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【六川亨の視点】2023年2月18日 J1リーグ第1節 FC東京vs浦和レッズ

J1リーグ 第1節 FC東京 2(0-0)0浦和
14:03キックオフ 味の素スタジアム 入場者数 38,051人
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直近の4試合では1分け3敗。過去のJ1リーグでの対戦成績も10勝11分け22敗と浦和に大きく負け越しているFC東京。鹿島と並んで“鬼門”とも言える相手である。

 

23年シーズンの開幕戦でも立ち上がりから浦和のハイプレスに苦しめられ、4分には東慶吾が警告を受けるなど劣勢を余儀なくされた。その原因はシンプル。4-3-3のアンカーを務めた東が狙われたからだった。

 

トップ下の小泉佳穂がプレスバックしつつ、ボランチの伊藤敦樹や岩尾憲が東にプレッシャーをかける。前線からのプレスも、フリーならともかくプレスを受けるとフィードの正確性を欠くCB木本恭生にボールが集まるようにしたマチェイ・スコルジャ監督のスカウティングがよく現れた前半だった。

 

そんな試合の様相が一変したのが後半のFC東京の選手交代とシステム変更だった。開始早々に警告を受け、さらに前半終盤には浦和のカウンターを阻止しようと“テクニカルファウル”も犯した東は、本来なら2枚目のイエローで退場になっていてもおかしくない。

 

そんな東に代えてアルベル監督は安部柊斗を起用し、新加入の小泉慶と松木玖生をダブルボランチに、安部をトップ下に置く4-2-3-1に変更した。このシステムチェンジと、小泉の本来のポジションであるボランチ起用は大正解だった。

 

小泉は気の利いたプレーで攻守にチームを活性化。ボールに触れる機会の増えた松木は左サイドからの攻撃でチームを支え、トップ下に入った安部は豊富な運動量で攻撃陣を牽引した。

 

スコルジャ監督は、ディエゴ・オリベイラやアダイウトンといった個の力による突破力を警戒するのはもちろんのこと、アンカーの東がターゲットになるなど分析はしっかりしてきたようだ。しかし、新戦力の小泉や交代出場でゴールを決めた渡邊凌磨(昨シーズンまでは右サイドでの起用が多かったがこの日は左サイドに入り、アダイウトンが右に回った)など、まだ対戦相手を把握していない印象を受けた。

 

その点、一日の長があるアルベル監督は、相手よりも自チームの出来を判断し、早め早めの交代策で完勝を収めた。ここまで浦和を圧倒したのはいつ以来か記憶にないくらいだ。ただ、それだけFC東京の出来が良かったのか、それとも浦和の出来が酷かったのか(特にダヴィド・モーベルグ)、それは2節以降の試合を見ないと判断はできない。

 

それでもFC東京にとっては自信を深める試合になったことは確かだろう。

 

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。