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テーマ〝6月のハリル〟をどう評す? そして日本代表の今後に起こることとは?

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歩く蹴球事典・後藤健生

2015 06/18  12:29

答えは「ノン」。いまの日本代表に、まだ「序列」は要らない

ロシアW杯へと続くアジアの戦いが始まった。日本代表は初戦でシンガポールと対戦し、0-0の引き分け。ホーム開催であること、またグループ1位にならねば突破が保証されないレギュレーションを思えば、痛恨の結果にも思える。今週のJ論は〝6月のハリルジャパン〟を評価し、今後のあるべき施策とは何かを考えたい。第2回は、50年の観戦歴を持つベテラン記者・後藤健生がその知見をもとに物申す。


▼本当に運の問題だったのか?
 ハリルホジッチ監督は「19回も決定機を作った」と豪語した。しかし、日本代表は格下のシンガポール相手に1ゴールも奪えず、スコアレスドローに終わってしまった。

 僕も50年もサッカーを見続けているから、サッカーという競技では相手のGKが大当たりしたり、運に見放されたりすれば点が入らないものなのだということは熟知している。だが、日本代表が点を取れなかったのは本当に運が悪かっただけなのか。日本代表は本当に点を取るためにあらゆる可能性を追求したのかといえば、答えは明らかに「ノン」である。数多くのチャンスが生まれたのは、「日本の攻撃が機能したから」ではなく、単にシンガポールとの実力差が大きかったからにすぎない。

 日本の攻撃は、あまりにも中央に集中。中盤でゆっくりパスをつないで相手を引き出す、ミドルシュートを狙うといった工夫がまったくできず、単調な攻めを繰り返すばかりだった。

 会場が埼玉スタジアムだったこともあって、攻めあぐねる日本代表の姿は2年程前の浦和レッズにダブって見えた。ワントップ+ツーシャドーに両サイドアタッカーを含めて5人が攻め上がるのが浦和の(ペトロヴィッチ監督の)攻撃的サッカーだが、攻め上がった5人の選手がそのまま前線に張り付いて動きがなくなってしまうことがよくあったのだ(今の浦和は動きが整理されていて、停滞することがなくなっている)。

 シンガポール戦の話題に戻ろう。

 それでも、序盤戦は柴崎岳のパスでスイッチを入れて前線の本田圭佑や岡崎慎司がパスを受け、ワンタッチ、ツータッチで処理してアップテンポの攻めができていた。しかし、日本の攻撃は次第にスローダウンしてしまう。

 スローダウンの原因は、一つは戦術的に未熟だったことだ。ハリルホジッチ監督の言う「速い攻め」という言葉に縛られ過ぎたこともある。だが、同時に純粋にフィジカル的な問題もあった。時計が30分を回ると日本選手の足が止まりはじめ、ボールデッドになったときに膝に手を当てている選手もおり、試合後の会見でシンガポール代表のシュタンゲ監督に「ヨーロッパのクラブの選手は、長いシーズンの後で疲れがたまっているのだから仕方がない」と同情される始末だった。

 本田や香川真司の動きにキレがある状態なら、正面からの攻撃だけでも攻め崩すことが可能だったかもしれないが、足が止まった状態で狭いスペースを打開することは不可能だ。

 イラクとの親善試合でも、日本選手の足は20分で止まってしまっていた。だが、イラク戦では10分も経たないうちに2ゴールを連取できたので問題は露呈せず、日本の大勝となった。だが、シンガポールはその立ち上がりの時間を凌ぎ切ったのだ。

 前線および2列目で動きがとれなくなってしまった選手たち。その多くはヨーロッパ各国のクラブに所属している選手だ。長いシーズンを終えたばかりで疲労もたまっているし、同時にリーグ最終戦以来実戦から遠ざかっている状態。とても、コンディションが良いとは言えない。シュタンゲ監督の言う通り、動きが悪いのは当然だ。

▼疑問の残った選手起用
 それでは、なぜ、日本代表はJリーグ組をもっと起用しなかったのか。Jリーグは3月に開幕し、選手たちはフレッシュな状態にあるはずだ。

 シンガポール戦の先発は、長友が太田宏介に代わった以外はすべてイラク戦と同じだった。交代も、基本的にイラク戦と同パターン。つまり、ハリルホジッチ監督の頭の中では、すでにメンバーの固定化、序列化がかなり進んでいるようなのだ。

 就任当初は「チーム内競争」を口にし、Jリーグの視察も積極的に進めたハリルホジッチ監督だったが、これまでの外国人監督と同じようにすでに選手間の序列が作られ、しかも、

 それはヨーロッパ組優先のようだ。たとえコンディションが悪くても、頼るのは本田や香川なのだ。

 ブラジルW杯でグループリーグ敗退となった後、ザッケローニ監督のチームは「自分たちのサッカー=パス・サッカー」に拘泥したことを批判された。アジアカップでアギーレ監督の代表が準々決勝で敗れたのは、グループリーグでメンバーを固定してしまい、選手に疲労がたまっていたからだった。

 「自分たちのサッカー」の中身は「パス・サッカー」から「速い攻め」に変わったが、今度はそちらへこだわり過ぎた点を考えても、メンバーが固定化・序列化してしまったことを考えても、ハリルホジッチ監督の日本代表は結局、ザッケローニ時代、アギーレ時代と何も変わっていないということになる。

 もちろん、W杯予選の初戦を手堅いメンバーで戦いたかったことは理解できるし、ハリルホジッチ監督はまだチームを掌握しきれていないのだろうから、同情の余地はある。9月のシリーズ以降は、より柔軟な選手起用を期待したい。



後藤 健生

1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続けており、74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授。

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