【横浜FM】いつもは勝っても辛口コメントの多い中澤佑二が、珍しく喜びを爆発させた。残り4試合をしびれる境遇で戦える。そんな幸せを手に入れた [J30節 鹿島戦レビュー]
いつもは勝っても辛口コメントの多い中澤佑二が、珍しく喜びを爆発させた。残り4試合をしびれる境遇で戦える。そんな幸せを手に入れた [J30節 鹿島戦レビュー] <無料>(ザ・ヨコハマ・エクスプレス)
これ以上ない、会心の勝利だ。首位・鹿島アントラーズから勝ち点3をもぎ取った。「首位のチームに勝ったことがとにかく大きい。まだ優勝をあきらめたわけではないし、内容なんて関係ない。勝ったことが一番大事」。いつもは勝っても辛口コメントの多い中澤佑二が、珍しく喜びを爆発させた。
開始14分で2点のリードを奪うアドバンテージを得たのは、とても幸運だった。
1点目は、天野純の左CKから伊藤翔がヘディングシュートを決めた。天野が「前日練習から翔くんとタイミングが合っていた」と明かせば、これが今季初ゴールとなった伊藤も「CKは昨日から感覚が良かった」と口を揃える。練習の成果を試合で発揮できたという意味で、今後にもつながるだろう。
久しぶりの先発ながら最高の仕事をした伊藤だが「個人的には問題しかなかった。感覚も体力も、何試合かやらないと本調子にはならない」と首を横に振る。約5ヵ月ぶりの先発はさすがに厳しい条件だったようで「早い時間帯に点を取らないと体力が持たないと思っていた」と苦笑い。それでも重要な一戦で結果を残すあたりが、ここ数年マリノスの1トップの主軸を務めてきた男のプライドだろう。
追加点を決めたのはトップ下の天野だった。鹿島CB植田直通のトラップミスを見逃さなかった動きも素晴らしいが、その後の1対1を冷静に決めたことに大きな価値がある。先日のコラムで取り上げたように、前節の大宮アルディージャ戦ではチャンスの場面でパスを選択。チームは勝てず、本人としては期するものがあったはずだ。次のチャンスでは「左足を振る」と宣言していたが、結果的には駆け引きに勝利しての優しいシュートでゴールネットを揺らした。
もっとも、その後の戦い方には課題を残した。あろうことか前半終了間際という時間帯に注意しなければいけないセットプレーから失点を喫する。この日の先発は伊藤や下平匠などセットプレーで力を発揮できるメンバーだったが、それでも喜田拓也に金崎夢生のマークを託すのはミスマッチ感が否めない。1失点目は金崎をターゲットにされ、こぼれ球を押し込まれた。
2失点目は、中澤が植田に振り切られた格好なのだが、セットプレーの直前に扇原貴宏を投入する采配はいただけない。マークが変更されることによる混乱とともに、セットプレーを守るリズムが損なわれる。右SBの位置で奮闘した下平だが、修正点はオープンプレーよりも「セットプレーから2失点はいけない」という一言に尽きる。
だが、この日のマリノスは2-2に追いつかれてから逞しかった。その象徴が途中出場した遠藤渓太である。マルティノスの負傷によって久しぶりに本来のポジションで出番を得ると、持ち前のスピードを生かして鹿島の最終ラインに勝負を挑んでいく。決勝ゴールの場面は山中亮輔のパスに対してダイアゴナルの動きでフリーとなり、ボールを受けてからは滑らかなターンから間髪入れずに右足を振った。前々節のガンバ大阪戦でリーグ戦初ゴールを決めた19歳にとって、これがリーグ戦2点目となった。
おそらくピッチに立った選手全員が鹿島との力差を感じたはず。鹿島は間違いなく強敵で、しかし、だからこそ勝ったことで得られるものは多く、大きい。前々節のガンバ戦と同じようにリードしている状況を追いつかれながら、死力を尽くして勝ち越し点を奪ったあたりにチームとしての成長と奥行きを感じさせる。
繰り返す。相手は下位に沈んでいるチームではない。間違いなくリーグトップの力を持つ、王者だ。そのチームに競り勝ったのだから、文句なしに今季ベストゲーム。まだ何も得ていないが、残り4試合をしびれる境遇で戦える。そんな幸せを手に入れた。
「2012年から勝てていない歴史を覆したかったし、一人ひとりがすごく良かった。サポーターもたくさん来てくれて、優勝を目指す意味でも大きい」(天野)他 [鹿島戦後コメント] <無料>
「コンディションはいい」(伊藤)・「右利きの選手が左SBをやれるなら、自分にも右サイドはある程度できるはず」(下平) [鹿島戦前コメント]