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【熊本】岡本賢明選手 引退発表後のコメント

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引退発表をしたロアッソ熊本、岡本賢明選手のコメントになります。


【TOPICS】岡本賢明選手 引退発表後のコメントkumamoto football journal

岡本賢明引退

ロアッソ熊本は先週3日、キャプテンのMF岡本賢明選手が今季限りで現役引退することを発表しました。クラブのホームページを通じて岡本選手自身のコメントも伝えられていますが、決断に至った背景や残り試合に向けた想いについて聞くことができたので、ここでお届けします。

決めたのは10月の中旬から下旬にかけてです。相当悩みました、やっぱり。まだやっぱり、サッカーやりたいという気持ちもあったし、いろんなことを考えたりして、どうしようかなと。自分でも(引退は)いつきてもおかしくないと思って熊本に来ました。試合に出られなくなったら厳しいだろうなという覚悟は常にあったので。でも、そのなかでもやれる自信はあったり、まだいけるっていう気持ちがあったから、ここまできたんですけど。

毎年、今シーズンが最後かもしれないっていう気持ちでやってきて、試合に出ていない現状を客観的に見ると、そういうこともあって当然なので。

リュウ(平繁龍一/カターレ富山へ期限付き移籍中)の移籍は関係なかったです。でもリュウは多分、俺にはもっとやって欲しかったと思っているだろうし。報告した時も「まだやってほしかった」って言われたんですけど。その気持ちも分かったんで。だからあんまり、自分の判断には関係はなかった気がします。

まだやりたいという気持ちから、これからどうしていくのかなというのを考えて。やっぱり熊本というチームは地元でもありますし、大事にしたいクラブ。その中で、自分の怪我の状態だとか、あとどれくらいできるのかなとか、いろんな想像をしていって。たぶん、本当に自信があったら迷いなく続けると考えていた気もするし、(試合に出られなければ)移籍とかを考えるのも普通なんですけど。その時に「どうしようかな」と考えた時点で、ちょっと自信がなくなっていたのかなっていう。タイミング的にも、自分で考えていたのかなと。

練習しながら自信がなくなるってことはなかったんですけど、やっぱり常に「俺が(ゲームに)出たらもっといいのにな」っていう気持ちはありました。だから、そこがちょっと、引退っていう結論に到るまで難しかったところで。迷ったっていうことは、ちょっと自分でも今後への不安が多少なりあったのかなっていう感じは、今はします。うん。次の、ここからの人生が続いていくときに、次の目標というか、モチベーションになることが見つかって。そっちの道を頑張っていこうと思えたので。

岡本賢明

正直、最初はあんまり興味がなくて、指導者には。C級ライセンスもなんとなくとったし、今受けているB級も「とりあえず取っておこうかな」というぐらいの気持ちで受け始めたんですけど。「やめたらどうするんだろうな」というのは、現役でいる時ってリアルには考えられないんです。だから、サッカーは好きだけど、関わり方としては自分がたまに楽しむくらいの関わりでいいのかなと思っていたんですけど、結局やっぱり、自分にあるスキルってサッカーしかなかったし、ここでサッカーを離れることは想像ができなくて。

だったら、熊本の子供達やこれからの選手たちを育てたり、自分が好きな、ここまでやって来たサッカーにずっと関わっていけるっていう意味で魅力を感じて。違う仕事しているのも想像できなかった。で、選手を続けるか、そっちの方に行くか考えた時、そっちに行くほうが自分にとってはプラスだと思ったし。選手としても、自分のなかではもう、一生懸命やったんで。そこはもう納得できたっていうか、ここまでやって(試合に)出られないんだったら、という感覚も多少あって、そっちにいこうかなと。

いろんな人と話をして、大抵の人は「自分が満足するまでやったほうがいいよ」って言うんですけど、よくよく考えたら、自分はもう満足するくらいやってるなって気づいたんです。もうちょっとできたかなっていう感覚があると、そういう気持ちにはならないと思うんですけど、自分のなかでは、自分の力、出し切ったっていう気持ちだったんで。妻にはずっと相談してて。最終的に決めるのは自分だから、「いちおう覚悟しといてね」、ぐらいの感じで伝えてはいました。

今年はちょっと、スタートで膝のコンディションをいいところに持っていけなくて。そのあとに半月板を怪我して1ヶ月半くらい離脱したんですけど、その間に監督が代わったりして。そこからは自分としても膝のコンディションは良かったし、体のキレも、夏ぐらいからはやりながら悪くないなという時期もあったんですよ。だから膝の調子が理由でっていうことではないです。今年と同じくらいの状態で、もうちょいできるのかなとは思ってました。ただ、できなくなってくることは多いです。毎年少しずつ、「あ、これはできないかな」というのはあったんですけど、でもその中でも、「まだできるかな」というのはありました。

