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テーマ東アジアカップ日本代表をどう捉えるべきなのか?

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情熱の分析家・河治良幸

2015 08/06  17:16

ハリル流"縦への速さ"にタメをもたらす倉田秋。約束のゴールが定着へのカギとなる

国内組で臨んでいる東アジアカップが、2日の北朝鮮戦から開幕した。海外組が不在の中、新戦力の発掘にはもってこいの大会で、"ハリル・ジャパン"はいかなる足跡を残すのか。今回の特集では北朝鮮、韓国、中国という東アジア列強国との各試合を識者が独自の視点で斬る。第2回は、情熱の分析家・河治良幸が代表デビュー戦となった倉田秋というフィルターを通し、宿命のライバル・韓国との一戦に迫る。



▼韓国戦への決意と悔恨
「僕が1点を取っていれば勝っていた試合」

 1-1の引き分けに終わった韓国戦の後、こう言って悔しさをあらわにしたのが倉田秋だった。88分に川又堅碁と交代するまで前半は左サイド、後半の途中からは右サイドに回って多くのチャンスに絡んだ倉田は守備にも奮闘し、代表デビュー戦としては十分に及第点を与えられる出来だった。

 それでも倉田が自分のプレーに納得できていないのは「ゴールを取れ」という監督の明確なメッセージを結果で示す強い意気込みを持って試合に臨んでいたからだろう。

 北朝鮮戦の翌日に話を聞いたときに一つ感じたことは、チームの方向性の中でもしっかりと自分の持ち味を出して仕事をするという意識の高さだ。多くの選手が記者団にゲームコントロールのことを聞かれ、「そうですね......」と返答するという、ある種の誘導にも似た状況が起こっていた。筆者もゲームコントロールという言葉こそ出さなかったものの、北朝鮮戦を見て感じたことを質問したのだが、倉田は終盤の失速を敗因に挙げながらも「最初の20分ぐらいを90分通す、それを自分が出たらやっていきたい」ときっぱりと語った。

▼確かに果たした役割と
 韓国戦はチーム全体の戦い方の中で多少低い位置で守備に参加する時間が長くなった。ただ、マイボールになったときに素早く動き出し、良いポジションを取ってボールに絡もうとする姿勢は遅攻だろうと速攻だろうと不変。持ち前の運動量と機動力を発揮してチャンスに絡む意思は見せていた。

 それでいて攻め急いでいる感がないのは、もともと倉田が持っている攻撃ビジョンによるところも大きいだろう。倉田は北朝鮮戦の攻撃を見ていて「前で速く行くところは良いけど、行ってからの起点が少なかった」と振り返った。

「そこで自分が、みんなが上がる時間であったり、そこで決定的なパスを出すようなプレーがしたい」

 時間を作るプレーには大きく二つの種類が存在する。一つはゲームを落ち着かせるためにあえてゆっくりパスを回したり、相手の守備者がいないところにボールを出してキープしていくこと。もう一つは攻撃をしかける中でもタメを作って、全体の押し上げや周りの飛び出しを促すことだ。

 倉田が意識的にやっていたのは後者のほうで、それが周囲の動きとかみ合ったところからチャンスが生まれた。特にC大阪で一緒にプレーしていた山口蛍とはお互いの特徴を引き出し合うプレーで韓国のディフェンスを翻弄していた。「あれは蛍(山口)を褒めたい」という先制点のアシストはセカンドボール奪取からだが、周りが良く見えている選手ならではのパスだった。

 練習では1タッチと2タッチに限定したメニューが続き、倉田も忠実にこなしていた。しかし、いざ試合になると自分の持ち味である局面のキープ力と視野の広さでタメを作り、それがチャンスにつながる。全体の流れを崩さずに自分の持ち味を入れていくという、良い意味でズル賢さを発揮していた。

▼中国との最終戦は定着への正念場
 終盤の84分には右サイドの高い位置でボールを奪い、素早く縦へ付けるのではなく、あえて少しタメて右から追い越す遠藤に出したが、クロスをDFにはじかれてCKになった。シュートまでは行かなかったものの、形としては最も惜しいシーンの一つだった。

 そうしたプレースタイルからしても、倉田がガムシャラにゴール方向に飛び出していくのではなく、幅広くチャンスの起点になりながら、機を見て自らゴールを狙うタイプであることは明らかだ。それでも意識の中には常にゴールがあったのだろう。

 54分の場面では永井が相手にプレッシャーをかけたこぼれ球から山口が興梠に縦パスを入れると、前を向いて受けた倉田がドリブルで韓国のディフェンスを突破しかけた。もう一つ持ち込めばシュートできるところでDFのファウルを受けた。

 結局は自分に課したノルマを果たせず、チームを勝利に導けなかった倉田だが、独特のリズムと自分のプレーで周りに相乗効果を与えるセンスがあり、機動力を持続する運動量も備えている。

 局面によって1タッチ、2タッチではなく、タメを作るスタイルをハリルホジッチ監督がどう評価するかは分からない。だが、G大阪で同僚の宇佐美貴史や欧州組となった武藤嘉紀とも違う性能でチームの攻撃を一段引き上げる存在になる可能性は十分にある。

 そして、サイドがメインとはいえFWである以上、やはり誰もが納得する結果というのはゴールだ。東アジアカップのラストとなる中国戦では、宇佐美もいる中で再び出場チャンスが巡ってくるかは分からないが、遅れてきた"ニューフェイス"にとって、今後の代表定着を左右する試合となるだろう。

【プロフィール】
倉田 秋(くらた・しゅう)
1988年11月26日生まれ、26歳。大阪府高槻市出身。172cm/68kg。FCファルコン→G大阪JY→G大阪ユース→G大阪→千葉→C大阪を経て、2012シーズンにG大阪に復帰。J1通算137試合出場23得点。J2通算57試合出場16得点(2015年7月31日現在)。

河治良幸(かわじ・よしゆき)

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCFF』で手がけた選手カードは5,000枚を超える。 著書は『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)、『日本代表ベスト8』(ガイドワークス) など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。サッカーを軸としながら、五輪競技なども精力的にチェック。

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