【六川亨の視点】2024年7月13日 J1リーグ第23節 FC東京vsアルビレックス新潟
J1リーグ第23節 FC東京 2(1-0)0 新潟
19:03キックオフ 国立競技場 入場者数57,885人
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今シーズン取材した試合で、もっとも娯楽性に乏しい、低調な内容の試合だった。その原因は、両チームとも中2日での連戦にあったかもしれない。今シーズン初めて福岡と柏に連敗を喫したFC東京は、10日の天皇杯3回戦でも千葉に延長戦の末に1-2の逆転負けを喫し、3連敗中だった。一方の新潟も6日は鳥栖に3-4と打ち合いの末に敗れ、10日の天皇杯ではアウェーで長崎に1-6と大敗していた。両チームとも天皇杯ではターンオーバーを採用したものの、全選手を入れ替えるまでに至っていない。ここらあたりが低調な試合内容につながった可能性が高い。
試合はというと、前半6分に小泉慶のロングパスに抜け出た遠藤渓太がドリブル突破からカットインシュートを決めて先制した。しかしその後は運動量が少ないため攻撃らしい攻撃を仕掛けることができない。元来新潟はショートパスをつないで厚みのある攻撃を得意とするチームだ。このため前線からプレスをかけても簡単に剥がされる。そこでFC東京はリトリートしてカウンター狙いにシフトした。しかしボールを支配してFC東京ゴールに迫っても「パワー不足。強度が低い。ただ回しているだけで相手の脅威ではなかった」と松橋力蔵監督が指摘したように、決定機までには至らない。それでも後半は5分に得意のパス回しから谷口海斗が、13分にはタテパスに抜け出た長谷川元希が決定機を迎えたものの、シュートは枠を捕らえることができない。「これは決めて欲しい、決めなければいけないところで決められなかった」と松橋監督も嘆くしかなかった。
試合の流れを変えたのは、この日海外移籍が発表された松木玖生が後半16分に投入されてからだった。確実なポストプレーで攻撃の起点になると、18分にはFKから初シュート。そして27分、左サイドで体幹の強さを生かしてボールを奪取すると、交代出場の野澤零温に展開して攻め上がり、野澤零のクロスを左足シュート。これはFPに阻まれ左CKに変わったが、あわやOGというシーンだった。追加点は先制点と同様に鮮やかなカウンターだった。右サイドでタテパスを受けた安斎颯馬がワンタッチでタテに展開すると、駆け上がった小泉がドリブルで運びアーリークロス。これを左サイドから詰めた野澤零が右足で流し込んでJリーグ初ゴールを決めた。これにはピーター・クラモフスキー監督も「自分たちがデザインした形で2点目を取れたのは良かった」と納得の表情を見せた。
冒頭にも書いたように、面白い試合ではなかった。FC東京にとって連敗を止めて勝点3を獲得したこと。そしてチームを離脱する松木を勝利で送り出すことができたのが最大の収穫と言える。試合後、松木はゴール裏でチームメイトから胴上げされて3回宙を舞い、サポーターと一緒に「You’ll Never Walk Alone」を歌って別れを告げた。それをアウェーのゴール裏に残り、温かく見守る新潟のサポーターも素敵だった。
六川亨(ろくかわ・とおる)
東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。