
【田村修一の視点】2025年11月1日 ルヴァンカップ決勝 柏レイソルvsサンフレッチェ広島
ルヴァンカップ決勝 柏 1(0-3)3 広島
13:10 キックオフ 国立競技場 入場者数 62,466人
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広島の得点を見て、思い出したのは1998年W杯決勝、ブラジル対フランス戦だった。コーナーキックからジネディーヌ・ジダンのヘディング2発でフランスが前半のうちに2対0とリード。マルセル・デサイーの退場で10人対11人の戦いを強いられながら、後半にもエメニュエル・プティのゴールで1点を追加したフランスが、ブラジルに快勝しW杯初制覇を成し遂げたゲームである。
柏と広島。ともにJ屈指のコレクティブな組織力を誇るチーム同士の対決で、拮抗したゲームの均衡を破ったのはセットプレーだった。中野就斗のロングスローから荒木隼人が25分にヘディングで先制。38分には東俊希が直接FKを、45+2分には再び中野からのロングスローからのこぼれ球をジャーメイン良が左足ボレーで決めた広島が、前半で早くも3対0とリードした。
プレーのクオリティに差はなかった。選手が流動的にポジションを変えることで、広島の守備ブロックに綻びを生じさせようとする柏と、マンマークによる前線からのプレスと最終ラインの硬さを拠り所に柏の攻撃に動じない広島。後半は広島がブロックを下げて守るシーンが多くなったが、柏の反撃を細谷真央の1点(85分)に抑えた広島が、2022年以来となる2度目の優勝を成し遂げた。
決して自分たちの出来が悪かったわけではない。柏にとっては釈然としない敗北だが、広島の堅守を崩し切れなかったのも事実。また広島の得点も偶然の産物ではない。ともになしうるベストを尽くしながら、広島がその先のプラスアルファを自分たちのものにした。そんな勝負の綾の微妙さを、色濃く感じさせた決勝戦だった。
田村修一(たむら・しゅういち)
1958年千葉県千葉市生まれ。早稲田大学院経済学研究科博士課程中退。1995年からフランス・フットボール誌通信員、2007年から同誌バロンドール選考(投票)委員。現在は中国・体育週報アジア最優秀選手賞投票委員も務める。




