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【六川亨の視点】2022年10月16日 天皇杯決勝 ヴァンフォーレ甲府vsサンフレッチェ広島

第201回天皇杯決勝 甲府 1(1-0,0-1,0-05PK4)1広島
14:04キックオフ 日産スタジアム 入場者数 37,998人
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リーグ優勝の可能性はなくなったものの、まだ2冠のチャンスがあった広島だが、16日の天皇杯決勝ではPK戦の末に甲府に敗れ、早くも1冠は消滅した。これで天皇杯は6度も決勝に勝ち進みながら(前身の東洋工業時代は3度の優勝を達成)、いずれもランナーズアップという“珍記録”を更新中だ。

敗れた広島のミヒャエル・スキッベ監督も「いまは残念な気持ちで沈んでいる。できるだけ早く切り替えて、次のステップへ向かいたい。しっかり切り替えて、C大阪とのルヴァンカップを迎えたい」とメンタル面の重要性を強調した。

シーズン終盤とあって、両チームともケガ人を抱えてベストメンバーとはいかなかったが、広島は「いつも通り」のサッカーをした。しかし敗因を探るなら、この「いつも通り」のサッカーに行き着く。完成度の高い3-4-2-1で自陣からパスをつないで相手を剥がすスタイルは健在だった。しかし、甲府は自陣に近い位置に5BKを配し、その前の4人も専守防衛により「自陣でしっかり守る」(吉田達磨監督)専守防衛のスタイルだった。このため広島には、“剥がす”相手がいなかった。

簡単に甲府ゴール前まで迫ることはできたものの、なかなか決定機を作るまでには至らない。強引なシュートは二重のブロックに阻まれた。それでも後半39分に川村拓夢が強シュートを突き刺して同点に追いつく粘りは見せた。しかし試合の流れは甲府に傾いていたようで、延長後半11分に山本英臣のハンドでPKを獲得したが、満田誠のシュートはGK河田晃兵にストップされる。そして突入したPK戦では、4人目の川村のシュートがブロックされると、5人目に登場した山本のシュートは左上に決まり、広島の悲願はまたも幻に終わった。

 

 

 

 

六川亨(ろくかわ・とおる)

東京都板橋区出身。月刊、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任し、W杯、EURO、南米選手権、五輪を取材。2010年にフリーとなり超ワールドサッカーでコラムを長年執筆中。「ストライカー特別講座」(東邦出版)など著書多数。