、Jリーグのシーズン佳境と重なる9~11月にAマッチデーが増えるといっても、現在の日本代表は海外組が多くて影響は希薄だし、そもそもその不利益以上に、6月のW杯本大会をJリーグ組が「シーズン中のコンディション」で戦えるメリットのほうが大きいと考える。それに、もし、そのAマッチデーに今まで通りに日本国内で親善試合を組むのなら、やはり全力で戦える強豪国と経験を積むのは、今までどおりに難しい。僕の理解が足りないのかもしれないけど、正直、FIFAのAマッチデーに合わせるため、という理由はよくわからない。

▼最大の問題は代表よりACL
 そんなわけで秋春制への移行は、メリットよりも積雪地のクラブに対する負担デメリットのほうが大きいと思っていたが、問題はACLだ。

 これは悩みの種。

 欧州と同じ秋春制を採用する中東は、現在のACLのシーズンが自国リーグに合っていなかった。12月~2月辺りは、中東にとってはサッカーのベストシーズン。AFC(アジアサッカー連盟)は中東が主導権を握っている。恐れかれ早かれ、ACLは秋春制に移行することになるに違いない。そうなると日本のサッカースケジュールは破綻する。

 2012年にロシア・プレミアリーグが秋春制に移行したのも、UCL(欧州チャンピオンズリーグ)に時期を合わせる目的が大きかった。じゃあ日本も......といっても、UCLとACLでは賞金の額が違いすぎるし、そんなメリットがACLにはないじゃないか! と思う人もいるかもしれない。が、"アジア戦略"は今後のJリーグの中長期的な成長戦略だ。アジアで成績を残すことは、Jリーグに対するアジアの注目度を高めることになる。ACLを捨てるわけにもいかない。

 とはいえ、仮にJリーグが秋春制に移行しても、報道されているように12月~2月にウインターブレークが設けられるのなら、この時期に中東側は試合を臨んでくるのだから、どちらにしろACL問題はネックになる。うーん、どうしたものか。

▼結論は、もはや一つだけ
 そうだ! 抜けちゃえ! 

 というのが僕の結論だ。そもそも、このだだっ広いアジアで一つの連盟としてやっていくのが無茶だった。この問題をきっかけに、「西アジアと東アジアは一緒にはできない!」という資料を提出し、韓国や中国と一緒に、西はミャンマーまで、南はオーストラリアまで、『東アジアサッカー連盟』として発足したほうがいい。そして、晴れて秋春制サヨナラ。新しい『東AFC』では日本も主要国の一つとして、舵取りへ。Jリーグのアジア戦略も一気に進む。

 当然、中東側は反発するかもしれない。だけど、現在4.5あるW杯の出場枠を西アジア2、東アジア2.5で割りましょうとか言えば、グラグラと揺れるんじゃないだろうか。成績で言えば当然、西アジア1.5、東アジア3ぐらいの枠が適当だし、「0.5」は南米とのプレーオフだから、実質、ないようなものだ。また、現行の全体「4.5」のままだとしても、日本、韓国、オーストラリアが順当に勝てば、2022年のW杯には、中東から開催国のカタールしか出られない可能性は充分にある。そこに「西アジア2、東アジア2.5で割りましょう」と言えば、もう一カ国、確実に中東から出場させることができる。たぶん、グラグラ揺れるんじゃないだろうか。

 我ながら暴論だとは思うけど、広すぎるアジアの区分けも、いつかはやらなきゃいかんだろう!と思っていたことの一つ。だったら、材料が色々ある今回が絶好のチャンスではないか、と思ったりする。

 秋春制に関しては、「FIFAに合わせるため」「ACLがそうなるから仕方がない」と、どうもネガティブな「しょうがない」系の理由が多いような気がする。それ自体はいいけど、だったら何か、こちらのメリットも突きつけて駆け引きしようぜ、というのが僕の望みだ。強烈なリーダーシップを持つ政治家、出てこいや!


清水 英斗(しみず・ひでと)

1979年12月1日生まれ、岐阜県下呂市出身。プレーヤー目線で試合を切り取るサッカーライター。著書に『日本代表をディープに観戦する25のキーワード』『DF&GK練習メニュー100』(共に池田書店)、『あなたのサッカー観戦力がグンと高まる本』(東邦出版)など。現在も週に1回はボールを蹴っており、海外取材に出かけた際には現地の人たちとサッカーを通じて触れ合うのが最大の楽しみとなっている。

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