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【六川亨の視点】2024年11月24日 J3リーグ第38節 アスルクラロ沼津vs松本山雅FC

J3リーグ第38節 沼津0(0-0)1松本
14:04キックオフ 愛鷹広域公園多目的競技場 入場者数7,162人
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一足先に終了したJ2に続き、11月24日にはJ3も最終節を迎えた。すでに大宮がJ2復帰をきめており、今治も初のJ2昇格を決めた。残る“昇格枠”は1つ。すでに3位の富山は勝点61で昇格プレーオフ進出を決めている。そして最終節では勝点57で並ぶ4位の松本、5位のFC大阪と、勝点56の6位・福島、さらに勝点53の7位・北九州にも僅かながら昇格のチャンスは残されていた。ただ、北九州と福島の得失点差は11もあるため、北九州が6位に浮上するには福島の大敗と北九州の大勝が必要だった。

 

最初に試合を動かしたのは福島で、3分と32分に岩手からゴールを奪い前半を2-0で終える。FC大阪も八戸相手に35分に先制したが、松本は沼津の攻勢に防戦一方で、0-0で前半を終えた。この時点で4位にFC大阪、5位に福島が浮上し、松本は6位に後退してしまう。松本は直近4試合を「終盤はシステムを変えて4連勝」(霜田正浩監督)して4位に浮上した。3-4-2-1から守備時は5BKによるカウンターで勝点を拾ってきた。しかし沼津戦では両ウイングバックが高い位置をとることができず、最終ラインに吸収されてしまい前線からのプレスと連動することができない。この結果、人数は揃っているものの沼津の攻勢に受け身に回り一方的な展開を余儀なくされた。それでも沼津のシュートが正確性を欠いたことと、CB高橋祥平らによる必死のシュートブロックでゴールを死守して終盤の反撃に望みをつないだ。

 

福島は後半37分に1点を返されたが4-1で岩手を粉砕して勝点を59に伸ばした。ところがFC大阪は後半20分に八戸に1点を返され1-1の膠着状態に。この時点で4位は勝点59の福島、5位は同58ながら得失点差で松本、そして6位は松本と同勝点のFC大阪という順位になった。最後の最後にスコアを動かしたのは松本だった。「勝点1ではダメだと思っていた。どこかで点を入れにいかないといけない」という霜田監督が前線にフレッシュな選手を入れて反撃に転じる。特に効果的だったのが右FWに入った中村仁郞で、キープ力を生かして反撃の起点となった。そして迎えた後半アディショナルタイムの45+2分、ペナルテイーエリア外から安永怜央の放った右足ミドルが低い弾道のままゴール左スミに突き刺さる。土壇場での一撃で松本は勝点を60に伸ばして4位の座を死守。12月1日の昇格プレーオフ準決勝は、ホームのアルウィンで福島を迎え撃つ権利を自らの手でつかみ取った。

 

 

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。