J論 by タグマ!

最大級の効果があった浦和レッズからFC町田ゼルビアへ。『BFBチャンピオンズ』はなぜ町田を浦和の次に選んだのか?

並み居るJクラブの中で今季4年ぶりにJ2復帰を果たした町田だったのか。

アルゼンチンの伝説的名プレーヤーであるディエゴ・マラドーナがイメージキャラクターを務める思考型シミュレーションサッカーゲームアプリ『BFBチャンピオンズ』。昨年度の『BFB 2015-サッカー育成ゲーム』はJ1クラブの浦和レッズとコラボレーションを展開し、シリーズ累計350万を超えるダウンロード数を記録するなど大好評を博した。今年度の『BFBチャンピオンズ』は、昨年の浦和に続き、10月25日から11月16日まで、J2クラブのFC町田ゼルビアとのタイアップ企画を展開している。

なぜ今回のタイアップは、並み居るJクラブの中で今季4年ぶりにJ2復帰を果たした町田だったのか。その経緯や理由、そしてゲーム業界から見たJクラブはどんな魅力的なコンテンツに映っているのか。今後の展望も含めて、開発を統括した株式会社サイバードのゲーム事業本部・阿部淳エグゼクティブプロデューサーへ、前編・後編の2回シリーズで話を聞いた。

GNJ_0428.jpg

▼最大級の効果があった浦和レッズとのコラボ
—まず昨年度の浦和レッズとのコラボレーションの実績や効果はいかがでしたか?
「われわれ『BFBチャンピオンズ』としては、数多くのサッカーファンにゲームを届けたいという思いで、さまざまなプロモーションやタイアップを展開してまいりました。サッカーファンの新たなユーザーに『BFBチャンピオンズ』をプレーしていただくにはどうしたら良いか。それは常に悩みどころではあります。

これまではマラドーナを軸にプロモーションを展開していく中で、過去クリスティアーノ・ロナウド選手や遠藤保仁選手、中村俊輔選手らとプロモーションを展開してきましたが、その中でも最大級に効果があったのは、浦和レッズとのコラボレーションでした。そこで、やはり次の展開もJリーグクラブが良いだろうなと、模索してきました」

—FC町田ゼルビアとのタイアップが決まった背景・経緯を聞かせてください。
「レッズさんもコアなユーザーが多かったのですが、もっとコアなサッカー市場を攻めてみたかったんです。そう考えると、J1の浦和と比較して、新規のユーザーは減るかもしれませんが、J2クラブなど、コラボレーションの規模感がやや縮小したとしても、より熱いサッカーファンのコアユーザーにプレーしていただけるのではないかと思いました。また、試験的な取り組みとしても実施をしたかったので、それについてもゼルビアさんに伝えてタイアップさせてほしいと、クラブスタッフの方に相談させていただいた次第です。以前、遠藤選手や中村俊輔選手に出演していただいた『BFB』のCMを展開する際に、ゼルビアさんのU-12のスクール生にご出演いただいてから、クラブスタッフの方に懇意していただいたことが一つのきっかけとなりました」

GNJ_0416.jpg

▼ターゲットはサッカーの街に住むユーザー
過去最大級の効果があったという浦和レッズとのコラボレーションを経て、Jリーグクラブとタッグを組むことにメリットを見い出した阿部エグゼクティブプロデューサーが次なるコラボレーションのJクラブとして白羽の矢を立てたのが今季、4年ぶりにJ2復帰を果たしたFC町田ゼルビアだった。

単純にユーザー数を増やすことだけに魅力を感じるならば、柿谷曜一朗らスター選手も所属し、J1クラスの人気を誇るセレッソ大阪やサポーターの絶対数も多い松本山雅FCが候補に上がってもおかしくはない。その中でなぜ町田だったのか。その背景には、「J2復帰1年目なのにシーズン序盤で首位に立つなど、話題性があったから」といった”一過性”の理由ではない明確な指針があった。

—ユーザー数の確保を考えれば、セレッソ大阪や松本山雅FCなど、サポーターの数が多いクラブが選択肢の一つとして上がると思うのですが、その中でもなぜ町田だったのでしょうか?
「浦和レッズのケースも当てはまるのですが、”サッカーの街”に住む住民の方々にプレーしていただきたいと強く思っていました。レッズがあることで、浦和もサッカーの街という印象はあると思いますが、町田も古くから”少年サッカーの街”として知られています。CM撮影のときに練習場へお邪魔したのですが、非常に環境が良いですよね。(町田の練習場である)小野路グラウンドはゼルビアさんの持ち物ではないのに、市の施設として、ゼルビアさんが使えるようにバックアップをしていますし、すごくサッカーどころとしての雰囲気を感じました。

古くから東京でサッカーが強い地域と言えば、まず町田を連想しますし、実際に町田は北澤豪さんなど名選手を輩出している地域です。例えば浦和の場合、浦和の中心部に駒場スタジアムはありますが、レッズさんのホームスタジアム・埼玉スタジアム2002は浦和美園と浦和の中心部から離れていても、浦和という地域からレッズの空気感や熱気が伝わってきます。実際に町田の練習場などにうかがい、町田の街に接する中で、その熱が町田にもあるんじゃないかと感じました。サッカーを好きな方がたくさん住んでいる町田の方にぜひユーザーになっていただきたいと、そういうイメージでゼルビアさんとのタイアップを決めました」

—実際にゼルビアさんとのタイアップが決まってから、実際に稼働するまでのプロセスは、いかがでしたか?
「今回のタイアップでは高原寿康選手、深津康太選手、李漢宰選手、鈴木孝司選手、中島裕希選手、この5選手に3D選手となってゲーム内にご登場いただきましたが、5選手はクラブの推薦で決まりました。一つ、ゼルビアさんとのタイアップを進める中でありがたかったことは、機動力があってレスポンスが早かったこと。例えば、グローバル展開を認めてくださったことはありがたかったです。『BFBチャンピオンズ』は世界29カ国に配信されているグローバルなアプリです。例えば、こうしたグローバルな展開があることで、翼くんにゼルビアのユニフォームを着せているフランス人ユーザーがいるようです。翼くんには南葛という立派なユニフォームがあるのに、ですよ(笑)。

『BFBチャンピオンズ』のユーザーは日本と香港が中心で、実はありがたいことに香港には日本以上のユーザー数がいます。このように香港を含めた世界29カ国へ、今回のタイアップを通じてゼルビアさんを認知してもらう良いきっかけになると思います。J2のクラブを世界に出すこと、そこにわれわれの”らしさ”があると思っていますので、J2クラブとのタイアップを一度やってみたかったのです」

よりコアなユーザー層へ働きかけることができる”サッカーの街”の住民をターゲットに据えるーー。それは”ローカル色”の強い試みだが、そのローカル色にこそ、『BFBチャンピオンズ』のらしさがある、と阿部エグゼクティブプロデューサーは語っている。

次回更新の後編では、ゲーム業界の目に、Jリーグクラブの魅力はどのように映っているのか。町田を一つの切り口として興味深い話が展開された。

(後編へ続く『Jリーグクラブの『ローカル色』こそゲーム業界から見て面白さがある』)

郡司聡

茶髪の30代後半編集者・ライター。広告代理店、編集プロダクション、サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』編集部勤務を経て、現在はフリーの編集者・ライターとして活動中。2015年3月、FC町田ゼルビアを中心としたWebマガジン『町田日和』を立ち上げた。マイフェイバリットチームは、1995年から1996年途中までの”ベンゲル・グランパス”。