石川直宏が優勝に向けてFC東京で行っている事とは【アテネ世代の今】
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石川直宏が優勝に向けてFC東京で行っている事とは【アテネ世代の今】(J論プレミアム)
79年生まれを中心とした「黄金世代」に対し、81年生まれを中心としたアテネ世代は「谷間の世代」とも呼ばれていた。
その「アテネ世代」だが、現役を続ける選手はもちろん、サッカーとは違う場所でセカンドキャリアをスタートさせたりなど多士済々。
そんなアテネ世代に詳しいライター・元川悦子が複数回に渡り「アテネ世代の今」についてをJ論プレミアムにてお届けする。
▼一番最初に始めた事は各方面の業務内容を把握すること
2019年J1優勝争いもカウントダウンに突入している。11月5日の時点で首位に立つのは勝ち点59の鹿島アントラーズだ。しかし、今季序盤からトップを走ってきたFC東京も8~10月にかけての苦境を乗り越え、勝ち点で鹿島に並んだ。得失点差では8下回っているものの、残り4戦のうち2戦は本拠地・味の素スタジアムで戦える。死のアウェー8連戦を戦い抜いた彼らには、かつてないほどの逞しさが備わっているはずだ。
長谷川健太監督や選手たちの戦いぶりを近くで見守っているのが、石川直宏クラブコミュニケーターだ。2017年に現役を引退し、現在はピッチ外にいるが、FC東京がここまで歩んできた道のりを誰よりもよく知るのが彼である。偉大なレジェンドにとってもJ1タイトルは未知の世界。優勝をつかみにいく景色を感慨深い思いで見つめている。
「健太さんは優勝経験がありますし、丹羽(大輝)ちゃんや大森(晃太郎)、オ・ジェソクく、(高萩)洋次郎も頂点の景色を見たことがありますけれど、未知の選手やスタッフの方が多い。森重(真人)なんかは『先輩たちが見てない景色を俺たちが先に見るんだ』って言いますよ(笑)。まあ僕は一歩引いたところから見ますし、隙あらばシャーレも上げようかと思ってますけど、本当にそこにたどり着けるかはまだ分からない。でも僕はその過程の景色をクラブのみんなが見ることに大きな意味があると思うんです。1つ1つの積み重ねこそがクラブの歴史や財産になる。もちろん優勝したいですが、この経験をFC東京として大事にしていきたいですね」
神妙な思いでそう語る石川氏は現在、クラブ内外のスムーズな関係作りに奔走している。ホームタウンである東京都内を回り、各自治体担当者との打ち合わせに同席する日もあれば、小学校を訪問して授業をすることもある。スポンサー企業のオフィスを訪ねたり、サッカースクールにも顔を出したりもする。活動の多くは自主的に始めたものだという。
「『クラブコミュニケーター』は、自分が引退して初めて作ってもらった役職です。現役生活に区切りをつけた時、『次の人生ではまず自分の知らない世界を知る必要がある』と真っ先に考えました。サッカークラブは現場だけじゃなく、ビジネススタッフやファン・サポーター、スポンサー、行政といろんな人々に支えられている。そこをつないで関係を密にするハブのような役割になりたいと思い、取り組み始めたんです。最初は2週間に1度、各部長が出る『事業会議』に参加し、クラブの実情を把握するところからスタートしましたね」
そういう中で、石川氏が『自分にできる」と感じたのは、行政との関わりを深める活動、既存スポンサーの価値を高める動き、スクールで保護者や地域の人々との連携強化などだった。それぞれの分野で具体的なビジョンを思い描き、本格的に動き出したという。
「例えば、調布市との関係で言えば、市内の街路灯にはいつもFC東京の青赤フラッグが掲げられているんですけれど、今年の9、10月は東京都からの依頼で、ラグビーW杯に合わせてラグビー仕様になっていたんです。実はその後の11月以降は、2020年東京五輪の旗に変更してほしいと東京都からは言われていたそうなのですが、『FC東京がJ1で優勝するかもしれない時に、青赤フラッグが掲げられていないホームタウンなんて考えられない』と熱意を示して実行してくれる担当者が市役所や商工会にいるんです。そういう協力を共有して、熱い想いをつなぐことが僕の仕事。他の行政や関係者とも距離が縮まって、いい関係を作れているなと実感できるようになりました。それが自分の思い描いていた理想像ではありますね」
▼非認知的能力を広く伝えていきたい
石川氏は背番号18のユニフォームを身にまとい、爆発的スピードでピッチを駆け回っていた頃から「サッカー選手として特別視されるのはどうなんだろう…」と違和感を覚えていたようだ。自分はごく普通の人間なのに、選手というだけで特別な存在と位置付けられる。引退から2年の月日を経て、そういう垣根を完全に取っ払い、「人間・石川直宏」になれたことを、彼は心から嬉しく感じているという。
目下、石川氏が最も熱心に取り組んでいるのが「非認知的能力」を伝える活動だ。「自分を『ごきげん』にする方法」などの著者であり、スポーツドクター兼コンサルタントとしても幅広く活動する辻秀一氏との出会いから、その面白さに気づいたのだ。
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