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なぜ浦和レッズ遠藤の小林へのチャージは退場で、エドゥアルドの李へのスライディングはレッドではなかった?【審判批評コラム】

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今回は審判批評を中心としたWEBマガジン「石井紘人のFootball Referee Journal」からの記事になります。


なぜ浦和レッズ遠藤の小林へのチャージは退場で、エドゥアルドの李へのスライディングはレッドではなかった?【無料コラム家本政明審判団批評:浦和レッズ×川崎フロンターレ】石井紘人のFootball Referee Journal
2017年07月06日更新

昨日行われたJ1第13節の川崎フロンターレ×浦和レッズ戦で議論できる判定があった。

それは浦和レッズが一点を追う展開で迎えた80分。GKのパントキックからバックラインの裏をとられた浦和レッズ遠藤が、川崎フロンターレ小林をボールにプレーできる範囲外から押し倒してしまう。当然のファウルで、論点はPKになるか、また新ルールが適用されるかどうかだが、家本政明主審は迷わずPKとレッドカードを示す。

戸田和幸氏は「PKを与えて退場というのは基本なしにしていく。イエローでって流れになっている。主審から見て止めた感じが良く見えなかったということでレッドになった」と解説したが、それは正しくない。

もちろん、「その局面で何があったかでジャッジは変わる」とも付け加えているが、そうではなく現在のサッカー競技規則では

「競技者が自分のペナルティーエリア内で相手競技者に対して反則を犯し、相手競技者の決定的な得点の機会を阻止し、主審がペナルティーキックを与えた場合、反則を犯した競技者は、次の場合を除き警告される」
とされた。

この「次の場合を除き警告される」を見落とし、「ペナルティーエリア内での得点の機会阻止は警告のみ」と勘違いしてしまったのかもしれないが、

・相手競技者を押さえる、引っぱる、または押す反則の場合

・反則を犯した競技者がボールをプレーしようとしていない、または、その競技者がボールに挑む可能性がない

・反則がフィールド上のどこであってもレッドカードで罰せられるものであるとき(例えば、”著しく不正なプレー””乱暴な行為”など)

・得点の機会阻止につながるハンドリング”

は退場となる。遠藤が退場になったのは、「反則を犯した競技者がボールをプレーしようとしていない、または、その競技者がボールに挑む可能性がない」で「得点の機会阻止」をしたからである(そもそも得点の機会阻止が適用されるかはこちらを)。

つまり、この判定の論点はカードの色ではなく、ペナルティーライン上だったか、外だったかである。また、もう一つの論点である86分のエドゥアルドの李忠成へのスライディングのオレンジのジャッジもしっかりと議論したい(参考記事:主審の名前や過去ではなく判定で厳しく議論する:川崎フロンターレ×浦和レッズ家本政明審判団批評)。


石井紘人のFootball Referee Journal」ではこのほかにも下記の記事などを掲載中です。

86分の李忠成へのエドゥアルドのスライディングは警告?「相手競技者の安全を脅かすタックルまたは挑むこと、また過剰な力や粗暴な行為を加えた」著しく不正なプレー?

トップレフェリーに聞く「味方競技者によって意図的にゴールキーパーにキックされた」バックパスの『意図的』とは?【柏レイソル×鹿島アントラーズ:佐藤隆治審判団批評】