リオ五輪代表、福岡に快勝。形にこだわらぬ『カメレオン・スタイル』の真意とは?

週替わりのテーマにとらわれず、一つの題材を掘り下げるJ論『一意専心コラム』。今回は福岡県内で強化合宿を実施していたU-21日本代表(リオ五輪代表)にフォーカス。「自分たちのサッカー」を貫くことを目指したブラジルW杯での日本代表とは対照的に、手倉森ジャパンは相手と状況に応じて柔軟で変化に富んだサッカーを志向する。アギーレ新監督の方法論にも通じるそのスタイルの真意とは? 新進の福岡人記者・松尾祐希が、アビスパ福岡との練習試合からその現在地をあぶり出す。


matsubara.JPGポリバレントに多彩な役割をこなしたDF松原健(新潟)

kanshu.JPG平日の朝にもかかわらず、メインスタンドを埋めるほどの大勢の観衆が詰めかけた


▼福岡と練習試合を実施

 8月11日、都内でアギーレ新監督の就任記者会見が行われているころ、U-21日本代表は福岡市内での合宿を開始していた。チームが目指すのは9月14日に開幕する仁川アジア競技大会、そしてリオデジャネイロ五輪である。

 チームを率いる元仙台の手倉森誠監督が福岡の地に招集したのは、計24名。その中にはFW野津田岳人(広島)やDF岩波拓也(神戸)、DF植田直通(鹿島)など、既にチームで欠かせない存在になっている選手も多く、非常に経験値の高いチーム構成になっている。4年前に行われた前回のアジア大会ではJクラブのレギュラークラスの選手たちが招集不能になる中で初優勝を果たしているだけに、連覇への期待値も高い。

 13日には、合宿の仕上げとしてアビスパ福岡との練習試合も行われた。U-21日本代表は練習から落とし込んでいた中盤の底にアンカーを置く[4-3-3]のシステムでスタート。前半3分に野津田が放ったシュートをDFにブロックされるも、こぼれたところをMF大島僚太(川崎F)が押し込んで幸先よく先制点を奪い取った。

20140814f_1.png前半開始~4-3-3

 しかし、その後は相手に縦パスを幾度となく通されてしまいリズムをつかめない。この状況を打破するべく、手倉森監督は前半途中からインサイドハーフの大島とアンカーのMF秋野央樹(柏)を配置転換。この二人を中盤の底に並べる[4-2-3-1]に布陣を変更し、立て直しを図る。これが奏功し、38分には秋野の右CKから岩波が頭で決め、前半はこのまま2-0で終了となった。

20140814f_2.png前半15分過ぎ~4-2-3-1

20140814f_3.png前半30分~4-2-3-1

▼柔軟に使い分けた4つのシステム
 後半に入ると、大幅にメンバーを変えた日本代表は再びシステムを[4-3-3]に戻す。後半途中からは「攻撃的なサイドバックを活かせる3バックというのは頭の中に描いているものがあった」(手倉森監督)と、練習でも試していない3バックに挑戦する。さらに試合終盤には「勝ち切るために」両ウイングバックを低い位置に置いた5バックのような陣形も披露。狙いどおりに試合をクローズし、2-0で勝利を収めた。

20140814f_4.png後半開始~4-3-3

20140814f_5.png後半15分~4-3-3

20140814f_6.png後半25分~3-4-3

20140814f_7.png後半終盤~5-4-1

 手倉森監督は「チームコンセプトである理解力と勝負に対する割り切りと柔軟性」というテーマを掲げ今日の試合に挑んだと試合後に振り返ったように、この試合でU-21日本代表は[4-3-3][4-2-3-1][3-4-3][5-4-1]と4つのシステムを使い分ける柔軟性を披露した。

 指揮官は「選手には二つくらいのポジションができるようにと求めている中で、システムが変わればポジションが変わるということも刷り込み済み」と試合中のシステム変更に合わせられるように、選手には複数ポジションをこなす柔軟性を求めている。

▼存在感を見せた大学サッカーの星
 そんな中、この試合で柔軟性を見せた一人が、今回大学生で唯一招集されているDF室屋成(明治大)だ。青森山田高校時代には2011年のU-17W杯ベスト8に大きく貢献し、高校卒業時にはプロではなく、大学サッカーの道を選択していた。

 初陣となったこの試合では、右サイドバックとして先発し、前半30分からは明治大学では「あまりやってこなかった」と言う左サイドバックにポジションチェンジ。本人は「左サイドバックも右と同じくらいの水準に引き上げないといけない」と謙虚に語ったが、左右のサイドバックで効果的な攻め上がりを披露し、監督の求める柔軟性を発揮してみせた。

 この試合で4つのシステムを使い分けたU?21日本代表において、室屋のように様々なポジションを高いレベルでこなせる選手がいる意味は大きい。右サイドでプレーした野津田も「(システムを)相手によって状況を変えることは実際の試合でも必要な事だと思いますし、どこのポジションでもできるようにならないと。色んなポジションにチャレンジしていきたい」と意欲を見せていた。

 ただ、手倉森監督は「数字を語ると、いろいろと頭がカチッとはまってしまってぎくしゃくしがち。この世代をそうさせないように、システムの話をしたとしても、やることはコンセプトの『全員守備全員攻撃で一緒だ』ということをちゃんと養っていければと思っています」と、やり方を変える際はシステム上の数字にとらわれることがないように強調している。実際に観ている側からしてもフォーメーションの変更をハッキリと認識するのが難しいくらいにスムーズな対応が行われており、数字にとらわれないという部分はそうした点からもうかがうことができた。

 指揮官は「ある程度、このグループは色んなバリエーションを持てることを確認できました。選手たちには『色んなことをやる覚悟でいろ』と先ほど話をしました。アジア大会で対戦が決まった相手に対しては(メディアの)皆さんから『日本は何をしてくるかわからない』と伝えてほしいなと思います」とコメント。正直な話をすると、筆者も試合を観なながら「どう変化してくるか分からない」という印象を受けた。手倉森ジャパンのそうした姿勢は、『カメレオン』と評するのが一番近いのかもしれない。今回は七変化ならぬ四変化となったが、アジア大会においては何変化を見せて勝ち進んでいけるか。アジア大会は、若き日本代表の柔軟性が本物かどうか。それを見極める戦いともなりそうだ。


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