J論 by タグマ!

『黄色の仲間たちへ。伝えたかったメッセージ』町田vs神戸/金山 友紀【Fリーグ】

有料WEBマガジン『タグマ!』編集部の許可の元、タグマ!に掲載されているJリーグクラブ有料記事を全文掲載させていただいておりますこの企画。
今回はFC町田ゼルビアを中心としたWEBマガジン「町田日和」からの記事になります。


【★無料公開】【コラム】DUARIG Fリーグ2017/18 第1節・町田vs神戸/FP 7 金山 友紀『黄色の仲間たちへ。伝えたかったメッセージ』町田日和
2017年06月13日更新

■DUARIG Fリーグ 2017/2018 第1節・6月10日(土)16:00キックオフ
国立代々木競技場第一体育館/1,898人
ペスカドーラ町田 4-1 デウソン神戸
【得点者】町田/00:53 森岡薫 13:40 日根野谷建 32:26 金山友紀 39:50 森岡薫 神戸/39:53 岡崎チアゴ

GNJ_9800-1.jpg

▼右腕を天高く

2-0で迎えたセカンドハーフ。3点目の重要性をチームの共通認識として理解していたペスカドーラ町田は、30分を過ぎても攻勢の手を決して緩めなかった。しかし、奪えない追加点。次第にデウソン神戸も巻き返してくる中で迎えた32分過ぎだった。このシーズンオフに日本代表に選出された原辰介が中央突破を図ると、”モーゼの十戒”のように中央に道ができた。そしてシュートコースを見付けた原が右足を強振ーー。その瞬間、大ベテランの7番は直感的に閃いたという。

「ココにこぼれてくるな」

原のシュートをGK福良一至がはじき返すと、誰よりもそのこぼれ球に速く反応した選手が金山友紀だった。待望久しい追加点を奪った”殊勲者”をチームメートが取り囲む。そして歓喜の輪がほどけたあと、金山は左胸のクラブエンブレムを叩き、黄色のユニフォームを身にまとった町田サポーターが陣取るスタンドに向かって、右腕を天高く突き上げた。

「僕は黄色のユニフォームを着たサポーターが僕たちの背中を後押ししてくれることに対して常に感謝の気持ちを持っています。僕自身、今年が11回目のFリーグ開幕戦になります。シーズン途中にけがで離脱する時期もありますが、開幕戦だけは必ず出場してきました。すべての開幕戦に出場させてもらっている感謝の気持ちと、Fリーグ開幕のころから応援してくれている人たちもいます。ゴールを決めたあとのメッセージとして、『あなたたちの応援は届いているよ』ということを伝えたかったんです」

開幕戦勝利を力強く引き寄せる追加点を得た町田は、パワープレーに出て来た神戸の反撃も終盤の39分5秒に森岡薫がパワープレー返しを決めていなし、最終的には4-1で白星発進を飾った。

「昨年は同じ相手である神戸に負けていることを考えると、勝ち切れたことは大きい」。自らのゴールでチームの勝利を引き寄せられたことが何よりもうれしかった。

GNJ_9848_2.jpg.jpg

▼頂点しか見えない

1977年生まれの金山は、今年40歳を迎える。周りはどうしても年齢の色眼鏡で見てしまうが、本人にとっての大台突破は「あまり意識していない」という。意識にあることは「年齢に関係なくやれるかどうかや今日のように大事な場面で仕事をすること。そして年齢を重ねているからこそできること」。試合の機微を知るベテランだからこそ、勝負どころを見極め、この日の3点目を奪うような役割も果たせるし、周囲の力を引き出す術も知っている。

「どうしても若手選手は気持ちが先走ってしまい、普段どおりのプレーができないこともあるので、平常心で戦えるような声がけをする。そんな役割があると思っている」と金山。代々木セントラルでの開幕戦のように、独特な緊張感にあふれたゲームでは特に若手選手は萎縮してしまい、本来の持ち味を発揮できないケースも少なくない。この日も24歳の新倉康明がフィクソに入る時間帯があったことを一つの代表例として、滝田学ら負傷者を抱える町田は、若手選手の力を借りなければならないシチュエーションも出てくる。そのときにこそ、経験値を持った選手たちの真価が問われている。

今季は開幕前にエースの森岡が自らキャプテン就任を申し出たことで、基本的に金山の両腕に腕章が巻かれることはない。一つの重責が取れたことで自分自身のパフォーマンスに集中できる環境が整った。しかし、本人は「町田一筋である立場は変わらない」ため、腕章の有無にかかわらず、過去名古屋オーシャンズでもキャプテンマークを巻いたことがない森岡をサポートする腹積もりでいる。

金山の存在はFリーグとペスカドーラの歴史そのもの。節目の10年を超え、新たな10年へとスタートを切った新シーズンの目標は、昨季あと一歩でたどり着けなかった”あの景色”しかない。

「目標は昨季の上を行くことだけです。まだ先は長いですが、一つひとつ勝っていって、最後にプレーオフで優勝したいです」

Fの頂点へーー。金山友紀・39歳。まだまだ、やり残したことがある。

Photo&Text by 郡司 聡(Satoshi GUNJI)

【プロフィール】
金山 友紀(かなやま・ゆうき)
1977年9月2日生まれ、39歳。島根県出身。ALA。163cm/61kg。前所属:CASCAVEL TOKYO/元フットサル日本代表


町田日和」ではこのほかにも下記の記事などを掲載中です。

【マッチレビュー】J2第18節・京都サンガF.C.戦/”メンタルスポーツ”を象徴するドロー劇。2失点の遠因とは?

【★無料公開】J2第18節・京都vs町田/京都・布部陽功監督、吉野恭平選手、小屋松知哉選手、田中マルクス闘莉王選手、町田・相馬直樹監督コメント(6,811文字)