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テーマアジアカップ開幕。日本のグループステージに未来は見えたか?

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浦和王子・神谷正明

2015 01/22  10:41

アギーレ・ジャパンで際立つ"費用対効果"。リスクを抑え、勝つべくして勝つ

日本代表が連覇を狙うアジアカップの戦い。単にタイトルを奪うだけではない、プラスアルファの上積みも狙いたいこの大会を、さまざまな角度から解剖していく。グループリーグ第3戦で日本はヨルダンと対戦。そのアグレッシブなスタイルには、これまでも苦戦を強いられてきた。だが、今回の日本代表からは少々の苦戦で動じない、確固たる「力」が感じられる。現地で取材を重ねるライターの神谷正明が守備の要の言葉から、その源を探った。



▼中東の「荒さ」をものともせず
 アジアカップが始まる前、吉田麻也はこんなことを言っていた。

「アジアカップを迎えるにあたってポイントがいくつかあると思うけど、一つは新しいチームの基盤をしっかりと築くこと」

 日本代表はパレスチナ、イラク、ヨルダンとの戦いを3連勝で乗り切り、グループ首位通過を決めた。地力の差を考えれば決勝トーナメント進出は当然の結果と捉えるべきかもしれないが、特筆すべきはその安定した試合運びだ。

 4年前のアジアカップはアルベルト・ザッケローニ監督が就任してからわずか半年の準備期間しかなかったこともあり、苦戦の連続だった。結果的に大会制覇を成し遂げたものの、初戦のヨルダン戦は黒星寸前まで追い込まれながら後半ロスタイムの吉田のゴールで辛くも引き分けに持ち込み、シリアとの第2戦も本田圭佑のPKによるリードをなんとか守り切って勝利するなどグループリーグでは苦労した。

 一方、アギーレ・ジャパンも指揮官の就任からまだ半年程度しか経っていないが、初戦のパレスチナ戦からすでに指揮官の求める戦い方で相手を圧倒していた。もっとも、AFCチャレンジカップから勝ち上がってきたパレスチナは、率直に言ってグループ内でもかなり力の劣るチームであり、その点は差し引いて考えなければいけない。

 だが、イラクやヨルダンは個の力を持つ選手の一発がある中東特有の曲者チームだ。特にヨルダンは4年前のアジアカップでも手を焼かされた相手であり、2013年3月のブラジルW杯最終予選では敵地で煮え湯を飲まされるなど、かなりやっかいなチームだ。

 また、イラクもヨルダンもこれまた中東特有のフィジカルコンタクトを厭わない、つまりは「荒い」チーム。日本はそういう相手に苦しむことも多く、今回もラフプレーが目立つ対戦となったが、アギーレ・ジャパンはそういった国々をあっさりと退けた。

▼リスクなく勝つ強さ
 勝つべくして勝っているアギーレ・ジャパンの根底にあるのは"いらぬリスクは負わずに勝つ"というシンプルな考えだ。ビルドアップでは安全にボールをつなぎ、ゲームメークの部分ではサイドにボールを散らしながらスペースを使って敵陣深くに侵入し、最後はクロスで終わらせる。そういう攻撃パターンが多い。ボールを奪われた時にできるだけ危険なカウンターを受けにくい形で攻めているのだ。

 アジアカップを戦うなかで際立っているのは、どの試合でもしっかりとチャンスを作っていること以上に、相手にチャンスらしいチャンスを作らせていないことだ。ザックジャパンがアジアカップを戦った時は、明確な攻撃パターンを実践してチャンスは作ったものの、カウンターで危険な場面を迎えることもしばしばあった。

 だが、アギーレ・ジャパンではそういったシーンはそれほど見かけない。不用意なボールロストからカウンターを受けてピンチになりかけることがまったくないわけではないが、リスクマネジメントができているので大やけどする前に鎮火できていることが多い。アギーレ・ジャパンはグループリーグ全3試合を無失点で切り抜けたが、これはアジアカップに過去7回出場して初めてのことだ。守備の要である吉田は言う。

「取られ方が非常に賢くなったというか、悪い取られ方をする回数が少なくなった。それが一番、後ろがいい状態で守備をするのに大切なことなので良かった」

 大きなリスクを負わずとも攻める形が作れているから、守備でもリスキーな選択をせずに済んでいる。勝利を手にするための"費用対効果の高いサッカー"がチームに浸透し始めており、それが盤石の試合内容につながっている。実際、アギーレ監督になってから選手たちの口から「効率」という言葉が度々聞かれる。

 アギーレ監督は就任2試合目のベネズエラ戦後に目指すべき方向性についてこう話していた。「どういうスタイルを求めるかといえば、上位に行けるスタイルだ」と。

 アジアカップでは内容的にも結果的にも順調に来ていると言っていいだろう。ただ、この先は決勝トーナメントに勝ち進んできた相手との激突となり、今まで以上に強い敵と生き残りをかけた戦いを繰り広げることになる。よりレベルの高い舞台でも"勝つためのサッカー"で結果を残せるか。それができれば、吉田がアジアカップの目的として掲げた「新しいチームの基盤」が強固なものとしてでき上がるはずだ。

神谷正明(かみや・まさあき)

1976年東京都出身。スポーツ専門のIT企業でサッカーの種々業務に従事し、ドイツW杯直前の2006年5月にフリーランスとして独立。現在は浦和レッズ、日本代表を継続的に取材しつつ、スポーツ翻訳にも携わる。

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