【六川亨の視点】2024年11月30日 J1リーグ第37節 柏レイソルvsヴィッセル神戸
J1リーグ第37節 柏1(1-0)1神戸
14:03キックオフ 三協フロンテア柏スタジアム 入場者13,700人
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勝てばJ1残留の決まる柏に対し、神戸も勝点3を積み上げれば翌日の広島対札幌戦の結果次第で連覇が決まる。互いに勝点3の欲しい両者の対戦で、試合開始から攻勢をかけたのはホームの柏だった。マテウス・サヴィオがドリブルで仕掛けたり、ロングパスを前線に供給したりして柏の攻撃陣を牽引した。この攻勢は5分に先制点に結びつく。手塚康平の左CKを190センチの長身FW木下康介がヘッドで決めてリードを奪った。井原正巳監督が「怯むことなくアグレッシブに行こうということを表現してくれた」と言えば、吉田孝行監督も「相手の残留争いの強さが出て、前半は何もできなかった」という45分間だった。
そんな神戸は後半開始と同時に佐々木大樹を左サイドに投入して4-1-2-3から4-4-2にシステムチェンジ。攻撃時には大迫勇也と宮代大聖の2トップ、両サイドの佐々木と武藤嘉紀を上げる4トップで反撃に転じた。ゲームが大きく動いたのは終盤の43分、柏ゴール前の攻防からボールはタッチラインを割りスローインとなったが、武藤がペナルティーエリア内で倒れたまま起き上がれない。主審はドクターを呼び、武藤は歩いてピッチ外に出たものの、なかなか試合は再開されないのだ。するとオーロラビジョンには「PKか確認中」の表示が出てVARが適用されたこと、さらにOFRから武藤の接触の前にジエゴに空中戦でラフプレーがあったとして神戸にPKが与えられた。ジエゴは2枚目のイエローで退場。そしてアディショナルタイム+5分に大迫がPKから同点ゴールを狙ったが、シュートを大きく上に外してしまう。
その後も必死の反撃を試みる神戸の猛攻が続き、アディショナルタイム+10分には波状攻撃から武藤が起死回生の同点弾を決めたかと思われたが、これはオフサイドの判定でノーゴール。プレーは柏ボールで再開されたものの、ここで再び! VARが介入。4分後に判定は覆り、武藤のゴールが認められて土壇場で神戸が同点に追いついた。この結果、柏は残留に望みをつなぎつつ、札幌のJ2降格が決定。神戸は2位に浮上した町田と3勝点差、3位に後退した広島とは4勝点差で首位を堅持した。「前半の内容を考えれば勝点1は自分的にポジティブにとらえている。次はホームで勝つ」と吉田監督が連覇について前向きに試合を振り返れば、井原監督も「最後はああいう結果になった。これを次に生かしていくしかない。次は最後、アウェーの戦いになるが、しっかり準備して臨みたい」と最終戦に向けて決意を新たにしていた。
それにしても興ざめだったのは、アディショナルタイムに2度も採用されたVARだ。トータルのアディショナルタイムは15分。しかも2度とも主審はノーファウルとノーゴールの判定を下しておきながら、試合を巻き戻してのVAR判定である。オフサイドの判定に関しては、人間のジャッジでは限界があるものの、せめてプレーを再開する前に素早く導入して欲しかった。
六川亨(ろくかわ・とおる)
東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。