「昇格請負人」小林伸二が語る監督のリアリズム【3】難しい戦術用語を使わなくてもサッカーの本質は伝えられる
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「昇格請負人」小林伸二が語る監督のリアリズム【3】難しい戦術用語を使わなくてもサッカーの本質は伝えられる(J論プレミアム)
大分、山形、徳島、清水と過去に4クラブをJ1昇格に導いた昇格請負人・小林伸二。どんなチームも最後まで泥臭く戦い、勝負強い集団に変えてきた、まさにいぶし銀ともいうべき手腕が評価され、今年からギラヴァンツ北九州の監督兼スポーツダイレクターに就任した。
自ら退路を断って北九州の立て直しという重責を引き受けたのは、自身の仕事の集大成にしたいという思いがあった…。
Jリーグ屈指の仕事人にこれまでの監督道を振り返ってもらいながら指導論からマネジメント論、サッカー論までじっくりノンストップで語ってもらった。
ライター・ひぐらしひなつによる、15000字の濃密すぎるインタビューを3回に分けてお届けする。
→【1】現場とフロントどちらをまず変えるべきか?
→【2】4クラブを昇格に導いたチーム作りの哲学と極意
写真提供:ギラヴァンツ北九州
■「攻撃を広げて守備は狭くして」にドリブルというスパイスを加えたペップのマンチェスター・シティ
――サッカーの世界では最新の理論や概念が次々に生まれてきますが、実は昔からあった概念なのではないかと思うこともあるんです。たとえばグアルディオラがマンチェスター・シティでやっているサッカーについては。
まず攻撃側のスタイルがあって、そのスタイルを相手がどうやって封じたりボールを奪ったりしようかと考えると、同じスタイルにするか、ボールを奪うためにボールのところにどういう形で集中させて守備をするかなんです。そこをポジションと考えれば、相手がそういうふうになったときにどこにスペースがあるか、どこの選手が余るかというのを即座に読む。数学と同じで、1+1でこっちが2になったら、こっちはマイナスになるからそっちでボールを使うとか。それは、実を言うと形がないとダメなんです。まず形があって、その形を変化させるということですよね。
たとえば片野坂の大分の3-4-3があって、そこにハメに行くということは、前にかかるからウラが空く。ボールサイドに寄せれば逆が空く。そういうふうにやっていくと、その形がポジションであると、空くところが見えてくるんですよね。そういうことだと解釈しています。
でもその中でひとつ言えるのは、ボールを奪われないことが必要ですよね。下手だからウラに蹴ってというのではなく、しっかりとボールを回すことによって相手がどういう守備をしてくるか。それにゴールキーパーまで使って相手にプレッシャーをかけさせて、どこが空くのかを明確に見ようとしているのが、大分なんですよね。
で、マンチェスター・シティのサッカーは、システムは相手によって変わるんですけども、自分たちが攻撃時にポジションを取ったとき、相手のバランスがどうなってどう空くかというのを見つけるということですよね。たとえば前に5枚いてボールサイドに4枚いたら、いちばん向こうは空きますよね。そういうふうに、相手の不利なところを使うというだけです。
僕もマンチェスター・シティはよく見ていて、どうやって持ち出すかは、相手のプレッシャーのかけ方によって変化させています。ボールを奪う側は、そのポジションの相手の形に重ねていく。ボールに人が集まる。攻撃側はボールをつなぎつつ、それによって生まれる手薄いところにボールを運ぶということです。
ですから間違いなく、昔の「攻撃を広げて守備は狭くして」ということしかないんです。言葉で言うと。で、上手くなると、ちょっと広がっている選手がいても回すことができれば、そこを使える。守備側としては、上手いチームが広がったら奪えないじゃないですか。だから、広がった相手を守備のために狭めていく。そこで奪えるなら狭くする必要はないんだけど、奪うために狭くする。攻撃側は奪われないように広く保つ。というところで、ポゼッションの幅広いサッカー。そこに、グアルディオラはドリブラーを入れている、というだけです。そういうところがいま、いちばん進んでいるんじゃないですか。
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