風間グランパスを陰で支える黒子。キーマン・小林裕紀の本性【J1昇格プレーオフ決勝プレビュー特集/名古屋グランパスの場合】

2017シーズンのJリーグで最後を飾るビッグゲームが、J1昇格プレーオフ決勝だ。J2・3位の名古屋グランパスと4位・アビスパ福岡が1年でのJ1復帰を目指して、12月3日に豊田スタジアムで激突する。今回、J論ではJ2天下分け目の決戦のプレビューを両チーム同時掲載。引き分けでもJ1昇格が決まる名古屋は、番記者・今井雄一朗氏(赤鯱新報)にキーマンについて、触れてもらった。

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▼J2でもトラッキングデータがあれば......

 名古屋グランパスがアビスパ福岡とのJ1昇格プレーオフ決勝を戦う上で、キーマンとして考えられる選手は複数いる。とはいえ、個人戦術の集合体である今季の名古屋においては、一人の不出来は全体のパフォーマンスを下げることにもなるため、それが一人であることもまたあり得ないのかもしれない。

 田口泰士のゲームメークも後方からのパス供給がなければ取り掛かれず、前を見ても前線が動き出していなければパスが出せない。そうした連係もチームのパターンとして用意されているものではなく、用意されている判断基準をいかに運用するか。それがこのチームの肝である。ゆえに一般的なキーマンとして名を挙げるとすれば、勝敗に直結するスコアラーやチャンスメーカーたちになってきてしまうが、それでは当たり前過ぎて面白くない。

 だからあえてここでは、小林裕紀の名を挙げておこうと思う。渋い人選であることは百も承知だが、チームに欠かせないという点で言えば彼と肩を並べる選手はそうはいない。今季序盤はチームのスタイルになかなかなじめずに雌伏の時期を過ごしたが、まさかのCB起用で心身ともに鍛えられるなど、戦況を見つめる"目"も養ってからはボランチとしての定位置を確立。リーグ26試合出場の数字以上にチームの進撃を支えてきた縁の下の力持ちだ。

 小林の特徴は何と言ってもその気配りにあふれたプレーにある。もともとが攻守に行動範囲の広い"ボックス・トゥ・ボックス"のセントラルMFだったが、名古屋ではさらにきめ細かなサポートの意識が光る。攻守における最終ラインへのフォロー、ビルドアップでの中盤の操作、ボールホルダーにパスコースを作る動き出しも実に気が利いている。パスをつないで前進したいチームにとって、常にパスコースを用意してくれる小林の貢献度は高く、それは攻撃の局面でも変わらないため驚く部分もである。

 組み立てを終え、敵陣での崩しに入ったチームにもまた、必ず背番号17の姿はある。パスを出しては動き出すのが決まりごとのようなグループワークの中で、縦パスを入れてゴール前に飛び込んでいく選手が小林であることは日常茶飯事である。それがデコイに終わっても、すぐさまポジションを取り直して次の攻撃のサポートに走り、ボールを失えばすぐさま守備のバランスを取りにまた走る。J2ではトラッキングデータがないのが残念である。あればきっと、彼は毎試合のようにチームトップの、あるいはリーグトップの走行距離を記録していたかもしれないからだ。

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▼ヴェルディ下部出身ゆえの意地

 そして隠れた魅力がそのテクニック。ヴェルディの下部組織出身であることは広く知られる彼の出自だが、かの組織で育った選手のご多聞に漏れず、彼もまたうまい。相手のプレッシャーをかわす一瞬の足さばきやヒールキックを使ったワンツー、ボランチとしての縦パスの正確さもインサイドキックの技術を感じさせるものだ。

 ヴェルディ関連で言えばリーグ最終節のカマタマーレ讃岐戦では笑える一幕も。後半、浮き球を処理しつついわゆる"裏街道"の形で相手を抜いて前に出ようとすると、その相手は半ば体当たりに近い形で小林の突破を防いだ。しかけた小林がヴェルディ出身なら、体当たりをかましたのもヴェルディ出身の木島徹也である。技術があるからこそ意地を張る、"サッカー小僧"ならではの意地の張り合いには、東京Vから来た杉本竜士も「みんなメラメラしちゃうんですよ」と笑っていたものだ。

 プレシーズンキャンプでは主力としての座を獲得したかに見えて、第2節・FC岐阜戦ではわずか33分で途中交代。それから第18節の東京V戦まで出番がなかったことを思えば、決して順風満帆の1年ではなかった。むしろ苦労のほうが多かったシーズンだが、新潟でキャプテンまで務めた男の能力に疑いの余地はなかったということだ。

 気配りはピッチ内だけに留まらず、クラブハウスやプライベートでもチームメートの良き理解者として人望を集める副キャプテンは、楢崎正剛を冗談とは言え、「正剛ちゃん」と呼べるほどのポジションを築いている。

 最終決戦たるプレーオフ決勝の福岡戦でも、彼の気の利いたプレーがチームに好循環を生み出すことは間違いない。試合を決めるプレーを、選手たちを輝かせるキーマンとして、小林裕紀の活躍にはいつも以上に期待している。


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