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【森雅史の視点】2024年5月19日 J1リーグ第15節 FC町田ゼルビアvs東京ヴェルディ

J1リーグ第15節 町田 5(2-0)0 東京V
14:03キックオフ 町田GIONスタジアム 入場者数12,027人
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町田の分析と対策がものの見事にはまった試合だった。

 

町田は東京Vの守備ラインがボールを持ったとき、FW2枚とアウトサイド2枚でボランチへのコースを消した。そのためどうしても外に展開せざるを得ない。外から中に展開するコースも切っていったため、苦しい局面に追い込まれるのが分かっていながら縦に出さざるを得ない。町田はそのパスが出た先にも激しくチャージをかけ、ボールを奪い返しては長短織り交ぜながら展開して完全に主導権を握った。かつて鳥栖が見せていた守備の考え方に近く、金明輝コーチの影響が強く出たと言えるだろう。

 

お互いが意識し合いながらのし合いだったのは間違いない。特に意地を見せたいと思っていたのは町田だった。ロングボールでつなぐだけではなく、パスワークで東京Vを崩し、トリックプレーをいくつも披露し、リードを守るのではなく最後まで攻め続けた。本来、町田の強度を上回るだけのインテンシティを見せることが出来る東京Vだが、走行距離でもスプリント回数でも町田を下回ってしまったのは、試合開始早々の町田の攻撃が予想外で、その対応に戸惑ったのを引きずったかのようだった。

 

東京Vは2失点目、3失点目の直後、目を覚ましたかのように「らしさ」溢れるテクニカルな突破を見せた。だがその技術を町田の力がねじ伏せた。この日は「剛よく柔を制する」という戦い方が意外なほど効果を発揮した。

 

11分、試合開始からポケットを奪いに行っていた町田の藤尾翔太がGKとDFの間にボールを通すとこれがオウンゴールを生んで町田が先制した。さらに29分、右からのクロスに藤尾が頭から飛び込んで2点目に。後半に入ると60分、平河悠がペナルティエリア内で足を蹴られてPKとなり、これを藤尾が決めて突き放す。80分、ペナルティエリアの外から柴戸海がボレーを突き刺して4点目。90+3分には下田北斗のシュートをGKが弾いたところにエリキが詰めてこの日の得点ショーを締めくくった。

 

 

 

森雅史(もり・まさふみ)
佐賀県有田町生まれ、久留米大学附設高校、上智大学出身。多くのサッカー誌編集に関わり、2009年本格的に独立。日本代表の取材で海外に毎年飛んでおり、2011年にはフリーランスのジャーナリストとしては1人だけ朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の日本戦取材を許された。Jリーグ公認の登録フリーランス記者、日本蹴球合同会社代表。2019年11月より有料WEBマガジン「森マガ」をスタート