やっぱり、ゲームに出ないキャプテンって、僕はあまり想像できなかった。清川(浩行:前監督)さんもすごく期待して役割を与えてくれたと思っているんで、その期待に応えられなかったということで、監督交代の時にはすごく責任を感じました。やるのは選手たちで、結果を出せなかったのは選手たちなのに、結局そうやって、責任を取るのは上の人たちというところで。キャプテンという立場で力の無さを実感して。そこからもう1回頑張ろうと思ったんですけど、やるサッカーも変わってきて。そのなかで、なかなかゲームに絡めなくて、キャプテンといいながらキャプテンらしいところは何もなく。どうなのかなっていう葛藤は、この2年ずっと、ありました。

僕は守備が足りないって昔からずっと言われてきたんですけど、僕の考え方としては、そこが足りない分、攻撃のところで変化をつけるっていう。そういうプレースタイルだったんで、チームの規律になっているところは最低限やりながら、攻撃のところで他の選手にはできないようなことを求められてきていたから。でも、それはもっと突出したものがあったら(試合に)出られただろうし。そこまでのことを見せられなかったのかなっていう感じですね。

サッカーが多少変わるかもしれないですけど、自分でも毎試合やっぱり、「俺が出ていたら、こんな簡単に相手ボールにならないようにできるのにな」とか。そういうイメージをしながら試合を見ていました。今までは自分のコンディションが上がったり、頑張ったりすれば試合に出られていたのに、今年は自分的に「いけるな」という感覚があって、「そろそろ出られるかな?」と思っていた中でも出られなかったんで、自分でも「今までとは感覚が違うなぁ」っていうのがあって。それは別に監督が悪いとかいうことじゃなくて、自分が、そういうことになっちゃったのかなっていう。イメージするパフォーマンスが自分ではできてると思ってたんですけど、周囲が求めるものとギャップができてたのかなぁっていう。使われないってことはそういうことなのかなって、思ってましたね。

岡本賢明

熊本では、自分が思っているような結果を残せなかったっていうのが正直な印象で。キャプテンをやらせてもらったり、去年はシーズンを通してだいたい使ってもらって、そういう経験ができたんですけど。結果としてやっぱり物足りなかったというのが率直な印象です。本気で「熊本をJ1に連れて行きたい、俺ならそれができる」と思って帰って来たんで。そこが本当、唯一の後悔っていうか、悔しい、心残りのところです。ただ、サッカー選手としての札幌での7年間と熊本での4年間というのは、すごくいい経験をさせてもらったし。誰と比べるわけじゃないし、決して11年って長いもんじゃないと思うんですけど、すごく濃い11年が過ごせたなと思います。いろんな経験もできたし、サッカー選手になって本当に良かったなって思える時間でした。

地元への思いは強いですよ、やっぱり。それはどうしてかっていうと、札幌にいたときに、地元の選手はすごいみんな応援してくれるし、可愛がられていたのを見ていて。札幌出身の選手っていう、地元出身の強みというか、それを見てすごくいいなってずっと思っていたんです。すごく楽しかったし、まだまだ札幌でやりたいって気持ちはあったんですけど、でも、熊本で自分がそういう風になるっていうのも経験してみたいなとも思って。でも熊本ではそうなれなかったかなっていうところはちょっとありますね。もっとできると思ったんですけど。

札幌は本当に、下からもどんどん選手が上がってきて、そういう選手が活躍するっていうのがあったんです。熊本は今、(米原)秀亮とか(上村)周平、(嶋田)慎太郎が頑張ってますけど、もっともっと、そういう選手をいっぱい送り出して。そこに携わっていくことが、熊本出身で、熊本でこれだけやらせてもらった自分のためでもあるし、熊本のためでもあるのかなっていう気持ちがします。

皆、ビックリはしてました。でも皆にも伝えたんですけど、サッカー選手ってやりたくて誰もができる仕事ではないし、いつかはみんなにも(引退を決める時が)来る。だから1日1日を一生懸命、大事にやってほしいって伝えたんです。自分はそれを実行できたって思えるから、今そうやって、スッキリしているところもあるので、皆にはそれをやってほしいと思ってます。

熊本サポーターに対しては感謝の気持ちしかなくて。熊本ではなかなかコンスタントに活躍できなかったんですけど、常に僕に期待してくれるサポーターがたくさんいたのも知っていますし、その期待に応えたいから、やっぱり頑張れたっていうのもあるんです。

試合に出られなくてスタンドから見ている時も、17番のユニフォーム着てくれてる人がたくさん見えるんですけど、その時の申し訳ない気持ちと、また頑張ろうと思わせてくれる気持ちと。そういう人たちがいたから、本当に最後まで一生懸命できたのかなっていう気がします。もうちょっと、その期待に応えたかったのが事実で、それができなかったのは本当に申し訳ないなと思います。

残り2試合しか、僕のプロとしての試合は残っていないんですけど、とにかく今まで通り、1日1日、ゲームのためにしっかりやって、ちょっとでもやっぱり、「あいつ、良かったよね」とか、「まだやってほしかったね」って思われるような選手であることを証明したいなという気持ちです。自分が今までやってきた存在意義とか、そういうのをしっかり示せるように、最後の1秒まで頑張っていきたいと思います。

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